ニーヨのヒストリーを超駆け足で振り返ってみよう
ニーヨのキャリアはボーイズ・グループのヤングスタウンに楽曲を提供していた90年代末まで遡れる。その後にマーカス・ヒューストン“That Girl”(2003年)などを書き、ティードラ・モーゼズらの楽曲に関与していた彼が脚光を浴びたのは、共作したマリオ“Let Me Love You”(2004年)の全米No.1ヒットだった。そうした実績の積み重ねでジェイ・Z指揮下のデフ。ジャムと契約したニーヨは、2006年に初作『In My Own Words』を発表。ちょうど北欧からUS進出してきたスターゲイトと好相性を見せ、2枚目のシングル“So Sick”とアルバムが揃って全米1位を獲得した。
2作目『Because Of You』(2007年)ではマイケル・ジャクソンを意識した表題曲を披露し、そのオマージュは“Nobody”などを含む3作目『Year Of The Gentleman』(2008年)で極まるが、同作から世界的にヒットしたのはアッパーなユーロ・ポップ調の“Closer”だった。EDMブームの全米上陸に先駆けて欧州系ダンス・ミュージックに挑んでいたフットワークの軽さは、続く『Libra Scale』(2010年)に前後してデヴィッド・ゲッタやピットブル、カルヴィン・ハリスとの共演ヒットにも繋がっていく。
モータウンに移籍した2012年の5作目『R.E.D.』からはダンス路線の“Let Me Love You (Until You Learn To Love Yourself)”が大成功。さらにDJキャンパーやキー・ウェインらを迎えて〈R&B回帰〉を謳った2015年の『Non-Fiction』からもピットブルとのダンス曲“Time Of Our Lives”が最大のヒットを記録。そこからディアンジェロ使いの表題曲で話題を呼んだ7作目『Good Man』(2018年)では制作陣の幅を広げつつダンスホールやラテンまでをマイルドに取り込んで、今回の新作『Self-Explanatory』にも通じる足回りのモダン化を推進した。一方、初のクリスマス・アルバム『Another Kind Of Christmas』(2019年)はオリジナルのホリデイ・ソングと共にダニー・ハサウェイらの定番をまろやかに披露し、表現の根本を再確認した好盤だ。改めて聴くとどの作品も素晴らしい! *轟ひろみ
ニーヨのアルバムを紹介。
左から、2006年作『In My Own Words』、2007年作『Because Of You』、2008年作『Year Of The Gentleman』、2010年作『Libra Scale』(すべてDef Jam)、2012年作『R.E.D.』、2015年作『Non-Fiction.』、2018年作『Good Man』、2019年のクリスマス盤『Another Kind Of Christmas』(すべてCompound/Motown)