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Adrian Quesada feat. iLe “Mentiras Con Cariño”

田中“Know You Better (Live From Capitol Studio A)”(2021年)がグラミー賞最優秀ロックパフォーマンス賞にノミネートされた米オースティンのサイケデリックソウルバンド、ブラック・ピューマズ(Black Pumas)。そのギタリストであるエイドリアン・ケサダが、ソロアルバム『Boleros Psicodélicos』を6月3日(金)にリリースします。同作からのファーストシングルが、この“Mentiras Con Cariño”ですね。フィーチャーされているのは、プエルトリコのシンガーでカジェ・トレセ(Calle 13)の元メンバーであるイリーです」

天野「エイドリアン・ケサダはメキシコ系で、前作『Look At My Soul: The Latin Shade Of Texas Soul』ではラテンミュージックとソウル、ロックを組み合わせた、テキサスに根ざした音楽をやっていました。ただ、“Mentiras Con Cariño”を聴く限り、新作はかなりラテンに寄っていそうですね。というのも、同作は、ラテン系アメリカ音楽〈バラダ(balada)〉の黄金期である60年代後半~70年代前半へのトリビュート作なのだそうです。“Mentiras Con Cariño”も、コロンビアやキューバの音楽を想起させるセクシーであやしげなムードとイリーの深みのある歌が最高。新作には以前〈PSN〉で紹介したガブリエル・ガルソン・モンターノ(Gabriel Garzón-Montano)が参加しているそうで、どんなアルバムになっているのか、聴くのがとても楽しみです」

 

My Idea “Breathe You”

天野「マイ・アイデアは、パルバータ(Palberta)のリリー・コーニッグスバーグ(Lily Konigsberg)とウォーター・フロム・ユア・アイズ(Water From Your Eyes)のネイト・エイモス(Nate Amos)によるデュオ。いずれも各人のバンドでは、ローファイポップやインディーパンクっぽいサウンドを鳴らすことが多かったですが、マイ・アイデアではそうした要素を残しつつも、よりエレクトロニックかつベッドルームポップ的でメランコリックな音楽に取り組んでいる印象です」

田中「彼らは4月22日(金)にファーストアルバム『Cry Mfer』をリリース。今回の“Breathe You”と合わせてこれまでに3つのリードソングを発表してきましたが、いずれも良曲で〈PSN〉で紹介する楽曲の候補にあがっていました。“Breathe You”は、チープな打ち込みのビートとエフェクトがかけられたボーカルが印象的で、過去の2曲と比較しても、もっとも内省的なムードの楽曲ですね。プレスリリースのエイモスのコメントによると、この曲は彼ら2人がそれぞれに困難な時期を過ごしていたときに書かれたものだそう。同じコメントには〈私たち自身にとってこの曲を聴くのは簡単ではないですが、あなたが気に入って、そのなかに慰めを見つけてくれることを願っています〉との言葉も添えられています」

 

Sports Team “R Entertainment”

田中「英ロンドンのインディーロックシーンを代表するバンド、スポーツ・チームが新曲“R Entertainment”をリリース。全英2位を獲得した前作『Deep Down Happy』(2020年)に続くセカンドアルバム『GULP!』を7月22日(金)に発表する、とアナウンスしました」

天野「この“R Entertainment”は、いかにもスポーツ・チームらしい曲だなと思いました。かなりローリング・ストーンズ“Jumpin’ Jack Flash”(68年)っぽいスタイルのギターリフでぐいぐい進んでいく曲で、馬鹿馬鹿しさと陽気さ、勢いに満ちあふれています。一瞬ラーズっぽいフレーズが出てくるところも、いかにも英国のバンドって感じ。〈俺たちのエンターテインメントのために〉と繰り返すリリックは、皮肉が効いていて、かえって清々しい。キャロラインやブラック・カントリー・ニュー・ロード、ブラック・ミディのような知性派がいる一方で、スポーツ・チームみたいなバンドもいるのが、いまのロンドンシーンの良さだなと思います」