レギュラーグリップは細かい音のニュアンスを表現できる
――基本的なことなんですけど、レギュラーグリップ(ジャズだとこちらが主流)で演奏する利点を、ジャズドラマーから改めてお伺いできればと思います。
「元々小太鼓は、昔は行進しながら肩からかけて傾いた状態で叩いてたから、レギュラーグリップはちょうどそれに合うのね。昔のジャズドラマーは基本的にはそう。でもアート・ブレイキーとかマックス・ローチは、両方使う。やっぱりマッチドグリップの方が、一つ打ちのパワーが出るからね。だけど細かい音のニュアンスを考えると、レギュラーの方がいい」
――ブラジルのメタルバンド、アングラのドラマーのブルーノ・ヴァルヴェルデがレギュラーグリップなんですよ。
「格好良いね。スチュワート・コープランド(ポリス)もずっとレギュラーグリップだよね。コージーも、マイケル・シェンカー・グループの頃まではレギュラーグリップで叩いてたよ。“Into The Arena”とか。めっちゃ格好良い。
コージーがレギュラーで叩いてた影響もあって、自分はレギュラーグリップをやるようになったんだと思う。だから、高校の文化祭でレインボーの曲を演奏したビデオが残ってるんだけど、それはレギュラーで叩いてるよ」
江藤良人がメタラーに勧めるジャズアルバム
――それでは、皆さんに訊いている質問ですが、メタルファンにお勧めするジャズアルバムを教えて下さい。
「アート・ブレイキーの『A Night In Tunisia』(61年)。このドラムのロングソロを聴くと、ジャズもロックもへったくれもないなって思う。パワーと揺るぎのない迷いのない演奏っていうのが、〈これはロック魂〉って言ってもいいぐらい。
この前、たまたまBGMで聴いて、思わず聴き入ってしまって再確認した。それはお勧めするかな。
あとは、マハヴィシュヌ・オーケストラ。ファーストの『The Inner Mounting Flame』(71年)に入ってる“Vital Transformation”とか、スキャッターブレインみたいなのもあるよね。あれはよく聴いたなあ。
新しめのやつだと、近年大好きでお勧めなのは、テリエ・リピダル(Terje Rypdal)の『Conspiracy』(2020年)。昔のアリルド・アンデルセンのバンドのドラマー(ポール・トーセン)が今世紀に復活したやつなの。この人のシンバルの感じと太鼓のドタバタ加減が凄くいい。他のメンバーは多分若い人だと思うけど、結構えぐい。
ハモンド(オルガン)とかを使ってたり、ジャズロックの感じでバキバキ。ただし35分ぐらいしかない。すぐ終わる。だからずっとリピートして聴けるわけ。
これはちょっとメタルの人に聴いてほしいな。音も凄く良いのよ」
江藤良人がジャズファンに勧めるメタルアルバム
――それでは、ジャズファンにお勧めするメタルアルバムを教えて下さい。
「まあ、最初に挙げた『Love At First Sting』じゃないかな。

あとはこれ(レコードを取り出す)。コロナー(Coroner)の『Punishment For Decadence』(88年)。これ、良いよ、暗くて。当時、伊藤正則の番組で一瞬ぱっと流れて、それを聴いてすぐ買ったもん。多分スイスのバンドだったと思う。

他は、先に挙げたアイアン・メイデン『Power Slave』のニコ・マクブレインのシンバルワークとか、凄く勉強になると思う。カップとベルの縁のエッジの音とかの使い分けとか、ドラマーならわかる上手さがあって」
