この美術館をパフォーマンスで埋め尽くせないか?

 金沢の人気観光スポットであり、全国から来館者が訪れる金沢21世紀美術館。コンパクトな円形の建物内には《ブルー・プラネット・スカイ》や、《スイミング・プール》などユニークな恒久展示作品がいくつもあり、オリジナリティあふれる企画展が開催され、広い芝生の庭も、いつ行っても来館者で賑わっている。もちろん、展覧会目当ての人が多いと思うのだが、チケットを持ってなくても通り抜けできるオープンな雰囲気の平屋の美術館は、毎日様々な人が行き来している。

 「この美術館をパフォーマンスで埋め尽くせないか?」

 そう思ったのはいつだったろう?

 これまでも金沢21世紀美術館では、館併設のシアター21のほか、交流ゾーンと呼ばれるフリースペースでサイトスペシフィックなパフォーマンスが行われてきた。が、今回のように同時多発的に美術館の敷地内で多数のパフォーマンスが行われるのは初めての試みとなる。

 「まことクラヴ+ニシハラ☆ノリオ 館内ゲリラパフォーマンス」
2007年10月7日(日)、8日(月・祝) Photo: IKEDA Hiraku

 

美術館でパフォーマンス

 「美術館は美術鑑賞のお客さまが来るところであってパフォーマンスの場ではない」。わかってはいるが、エントランスやフリースペース、もしかしたらバックヤードなど、美術館という非日常的な場で踊ってみたいと感じるパフォーマーはたくさんいる。金沢21世紀美術館は、そんな常識の垣根を徐々に壊してくれた美術館だ。

 展示スペースへの干渉が心配されるギリギリの場所でのパフォーマンスや館内フリースペースでまさに美術館内を飛び回るようなパフォーマンスも実現してくれた。それは今から7年前、開館から3年後の2007年のことだ(まことクラヴニシハラ☆ノリオ 館内ゲリラパフォーマンス 2007.10.7(日)、10.8(月・祝))。

 「まことクラヴ+ニシハラ☆ノリオ 館内ゲリラパフォーマンス」
2007年10月7日(日)、8日(月・祝) Photo: IKEDA Hiraku

 

 現在はパフォーマンスを実施している美術館も多いかもしれないが、当時、あの広範囲にわたるスペースを使用できたのは快挙だったと思う。

 私がパフォーマンスの世界と関わり始めた90年代半ばから2000年頃は、劇場空間を窮屈に感じるパフォーマーの出現が予感された時代だった。見せる対象も、見たいと思っている人だけでなく、偶発的に遭遇してしまった人も含まれるようになり、劇場だけでなく、場所や環境にこだわりと価値観を求めるパフォーマーの声が大きくなっていった時期でもあった。

 金沢21世紀美術館は、地下に156席の可動席をもつ多目的スペースである「シアター21」をもつ。美術館に劇場が併設されているのも珍しいが、劇場を飛び出し、美術館という非日常のスペースを使ってパフォーマンスがしたいというパフォーマーの願いを実践した美術館としても国内では先駆的な存在だ。同時にシアター21でのダンス企画も開館時から継続して行われてきたことで、毎年なんらかの形で「ダンスを観る」ことを楽しめる美術館として定着してきている。

 そして、今年は開館十周年を迎える。特別な公演を実施するよりも、これまでの実積を生かして、ダンスで美術館を埋め尽くし、乗っ取ってしまおう!という勢いで、多彩なパフォーマンスを散りばめることにした。

〈ニジュウイチビジャック!〉に出演するBaobabのプロモーション映像

 

 美術館に来てみたら…

 野外では舞踏の吉本大輔が白塗りした身体で登場し、地下にあるシアター21に行くとコンセプチャルではあるけれどユーモア溢れるダンス小作品を森下真樹川村美紀子が上演している。外から交流ゾーンを眺めているとガラス越しにBaobabが「ショーウインドウパフォーマンス」を踊っているのが見られて、普段は美術アーティストが滞在制作をしているプロジェクト工房内では山猫団による秘密の見世物小屋的パフォーマンスが開催されている。地下市民ギャラリーでは、私小説的でリリカルなソロパフォーマンスが川口隆夫によって上演され、光庭では金沢でのオーディションを通過したダンサーたちが鈴木竜振付作品を踊る。大道芸のun-paが美術館の至る所に出現し、ニジュウイチビジャックをナビゲートする。多様な組み合わせでダンスをみられる充実の4日間となる。

 

“ダンスの展覧会”

 ダンスといってもいろいろある。いろいろあってわからないなら、一度にいろいろ見てみると、ダンスを見るのもおもしろいかな?と思えるようなラインナップ。ダンスを見るキッカケになるような、たくさんの興味が詰まっているダンス作品をディレクション。そんなコンセプトで構想した「ニジュウイチビジャック!」はまさに“ダンスの展覧会”と言ってもいい。

 踊るという行為は身体を動かすことだけでなく、角度の違うたくさんの見せ方がある。舞踏、大道芸、ヒップホップ、コンテンポラリー、などなど見た目も異なるダンスばかり。難しく考えず、美術館で絵を観る時と同じように自由な解釈で自由にパフォーマンスを見て、楽しんでほしい。

 

EVENT INFORMATION

開館10周年記念
〈ニジュウイチビジャック! ~美術館をパフォーマンスで埋め尽くせ~〉

9/27(土)28(日) 10/4(土)5(日)各日終日開催

会場: 金沢21 世紀美術館シアター21、プロジェクト工房、市民ギャラリーB、交流ゾーン、屋外広場

出演: un-pa、吉本大輔、山猫団、Baobab、森下真樹、川村美紀子、川口隆夫、鈴木竜オーディションメンバー

主催:金沢21世紀美術館[(公財)金沢芸術創造財団]

企画制作協力:ハイウッド
助成:平成26年度文化庁劇場・音楽堂等活性化事業

http://www.kanazawa21.jp
公式Facebook   www.facebook.com/21bJack