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White Lies “As I Try Not To Fall Apart”

天野「ホワイト・ライズが6作目になるアルバム『As I Try Not To Fall Apart』を2022年2月18日(金)にリリースすることを発表。最初のリードシングルとして、表題曲が公開されました。これは亮太さんが推した曲でしたよね」

田中「そうです! ニューウェイブ的な耽美さが特徴のエレクトロポップというサウンド自体はこのバンドの十八番ですし、この“As I Try Not To Fall Apart ”に際立った新機軸があるわけではないのですが、これはバンド屈指の名曲だと思いました。ギターがほとんど使われていないことで、ビートやシンセサイザーの存在感が以前よりも増しています。そのサウンドプロダクションがフロントマン、ハリー・マクヴェイ(Harry McVeigh)の粘り気のある低音ボイスにもマッチしているし、今後の彼らのライブでもアンセムになりそうかなと」

天野「亮太さんってこういうバンドの曲を紹介するとき、やけに生き生きしますよね(笑)! あと、人間の弱さや脆さをそのまま受け入れようとするようなリリックは、このバンドらしいと言えそう」

田中「泣けますよね~。ホワイト・ライズはもう10年選手で、特に日本では彼らのような中堅のバンドにはなかなか注目が集まらないと思うんですが、この〈PSN〉はニューカマーやレジェンド以外の動きもフォローしたい――そういう思いがあって、今回は紹介しました!」

 

Overmono “Bby”


天野「テセラ(Tessela)&トラス(Truss)の兄弟デュオであるオーヴァーモノの“Bby”。UKエレクトロニックミュージックのネクストビッグシングと名高い彼らは、7月にファブリックの有名なミックスシリーズに登場、『Fabric Presents Overmono』をリリースしました。同ミックスには新曲も入っていて、彼らはいつもハイクォリティーな曲を届けてくれますよね」

田中「この曲は、2ステップ的な跳ねたビートが印象的。まるで地面を溶かしていくような、ディープなベースサウンドも迫力たっぷりです。彼らの曲では、“BMW Track”(2021年)“iii’s Front”(2019年)のようにアブストラクトなブレイクビーツの曲が尖っていていいなと思っているのですが、この“Bby”はフロアフレンドリーなプロダクションと彼ら特有のラフな感触のビートがうまいバランスで調和されているように感じました」

天野「伝統的なUKベースサウンドを受け継いで刷新しているところもいいな、と僕は最近思い直しました。詳しくは野田努さんと河村祐介さんの対談を参照! ちなみに、この曲は、彼らが長年使っていたスタジオが再開発のため売却されることになり、トリビュートの気持ちを込めて最後に作ったものなんだとか。ウワモノや声ネタのメランコリックなフィーリングは、そんな背景に由来したものなんでしょうね。また、11月19日(金)にはこの曲を収録した12インチシングル『Diamond Cut / Bby』がリリースされます。彼らには、そろそろアルバムをリリースしてほしいんですけどね!」

 

Kali Uchis feat. SZA “fue mejor”


天野「カリ・ウチスがSZAをフィーチャーした“fue mejor”は、この一週間で最大の話題曲のひとつですよね。カリ・ウチスはもともとコロンビア生まれなのですが、ここ1、2年はルーツであるスペイン語のボーカルに挑戦、ラテン音楽への接近を試みています。2020年11月にリリースしたセカンドアルバム『Sin Miedo (Del Amor Y Otros Demonios) ∞』もその流れにある作品でした。さらに、アルバムの収録曲である“telepatía”がTikTokで流行って大ヒットして彼女の新たな代表曲になり、ポップスターの座に着いた……というのが最近の彼女の印象です」

田中「このSZAとの“fue mejor”は同作の収録曲で、もともとはパーティネクストドアがフィーチャーされていたんですよね。今回のリミックスは彼のパートがSZAに差し替わっていて、SZAはスペイン語の歌を披露していますね」

天野「亮太さんは〈ノれないな~〉なんて言っていましたけど、浮遊感たっぷりの2人のボーカルの絡み合いは相性抜群で、めちゃくちゃセンシュアルかつインティメットで最高じゃないですか! 僕はまず、この2人の組み合わせにアガりましたよ。ジャハーン・スウィート(Jahaan Sweet)、ジョシュ・クロッカー(Josh Crocker)、レイ・“クァジ”・ネルソン(”Ray “Quasi” Nelson)の3人が手がけたビートはドープかつ陶酔的で、オリジナル版もよかったけど、SZAの歌にもぴったりだと思います」