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5. Chet Baker『Chet Baker Sings』

CHET BAKER 『Chet Baker Sings』 Pacific Jazz(1954)

――最後の作品はチェット・ベイカー『Chet Baker Sings』(1956年)。あなたの歌を聴いて、チェット・ベイカーを連想する人は多いのではないでしょうか。

「ビーチ・ボーイズからはメロディー。ディアンジェロからはサウンド。ニック・ドレイクからは親密さ。ジョニ・ミッチェルからは歌詞の面で大きな影響を受けた。チェット・ベイカーから影響を受けたのは歌い方だ。

彼はもともとトランペッターで、その後、シンガーになった。僕はギタリストからシンガーになった。だから、チェット・ベイカーはトランペットを吹くように歌っていて、僕はギターを弾くように歌っているように思えるんだ」

チェット・ベイカーの1954年作『Chet Baker Sings』収録曲“I Fall In Love Too Easily”

――なるほど。面白いですね。

「あと、チェット・ベイカーは、この時代のシンガーに比べるとすごくシンプルな歌い方をしている。音楽を通じてリスナーとコミュニケーションをとろうとしているような歌い方なんだ。

彼は音楽家として教育をちゃんと受けているので、どういうふうに歌ったら最も効果的なのかを、しっかりと研究して自分の歌い方を身につけた人。そういうところにも、すごく興味を惹かれるね」

――こうして話を伺うと、この5枚はあなたの音楽のエッセンスともいえる作品なんですね。

「それぞれのアルバムからすごくインスピレーションを受けていて、チェット・ベイカーっぽく歌うこともできるし、ディアンジェロっぽいアレンジをすることもできる。でも、ただ真似をするのではなく、彼らから受けたインスピレーションを自分の方法で昇華して、今までになかった新しいやり方で新しい音楽を作っていきたい。

今回選んだ5枚のアルバムは僕にとって絵の具のようなもので、お気に入りの絵の具を使って、これまで観たことがない新しい絵を描きたいと思っているんだ」

 

■後日談
ちなみに、ブルーノ・メジャーは取材後、選盤した5枚を売り場に戻そうとするスタッフを呼び止めて、「あっ、ちょっと待って。それ、買って帰りたいから、そこに置いといて。ありがとう。どこでお金を払えばいい?」と1枚キープしていました。彼が買って帰ったのは、『逃避行』の邦題で知られるジョニ・ミッチェルの『Hejira』でした。 *Mikiki編集部

 


RELEASE INFORMATION

BRUNO MAJOR 『Columbo』 Harbour/AWAL/BEAT(2023)

リリース日:2023年7月21日
品番:BRC742
価格:2,640円(税込)

TRACKLIST
1. The Show Must Go On
2. Tell Her
3. Columbo
4. We Were Never Really Friends
5. When Can We Be
6. A Strange Kind Of Beautiful
7. You Take The High Road
8. 18
9. Tears In Rain (For Granny)
10. St Mary’s Terrace
11. Trajectories
12. The End

Bonus Tracks
13. Trajectories – Piano Version
14. A Strange Kind Of Beautiful – Piano Version