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レギュラーグリップは細かい音のニュアンスを表現できる

――基本的なことなんですけど、レギュラーグリップ(ジャズだとこちらが主流)で演奏する利点を、ジャズドラマーから改めてお伺いできればと思います。

「元々小太鼓は、昔は行進しながら肩からかけて傾いた状態で叩いてたから、レギュラーグリップはちょうどそれに合うのね。昔のジャズドラマーは基本的にはそう。でもアート・ブレイキーとかマックス・ローチは、両方使う。やっぱりマッチドグリップの方が、一つ打ちのパワーが出るからね。だけど細かい音のニュアンスを考えると、レギュラーの方がいい」

――ブラジルのメタルバンド、アングラのドラマーのブルーノ・ヴァルヴェルデがレギュラーグリップなんですよ。

「格好良いね。スチュワート・コープランド(ポリス)もずっとレギュラーグリップだよね。コージーも、マイケル・シェンカー・グループの頃まではレギュラーグリップで叩いてたよ。“Into The Arena”とか。めっちゃ格好良い。

コージーがレギュラーで叩いてた影響もあって、自分はレギュラーグリップをやるようになったんだと思う。だから、高校の文化祭でレインボーの曲を演奏したビデオが残ってるんだけど、それはレギュラーで叩いてるよ」

マイケル・シェンカー・グループの81年のライブ動画

 

江藤良人がメタラーに勧めるジャズアルバム

――それでは、皆さんに訊いている質問ですが、メタルファンにお勧めするジャズアルバムを教えて下さい。

アート・ブレイキー『A Night In Tunisia』(61年)。このドラムのロングソロを聴くと、ジャズもロックもへったくれもないなって思う。パワーと揺るぎのない迷いのない演奏っていうのが、〈これはロック魂〉って言ってもいいぐらい。

この前、たまたまBGMで聴いて、思わず聴き入ってしまって再確認した。それはお勧めするかな。

ART BLAKEY & THE JAZZ MESSENGERS 『A Night In Tunisia』 Blue Note(1961)

アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズの61年作『A Night In Tunisia』収録曲“A Night In Tunisia”

あとは、マハヴィシュヌ・オーケストラ。ファーストの『The Inner Mounting Flame』(71年)に入ってる“Vital Transformation”とか、スキャッターブレインみたいなのもあるよね。あれはよく聴いたなあ。

MAHAVISHNU ORCHESTRA 『The Inner Mounting Flame』 Columbia(1971)

マハヴィシュヌ・オーケストラの71年作『The Inner Mounting Flame』収録曲“Vital Transformation”

新しめのやつだと、近年大好きでお勧めなのは、テリエ・リピダル(Terje Rypdal)の『Conspiracy』(2020年)。昔のアリルド・アンデルセンのバンドのドラマー(ポール・トーセン)が今世紀に復活したやつなの。この人のシンバルの感じと太鼓のドタバタ加減が凄くいい。他のメンバーは多分若い人だと思うけど、結構えぐい。

ハモンド(オルガン)とかを使ってたり、ジャズロックの感じでバキバキ。ただし35分ぐらいしかない。すぐ終わる。だからずっとリピートして聴けるわけ。

これはちょっとメタルの人に聴いてほしいな。音も凄く良いのよ」

TERJE RYPDAL 『Conspiracy』 (2020)

テリエ・リピダルの2020年作『Conspiracy』収録曲“Conspiracy”

 

江藤良人がジャズファンに勧めるメタルアルバム

――それでは、ジャズファンにお勧めするメタルアルバムを教えて下さい。 

「まあ、最初に挙げた『Love At First Sting』じゃないかな。

SCORPIONS 『Love At First Sting』 Harvest/EMI(1984)

あとはこれ(レコードを取り出す)。コロナー(Coroner)の『Punishment For Decadence』(88年)。これ、良いよ、暗くて。当時、伊藤正則の番組で一瞬ぱっと流れて、それを聴いてすぐ買ったもん。多分スイスのバンドだったと思う。

CORONER 『Punishment For Decadence』 Noise(1988)

コロナーの88年作『Punishment For Decadence』収録曲“Masked Jackal”

他は、先に挙げたアイアン・メイデン『Power Slave』のニコ・マクブレインのシンバルワークとか、凄く勉強になると思う。カップとベルの縁のエッジの音とかの使い分けとか、ドラマーならわかる上手さがあって」

IRON MAIDEN 『Power Slave』 EMI(1984)