天野龍太郎「Mikiki編集部の田中と天野が、海外シーンで発表された楽曲から必聴の楽曲を紹介する週刊連載〈Pop Style Now〉。この一週間は、いろいろな話題がありましたよね。今日なんてカニエ・ウェスト『Donda』のデラックスバージョンがリリースされたから、〈PSN〉どころじゃなくて、他のことを考える余裕がないのですが……」

田中亮太「いやいや、〈PSN〉にがっつり関係する話題じゃないですか(笑)。最近のエンタメ界の話題は、当連載でも何度か触れているブリトニー・スピアーズのことですよね。11月12日にロサンゼルス裁判所が後見人制度の終了を決定して、ブリトニーが父親ら後見人から解放されました。ほとんど人権侵害だったと言っていい状況から、ブリトニーが自由の身になったわけです」

天野「ブリトニーのことはドキュメンタリーとして放送されたり、デモやソーシャルメディアでアクティビズムが盛り上がったり、欧米では1年以上大きな話題になっていました。新たなフェイズに入ったことで、ブリトニーが今後どうなるのかを見守りたいです。それでは、今週のプレイリストと〈Song Of The Week〉から!」

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ROSALÍA feat. The Weeknd “LA FAMA”
Song Of The Week

天野「この一週間の最大の話題曲でしょう! 〈SOTW〉は、ロザリアがウィークエンドをフィーチャーした“LA FAMA”です。ラテンポップ界のスーパースターであるロザリアは待望のサードアルバム『MOTOMAMI』を2022年に発表することをアナウンスしたばかりで、この曲はそこからのファーストシングルになっています」

田中「ポップ化の拡大路線を爆進中のロザリアなので、もう誰とコラボレーションしても驚きはしないのですが、北米最大のスターの一人であるウィークエンドと、“Blinding Lights”のリミックスに続いて共演。すごいですね。ただ、シングルのジャケットを見ると、2人の顔の部分が焼かれて穴が空いていて、〈名声〉というものに対する皮肉が感じられます」

天野「曲名の〈fama〉は英語の〈fame〉と同義なので、まさにそういうことがテーマになっている曲なんです。そもそもウィークエンドの『After Hours』(2020年)には、そういう〈スター〉や〈名声〉へのアイロニカルな態度がありましたよね。で、シングルごとにさまざまな音楽性で魅せてくれるロザリアですが、この“LA FAMA”はラテン性を強く打ち出した曲です。しかも、レゲトンでもフラメンコでもなく、ドミニカのスタイルであるバチャータ。う~ん。かっこいい。そして、なによりもウィークエンドがスペイン語で歌っているのにぐっときます」

田中「テーマは〈名声とのロマンス〉。歌詞の英訳を見ると、〈名声はバッドな恋人 彼女は君のことを真の意味で愛してはいない〉とウィークエンドが歌っていますね。スーパースターが歌うと、説得力がちがいます。ロザリアのアルバムのリリースが待ち遠しいですね!」

 

Murkage Dave feat. Caroline Polachek “Awful Things”

天野「こちらも話題のコラボ曲ですね。英ロンドンのシンガーソングライター、マーケイジ・デイヴがキャロライン・ポラチェックをフィーチャーした“Awful Things“。デイヴは、日本での知名度はそれほど高くないのですが、2018年のファーストアルバム『Murkage Dave Changed My Life』が本国で高い評価を受けました。アルバムタイトルは、なんともいえない感じなんですが(笑)」

田中「それ以前からマイク・スキナーとたびたびコラボしたり、最近ではトリッキーのニュープロジェクト〈ロンリー・ゴースト(Lonely Guest)〉に参加したりと、彼の名前は以前から見かけていましたよね。この“Awful Things“は、彼にとって今年初めてリリースする曲。同時に“Don’t Move To London It’s A Trap”という曲も発表されています」

天野「メランコリックなギターが印象的な“Don’t Move To London It’s A Trap”もいいのですが、“Awful Things“はクールかつ洗練されたダンスホールでたまりません。ポラチェックの凛とした歌声も、見事にマッチしていますしね。元チェアリフトのポラチェックって、いまポップシーンですごく存在感があって、超重要人物だと思うんですよ。先週当連載で紹介したチャーリー・XCXの“New Shapes”にも参加していましたし、本当にひっぱりだこ。ポラチェックの動向は要チェックですね」