Spotifyの月間リスナーが94万人を突破するなど(2023年3月現在)、2021年のデビューから短期間で右肩上がりの注目を集めている3人組、DURDN。高いクオリティの楽曲を驚異的なペースでリリースしている彼らが、初のフィジカル作品であるCD『My Plan』を発表した。1月から放送されているTVアニメ「Buddy Daddies」のエンディングテーマ曲を収めたこのシングルから、DURDNのユニークな編成や活動について記者/音楽家の小池直也が考えた。 *Mikiki編集部
話題を振りまき認知を広げる注目のニューカマー
先日、Spotifyが注目するニューカマーを紹介するイベント〈Early Noise Night #15〉にトップバッターとして出演し、シティポップテイスト溢れる演奏で目を引いたグループがいた。
彼らは3人組だが、ステージにはギターと鍵盤、ラップトップを器用に操るメンバーと、黒いキャップを深めに被ってスモーキーに歌うボーカル、そして腕利きのゲストミュージシャンの3名のみ。残りのメンバー1名の姿はないものの、終始80sな雰囲気を醸し出して観客の体を揺らした。その名をDURDN(ダーダン)という。
グループ名の由来は映画「ファイト・クラブ」に登場する人物タイラー・ダーデンから。メンバーはIZ*ONEに“猫になりたい”(2019年)、乃木坂46に“Hard to say”(2021年)を楽曲提供をした、ビートメイカー・SHINTAとトップライナー・yaccoによるプロデュースデュオ〈tee tea〉に、韓国出身のボーカリスト・Bakuが加わった3人編成だ。
2021年1月16日にシングル“Conflict”で本格的に活動をスタートし、怒涛の12か月連続リリースを敢行。昨年は“何年後も”が〈ダイハツ タフト〉のテレビCMに起用され、“WARUNORI”のミュージックビデオに古着・ファッションの動画で人気のYouTuber・ポーカーズが出演するなどの話題を振りまき、着々とリスナーの認知を広げている。
今年はSpotifyが期待するネクストブレイクアーティスト10組をピックアップする〈Early Noise 2023〉にも抜擢された。その一環で出演したのが冒頭で伝えた〈Early Noise Night #15〉だった。ちなみにステージ上にいなかったのはyaccoで、フロアで演奏を観ていたらしい。
ファッション的なクリエイティビティが隠れたユニークな編成
彼らのユニークなところは、音楽はもちろんだが、特に〈ビートメイカー、トップライナー、ボーカリスト〉というメンバー構成が〈ヒップホップ × ファッション〉という観点で興味深いことだ。
近年のラッパーは服屋でアイテムを選ぶかのようにネットでビートを探し、それに歌を乗せて曲とする。よってビートメイカーとデザイナーは立ち位置が近い。つまりビートは服だ。次にトップライナーはメロディラインとリリック(文字列を表す〈ライン〉)を編むことで〈トップライン〉を生む役割なのでメイクアップアーティストだといえる。アイラインやリップライン、眉毛などのメイクアップとトップライニングは〈線を引く〉という意味で相似。髪も線の集積と考えると、ヘアメイクアーティストであるともいえよう。
また実際に服やメイクのキャンバスとなってそれらを作品として表現するのはモデルであるのに対し、ビートを乗りこなしてトップラインを唱えるのはボーカリストである。とすれば、ファッション的な視座でDURDNを見ると、SHINTAが服のデザイナー、yaccoはメイクアップ/ヘアメイクアーティスト、Bakuはモデルと考えることが可能だ。彼らの編成にはファッション的なクリエイティビティが隠れているといえるのではないだろうか。
これはプロデューサー/ビートメイカーであるカニエ・ウェストやファレル・ウィリアムスらがハイファッションとヒップホップを結び付けたことで可能となった見立てや感覚だ。