フル・フォース最初期の参加作品として知られるのは、最初のメジャー契約ラッパーたるカーティス・ブロウの音源だ。往時のヒップホップ・レコードはDJが現場で繰り出すブレイクビーツの代替にファンクディスコ系バンドが演奏を行っていたのだが、より(当時の)現代的な感覚を持つFFがそこで重宝されたのは当然だろう。

【参考動画】カーティス・ブロウの83年の楽曲“Party Time”

 

 カーティス曲では“Party Time”(83年)や“Basketball”(84年)などで演奏やコーラスを担い、そんなノウハウも投入してFFが全面バックアップしたラップ・グループこそ同郷ブルックリンのUTFOであった。

【参考動画】UTFOの84年の楽曲“Roxanne Roxanne”

 

  〈ロクサーヌ〉なる架空のビッチを題材にしたUTFOの“Roxanne Roxanne”(84年)は、ロクサーヌ・シャンテ“Roxanne's Revenge”など多くのアンサーを生み、音源を介したバトルで80年代半ばのシーンを盛り上げる結果に。FF側の擁立したリアル・ロクサーヌやDJ/トラックメイカーのヒットマン・ハウイ・ティーも含むファミリーは、FF本隊の躍進も相まって80年代後半に一大勢力を築き上げた。時流がパーティー・ラップから去った90年代にはともかく、FFが以降もリル・キム(彼女もBK産)の美曲“Can't Fuck With Queen Bee”(2003年)やエンジェル“Who Runs This?”(2004年)で時代勘の確かさを見せていたことは付け加えておきたい。なお、後者に客演していたのは、後にキムと舌戦を交わす無名時代のニッキー・ミナージュ。つくづくビッチに縁のあるFFである。

【参考動画】リル・キムの2003年作『La Bella Mafia』収録曲“Can't Fuck With Queen Bee”

 

 

▼関連作品

左から、カーティス・ブロウのベスト盤『The Best Of Kurtis Blow』(Mercury)、UTFOの85年作『UTFO』(Select)、リル・キムの2003年作『La Bella Mafia』(Elektra)
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