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作曲は自分の一部。言葉を大切にしている

――エラ・メイの曲を〈V-Mix〉として何曲もカバー(リリース)していたあなたが、エラ・メイが客演したアッシャーの“Don’t Waste My Time”(2019年)にソングライターとしてクレジットされていたのも興味深いです。プロデュースは、アッシャーの出世に貢献したジャーメイン・デュプリとブライアン・マイケル・コックスですが、この曲を手掛けることになった経緯を教えてください。

「ジャーメン・デュプリから声を掛けられて、最初はメアリー・J.ブライジに曲を書きたいので手伝ってくれないかって話だった。

それでジャーメインがミーティングに行っている間に歌詞を書いたんだけど、書いていくうちに女性より男性が主人公の曲になっていって……帰ってきたジャーメインがそれを聴いて、これはアッシャーが歌ったほうがいいということになった。

ジャーメインはその場でアッシャーに連絡して、1週間後にアッシャーがスタジオに来たんだけど、その時に俺に電話がかかってきて、ボーカルプロデュースをしてほしいと頼まれたので、それもやったんだ。

で、女性シンガーにも歌ってもらおうとなった時、アッシャーがエラ・メイの名前をあげて、FaceTimeで即連絡を取って参加が決まって、トントン拍子に出来上がった。

それがアッシャーにとって久々のNo.1ソング(Billboard Adult R&B Songsで首位に)なったんだ」

アッシャーの2019年のシングル“Don’t Waste My Time (feat. Ella Mai)”

――アッシャーに可愛がられて、エラ・メイのファンでもあるあなたとしては最高のストーリーではないですか。

「アッシャーへの恩返しみたいなもんだね。

エラ・メイに関しては、自分がカバー動画をアップした時も一番再生数が多かったみたいで。だからクールというか、凄い巡り合わせだなと思ったよ。彼女のボーカルプロデュースもしたし、あの曲のバックでは自分も歌っているから嬉しかったね」

――ソングライターとしては、リル・ディッキー feat. クリス・ブラウンの“Freaky Friday”(2018年)も書いていましたよね。曲を書く時に心掛けていることは何でしょう?

「歌手として売れる前、初めてお金を稼ぐようになったのがソングライティングの仕事だった。だからソングライティングに関しては大切に考えているし、とにかく言葉を大切にしている。

人によってはソングライターからアーティストへの移行がうまくできないこともあるけど、自分の場合は、ソングライターとしての蓄積があったからこそスムーズにシンガーに移行できた気がするんだ。

曲を書くことは自分の一部だし、これからも書き続けていきたいと思っている」

リル・ディッキーの2018年のシングル“Freaky Friday (feat. Chris Brown)”

――ソングライターとしては、韓国のアーティストにも関わっていますよね。EXOの“Going Crazy”やSHINeeの“Prism”などにあなたの名前がクレジットされています。

「韓国側(SMエンターテインメント)から、ソングライティングキャンプに参加してくれと声がかかったんだ。それで2週間くらい韓国に行って、レコード会社の偉い人とか、プロデューサー、アーティストたちと膝を付き合わせて、20曲から24曲くらいの曲を作った。その場で方向性を決めて、ゼロから曲を作っていく感じだったね」

EXOの2017年作『THE WAR – The 4th Album』収録曲“내가 미쳐 Going Crazy”

SHINeeの2016年作『1 of 1 – The 5th Album』収録曲“Prism”

 

マーヴィン・ゲイやスティーヴィー・ワンダーと心の中でコラボして歌う

――そうだったのですね。では、歌唱について。あなたはファルセットを交えたスウィートで清々しいボーカルが魅力で、レイドバックした雰囲気もあります。この唱法の原点はどこにあると思っていますか?

「R&Bのボーカルに関しては、たいていは教会で歌っていたりとか、そういうところが原点だったりするけど、自分自身もそうだったんだ。

自分の音楽のスタイルとしては、R&Bとネオソウルの間に位置するような感じだと思っていて。アッシャーやジャギド・エッジ、マーヴィン・ゲイ、クリス・ブラウン、R・ケリー、スティーヴィー・ワンダーとか、子供の時から聴いてきたすべての人たちに大きな影響を受けていて、その人たちとのコラボレーションみたいな気持ちで歌っているところがある。自分だけではないかもしれないけど、心の中でコラボすることによって自分のスタイルを作り上げていくんだ。

もちろん、それに加えて、自分自身が心を痛めた経験や人に与えている愛、ハッピーなことを組み合わせてオリジナルのスタイルができているんだと思う」