閉塞をぶち破って〈Neon Chapter〉へ
――そうした感情もある中で作られた新作『Neon Chapter』ですが、どんな思いで制作したのか教えてください。
「ずっと鬱屈してて、トンネルの中で方向がよくわからない中で、とりあえず突き抜けたいなって。いままでみんなが見て見ぬふりをしてきたことで、どんどんしわ寄せが来てる中で、バーンってぶち破って次のステージに行きたいって気持ち。
で、タイトルは最初〈Nu(New)Chapter〉とか言ってたんですが、PCのフォルダに〈Nu Chapter〉と書いたつもりがミススペルで〈Ne Chapter〉になっていたんですよね。でも、その文字を見ていたら、これ〈Neon Chapter〉でいけるなと思って。字面がちょっとモノネオン(MonoNeon)っぽいですけど(笑)」
――BIGYUKI名義の作品では、まだモノネオンとは共演してないですよね。
「ピート・ロックのバンド(ソウル・ブラザーズ)では一緒にやってるし、よく演奏する仲間だから、いつか一緒にやりたいですよ。俺が作った曲を聴いてもらうたびに、〈ベースが必要だったら教えて〉って言ってくれるんですけど、いつかコラボしたいな。本当に大好きだから」
――去年出したEP『2099』と今回のアルバムはコンセプト的に異なるものなのでしょうか?
「実は『2099』はフルアルバムを作るつもりで制作を始めたんですが、アルバムに収録するほどの納得がいく曲が揃わなくて。でも、2020年に何かを出すことに意味があると思ったからEPを出しました。だから、『2099』の収録曲はフルアルバムの一部になり得たものですね。
去年はあれだけ世の中グチャグチャになっていたし、音楽的に攻めたものというよりは、自分の中で聴きやすい、気持ちの良い感じの音像を集めたんです。でも、今回のアルバムは攻め攻め。以前作りかけていたものを完成させた曲とか、去年から今年にかけて新しく作った曲もあります」
――今回は『Greek Fire』(2016年)に通じるアグレッシブさと言いますか、以前からハドソン・モホークの路線を目指していると仰っていましたが、そこらへんが浮き彫りになったような印象も受けました。
「モノ/ポリーやソフィー、アルカとかにも好きな音の雰囲気があるけど、やっぱりインスピレーションを求めるために聴くのがハドソン・モホークで。結構前のアルバムだけど、ルニスとやった『TNGHT』(2012年)が凄い衝撃で、どっかのDJがフェスでかけてたのを聴いてぶっ飛んだな。俺もあの衝撃を常に自分の音楽で与えたいなと思っているんです」
――ジャケットのアートワークも、マリリン・モンローが緑のスライムにまみれているような感じで強烈です。
「たまたまフォローしていたギャラリーのインスタで紹介されていた絵を見て、〈これ、やべぇな〉と思って作者を見たらTeiji Hayamaさんという日本人アーティストの作品で。それで〈もし自分の音楽を聴いて面白いと思ってくれたなら、アートワークに使わせてほしい〉とDMを送ったんです。

『2099』の時もニュースサイトで見た写真を使わせてもらったんだけど、今回のジャケットに使った絵はマリリン・モンローという昔のビューティーシンボルとハルクという2つの全く異質なものが共存していて、俺の音楽にある全く違う要素、美しいものと激しいものが共存している感じと合うなと勝手に思ったんですよね」
――金属音っぽいリフが強烈な“Watermelon Juice”あたりは、ジャケットのイメージに合致してるなと。
「曲とは直接関係ないけど、関係あると言ってもいい。“Watermelon Juice”はポール・ウィルソンと一緒にジャムして速攻で出来た曲なんですが、その時にAbletonの画面を見ていたら、ステム(データ)が赤色と緑色になってスイカみたいだなぁと思って名付けました(笑)」