ファンタジーやRPGの世界へ、ムーディー・ブルース『Caught Live+5』
──では、最後にMikiki天野くんの推薦盤、ムーディー・ブルースのライブ盤『Caught Live +5』。演奏は69年ですが、発売が78年ということで今回のラインアップに入りました。

天野「先ほど話に出た“サテンの夜”のムーディー・ブルースです。ジミー・ペイジ曰く〈本当にプログレッシブなバンドというのはムーディー・ブルースとピンク・フロイドだ〉、とWikipediaに書いてありました(笑)。
このアルバムは確かメンバーがソロ活動で忙しくてバンドが休止していた時期に穴埋め的に出たんですけど、これがヒットして再始動したんですよ。
今回、これを選んだのはふたつポイントがあります。まず、サブスクに無いこと。あと、ムーディー・ブルースの他のアルバムがシリーズに無いこと。彼らは名盤がたくさんあるので、これをきっかけにいろいろ聴いてほしいなと。それに、このライブ盤は初期のR&Bバンド的な熱い演奏が聴けるのもいいんです」
村越「天野さんは若いのにムーディー・ブルースが好きなんですか?」
天野「好きですね。15、16歳の頃、すごく聴いてました。彼らはオーケストラとの共演やコンセプトアルバムの制作もすごく早いし、プログレの先駆的なバンドなんですよ。単純に70年代前半までのスタジオ盤は全部名作です」

──ムーディー・ブルースってジャケットやタイトルがどれもファンタジーSFとかRPGの世界観に近い感じがします。彼らの曲って、「ドラゴンクエスト」のいいところで流れそうじゃないですか(笑)
天野「熊谷さんが挙げていたバークレー・ジェイムズ・ハーヴェストも完全にRPGの世界ですよね。『FF(ファイナルファンタジー)』の音楽を担当する植松伸夫さんなど、ゲーム音楽の世界にはプログレ大好き人間が多いですしね」
熊谷「実際、当時のプログレやハードロックって『指輪物語』とかの影響を受けているし、ブラック・サバスのトニー・アイオミも自分たちの音楽性を問われて〈あれはボーイズファンタジーゲームだよ〉って答えたりしてるんですよね」
──発掘ライブ盤って今はいろんなバンドが出してますけど、当時こういうかたちでリリースがあるのは早かったかもしれない。
村越「発掘ライブでも先駆者ですね(笑)」
ショーンよりジュリアン
──ちなみに、今回の再発でいちばん話題を呼んでいるアルバムは、どれですか?
村越「圧倒的な1位はジュリアン・レノンの『Valotte』(84年)ですね。実はこのアルバム、CDがしばらくなかったんです」

──タイトル曲の“Valotte”は日本でもCMに使われましたしね。ある意味、同じジョン・レノンの息子でもショーン・レノンのデビュー時より衝撃を与えたかも。
熊谷「僕は90年代から洋楽を聴き始めたので、ショーンの後でジュリアンを知ったんですよ。そういう人たちは僕の世代以降では多いと思うし、聴いたことない人もたくさんいるんじゃないかな」
村越「ジョンのソロ『Walls And Bridges』(74年)とか『Double Fantasy』(80年)の優しさが好きな人は聴いてほしいですね。プロデュースはフィル・ラモーンだし、マッスル・ショールズ、NYのヒット・ファクトリー、LAのA&Mスタジオと、生演奏にこだわって贅沢に作られてるんですよ」

──ロックスターというより、ギルバート・オサリヴァン辺りに通じる職人的な資質の持ち主だと思うんです。
熊谷「これ以降のアルバムもいいんですよ。若いビートルズファンは聴いておくべきです」
村越「ちなみに前回の売行1位はブルー・チアーのファースト『Vincebus Eruptum』でした」
──しかし、この企画、この次はどうなるんでしょう?
村越「ここから年代がまた進んでいくのか、もう一回65~75年に戻る?」
熊谷「逆に1956年から65年に遡るのもいいかも? ロックンロールや隠れた名ビートバンドを出したり」
村越「それも面白いですね」
熊谷「しかし、ユニバーサルの選盤担当者は絶対ロバート・パーマー好きですよね(笑)。このシリーズの裏の目的はロバート・パーマー全タイトル再発だったんじゃないかと思ってます」
全員「確かに(笑)!」
INFORMATION
続・ロック黄金時代の隠れた名盤〈1976-1985編〉

音楽ファンを歓喜させ、大ヒットを記録している〈ロック黄金時代の隠れた名盤〉シリーズ第2弾! ロックが都会的に洗練されていく一方、パンクムーブメントによってシーンの趨勢は一変、ダンスやワールドミュージックなど様々な要素を取り入れたニューウェイブ勢が台頭し、更にスタイルが多様化していく70年代後半から80年代前半に生まれた作品のなかから廃盤や製造中止、限定盤完売など、暫く入手困難が続いていた裏名盤をピックアップ! プレミア付きやストリーミング未配信の作品も含め、超低価格1,100円(税込)にて限定発売!
https://tower.jp/article/feature_item/2021/07/09/0105
〈続・ロック黄金時代の隠れた名盤「1976-1985編」〉はタワーレコード新宿店10Fで販売中!

〈続・ロック黄金時代の隠れた名盤「1976-1985編」〉はタワーレコード新宿店10Fで販売中です。いずれの商品も生産限定盤のため、在庫のご確認などは店頭にてスタッフやお電話でお問い合わせください
タワーレコード新宿店
東京都新宿区新宿3-37-1 フラッグス9~10F
営業時間:11:00~21:00 ※2021年10月1日から当面の間営業時間を短縮しています
電話番号:03-5360-7811
https://tower.jp/store/Shinjuku