Page 2 / 4 1ページ目から読む

――大学のジャズ研はコンボ? ビッグバンド? 突然テンション(※ジャズで多用される、コードで決められた音から外れた音)が入ったりしたら大変じゃなかった?

「どちらもやってた。ビッグバンドは、カウント・ベイシー(Count Basie)をやるバンドだったから、四つ切り(※ジャッジャッジャッジャッと音を1拍ずつ刻む)もやってた。ちょっと頭悪いけど、ソロとかは一発もので全部乗り切るっていう、ギターあるあるな感じでやってたね。“枯葉”を一発ペンタとかで弾いてたよ」

――メタルからジャズに変わったら機材とか音の規模感とかが小さくなるけど、そういう面で気にはならなかった?

「ジャズの最初の頃はペンタ一発だったからストラトで弾いてたし、その時はアホやったから気にしてなかったんじゃないかな。大学2年の時にストラトで“Blue Bossa”(※ジャズのスタンダード)を録音した音源があって、何年か前に聴き返したら聴いてられへんかった。1秒もダメやった。もっとイケてると思ってたけど、全然ダメ。高校の時からやっていたハードコア・パンクの録音も同時期に見付けたんだけど、全く同じ感じで弾いてたみたい。そういうところから、どんどん〈ジャズってこんなんじゃない〉って分かってきて、フルアコを持つようになり、外で演奏するようになったら店に合わせて音も自然に小さくなっていった気がする」

――最初のギターがストラトだったの?

「そう、最初がストラトキャスターで、次がキングV。スレイヤー好きだったし」

――最近のジャズ・ギタリストで、メタル・ファンも聴いたら面白いと思えそうなギタリストっている?

「まずは、チャールズ・アルトゥラ(Charles Altura)。チック・コリア(Chick Corea/ピアノ)のバンドとか、テレンス・ブランチャード(Terence Blanchard/トランペット)のバンドとかをやってるし、アドリアン・フェロー(Hadrien Feraud/ベース)のアルバムにも入ってる。かなり速く弾けて、スキッピング奏法(※弦をまたいで弾く比較的難易度の高い奏法)も使う」

チャールズ・アルトゥラの演奏動画
 

「他にマッテオ・マンキューソ(Matteo Mancuso)とか、このあたりのジャズ・ギタリストって、ヌーノ・ベッテンコート(Nuno Bettencourt/エクストリーム)とかジョン・ペトルーシ(John Petrucci/ドリーム・シアター)とかがやってることを、すぐアドリブで出てきますよ、みたいな感じでプレイするよね。この二人は、プレイにおいてメタルのテクニックも使ってるから面白いと思うよ。マテウス・アサト(Mateus Asato)もいい。少し前のだと、ジョン・マクラフリン(John McLaughlin)のマハヴィシュヌ・オーケストラ(Mahavishnu Orchestra)も鉄板だよね」

マッテオ・マンキューソのソロ
 
マテウス・アサトのライブ
 

マハヴィシュヌ・オーケストラの71年作『The Inner Mounting Flame(内に秘めた炎)』
 

――逆に、ジャズの人が入門に聴きやすいメタルってどんなのだと思う?

「やっぱりスティーヴ・ヴァイ、ドリーム・シアターとかかなあ」

――昔メタルをやってたことが、今ジャズで役立ってるってことはある?

「ない(即答)。100%ない。

無理やり繋げるならば、どのタイミングでストップするか、どのタイミングでハーフにするかとか、シーン・チェンジの見極めをすることぐらいかな。イングヴェイとかギター・ヒーロー的なフレーズは何かしらあるかもしれないけど、メタルに関しては刻みが好きだったから、その部分においてジャズで活かされているところはないよね。刻みで曲を構築するのがカッコいいって思ってた。今だったらできない。腱鞘炎になる。皆めちゃくちゃ腕太いやん。

ギター面ではあまり役に立ってないかもしれないけど、メタルはドラムもカッコよくて、よくスタジオで一人でドラム叩いててツイン・ペダルの練習もしてた。そこもジャズに無理やり繋げるとしたら、エネルギーとかスピード感はちょっと繋がってる、のかな?」