マイアミ・ソウルの殿堂から世に出たファンキーでメロウでダンサブルな(だけじゃない)名品たちがまたまた大挙リイシュー! 重厚なコンピまで登場してきて、これはもう季節とか関係なく全部聴くしかないぜ!

 マイアミ・ソウルの王道からサンシャイン印のディスコ~ファンクまでを送り出し、主に70年代を通じて多種多様な作品を残してきたTK。創設者のヘンリー・ストーンが運営した30以上ものレーベル/ブランドの集合体という成り立ちゆえの間口の広さもあって、ベティ・ライトやKC&ザ・サンシャイン・バンド、ラティモア、リトル・ビーヴァー、ティミー・トーマスといった看板アクトの作品はもちろん、他エリアからの流入アクトや、舶来品も含む玉石混淆なディスコ・プロジェクト、ジャズやフュージョン、ゴスペル、あるいは先だって亡くなったボビー・コールドウェルのようなAOR文脈の作品に至るまで、残された作品の幅がとんでもなく広いことも、そのレガシーを追ってきた人には承知だろう。2016年からは〈The Miami Sound: Original Soul / Funk / Disco Collection〉としてSolidによる復刻プロジェクトが始まり、こちらの連載でもたびたびカタログを取り上げてきたが、そのシリーズも今回が最終章(?)になるとのこと。今回もそれぞれ固有の魅力を備えた色とりどりな作品たちが世界初復刻のタイトルを含めて13作品ラインナップされている。

 その時点で夫婦だったジョージ・マクレーとグウェン・マクレーのデュオ作品『Together』(75年)はいかにもTKならではの逸品だし、後期TKを彩ったデヴィッド・ハドソンの『To You Honey, Honey With Love』(80年)まで、時代ごとの王道サウンドが楽しめる。この時期の勢いを睨んでフィラデルフィアから移籍してきた傍系ブルー・ノーツの唯一のアルバム『The Truth Has Come To Light』(77年)も嬉しいリイシューだ。なお、レーベルの古参アーティストとして多くの作品を残したラティモアのリイシュー2枚のうち、ファースト・アルバムにあたる『Latimore』(73年)は意外にも今回が初CD化となる。

 初CD化のブツとしてはキング・ジェイムス・ヴァージョンのセカンド・アルバム『Together』(77年)はレアリティと関係なくゴスペル・ソウルの知られざる名品として聴き逃せないものだし、さらにフランス産のディスコ・プロジェクトだというクォーツの『Quartz』(78年)もまたディスコ隆盛時代の徒花には終わらない仕上がり。他にもディスコ時代の産物としては、バハマ出身のファンク・バンドであるT・コネクションの2枚も外せないところだろう。さらに、TK倒産後に再興されたヘンリー・ストーン・ミュージックからのリリースが含まれているのも興味深く、先述のグウェン・マクレーが旧知の面々と組んで古巣の名曲たちを歌った『Gwen McCrae Sings TK』(2006年)もTKストーリーのエピローグ(?)として楽しんでみたい。

CLARENCE REID 『Masterpiece - Clarence Reid 45s Collection From T.K. 1969-1980』 Solid(2023)

 一方、アルバム単位だけでは語れないリリース特性も踏まえて助けになるのが、これまでも多様な角度から編纂されてきた日本独自のコンピレーションであろう。今回のタイミングでも2タイトルが用意されていて、まずはクラレンス・リードのTK産シングルをファンク/ソウルに造詣の深いDJの黒田大介の選曲で集大成した『Masterpiece - Clarence Reid 45s Collection From T.K. 1969-1980』がいきなり凄い。クラレンスといえばベティ・ライト“Clean Up Woman”やグウェン・マクレー“Rockin’ Chair”などのヒットを手掛けたTK黄金期の名裏方で、下ネタ歌唱を聴かせる怪覆面ブロウフライとしての側面も知られてはいるものの、本名によるシンガーとしてのヒットはアルストンに残した初期の“Nobody But You Babe”(69年)などごくわずか。それだけに広く知られてはいない楽曲も多く、今回のコンピのヴォリュームたるや2枚組で計45曲!……と書くと敷居が高そうに思われるかもしれないが、親しみやすい歌唱と軽妙なグルーヴとおよそ10年に渡るマイアミ・サウンドの変化と共に楽しめるはずだ。

VARIOUS ARTISTS 『“Sound Funky!”- James Brown 45s Collection From T.K.』 Solid(2023)

 そしてもう一枚が、こちらも黒田の選曲によるジェイムズ・ブラウン関連のTK音源集『“Sound Funky!”- James Brown 45s Collection From T.K.』である。そもそも50年代からヘンリー・ストーンと縁の深かったJBは、70年代にブラウンストーンやインターナショナル・ブラザーズといったTK系列のレーベルから自身のファミリー作品を数多く送り出していたが、今作はその両レーベルのシングル曲をコンパイルした便利な一枚だ。大半を占めるボビー・バードやヴィッキー・アンダーソンといったファミリーの顔役による楽曲をメインに、JB’sの変名となるビリーヴァーズの“Across The Track Pt. 1 & 2”(71年)やJB’sウェッジ名義のディスコ・ナンバー“Bessie Pt. 1 & 2”、さらにはリー・オースティンの“Screwdriver”、ジョニー・ザ・マンなるシンガーのサム・クック・カヴァーまでアップもスロウも歌モノもインストもいい塩梅で並んでいる。なお、JBは大手レーベルの契約を失った狭間にTKから『Soul Syndrome』(80年)を出したり、後年までストーンとの関係は続いていたわけで、その流れから登場した別掲の『A Family Affair』(2007年)やバードの『Back From The Dead』(2006年)もこの機会にチェックしておきたい。

左から、クラレンス・リードの73年作『Running Water』(Alston/Solid)、ブロウフライの73年作『Butterfly』(Weird World/Solid)

TK産のJB関連作品。
左から、JB’sの79年作『Groove Machine』(Drive/Solid)、ジェイムズ・ブラウンの80年作『Soul Syndrome』(T.K./Solid)