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自分はどこまでいっても自分

 tofubeatsとマイクを分け合った“One”や盟友のJJJ、BIMがエモーショナルにスピットする“Voyage”をはじめ、本作には、C.O.S.A.、Yo-Sea、Daichi Yamamoto、Campanella、 Ryugo Ishida、NENE、北里彰久、仙人掌、鎮座DOPENESSら、国内外の錚々たるラッパー、シンガーをフィーチャー。“Presence”を超える総勢8名からなるマイクリレーが聴く者を圧倒する“Expressions”が象徴するように、楽曲の世界観、ムードを補完する適材適所な配役、ゲスト陣の組み合わせの妙にはプロデューサーであるSTUTSの鋭敏なセンスが凝縮されている。

 「シンガー・ソングライター的な作品だった『Contrast』に対して、今回はプロデューサーとしての自分に立ち返って、親しいラッパーやシンガーをフィーチャーしつつ、自分の居場所を限定せず、新しいコラボレーションにも積極的にトライしたかったんです。“タイミングでしょ”でご一緒したAwichさんはラップも歌も上手くてグルーヴィーで、自身のアイデンティティーを前面に打ち出したリリックが心に刺さるアーティストですけど、今回のセッションを通じて、彼女にそれだけにとどまらないいろんな側面があることを知ったというか、それを形に出来たかなと。マイクリレー曲“Expressions”にフィーチャーしたSANTAWORLDVIEWくんも元々好きだったんですけど、彼がここ1、2年の作品でいろんなタイプのビートでラップしていて、自分のビートに乗ったSANTAくんのラップを聴いてみたくてお誘いしました。今回、声はかけられなかったんですけど、一緒に曲を作りたいラッパーはたくさんいるので、今後もおもしろいコラボレーションをお聴かせしたいです」。

 そして、ブルー&エグザイルでの活動でお馴染みLAのラッパー、ブルーが宇宙から俯瞰するような視点で色鮮やかな世界を描いた“Lights”や予想外の展開を見せるトラックと共に、5lackと台湾のR&Bシンガー、ジュリア・ウーが終末世界において不思議な引力が惹きつけ合う人々の物語を紡ぐ“World’s End”など、本作はリリックの面においても光と闇を内包し、巡り巡る〈軌道〉を強く意識させる。

 「『Orbit』というアルバム・タイトルは、ネガティヴにもポジティヴにも振り切ったものではないフラットな意味合いで付けたんですけど、自分はどこまでいっても自分であって、何を作っても自分から脱却できない、ある種の歪さ、その人のクセというのは、自分が音楽を聴いている時、ぐっとくるポイントだったりしますし、その部分は肯定的に捉えています。今回のアルバムもこれまで同様、できるかぎり最高のクォリティーのものにしようとがんばったんですけど、いくらがんばったところで、自分では気づけない歪みがあるし、それこそが音楽において重要なんじゃないかなって」。

左から、ブルーの2021年作『The Color Blu(e)』(New World Color/Nature Sounds )、Awichの2022年作『Queendom』(ユニバーサル)、SANTAWORLDVIEWの2022年作『I’M THE ONE』(1%)、5lackの2021年作『Title』(高田音楽制作事務所)、ジュリア・ウーの2020年作『5pm』(Pヴァイン)、tofubeatsの2022年作『REFLECTION』(unBORDE)