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――そんなふうに感情を爆発できるのは音楽だけ?

「音楽だけですね。ほかのことは別ベクトルで楽しいですけど。アイドルをやってた頃は、ステージでむちゃくちゃ暴れてたんですよ。若い頃ってみんなしんどいじゃないですか。それをボクはステージで全部爆発させて、歌に感情を込めたりシャウトしたりしてたんです。お客さんがいなくてもステージからダイブするくらい自暴自棄になってた。それはステージじゃないところじゃないと感情が出せないからで、感情を表に出さないと自分が自分で無くなっちゃう気がしてたんです。ライヴがなかったらマジで死んでいたかもしれない」

――あのさんにとって音楽は特別なものなんですね。

「そうですね。今回、演技と歌はすごくにてるなって思いました。監督から〈ここはこういう感じで。その直後はこんな感じで言って欲しい〉と細かく指定がされて、その通りにセリフを言いました。歌もそうで、この部分はこういう感情で歌おうって考えるんです。それは人に言われてそうするのではなく、自分で思うことなので少し違うんですけど。言葉にどんな風に感情を乗せるのかを意識する、というところは通じるものがあるので、今後は演技で培ったものを音楽に反映できたらなって思います」

――今回は映画の主題歌も担当されましたね。主題歌を歌うのは初めですか?

「初めてです。監督には、撮影中に曲を作って欲しいって言われました。最初に脚本を見た時にメロディーとか、どういうサウンドなのか、どういう曲にしたいかは浮かんでいたんですけど、歌詞は撮影しながら考えました。明日香や間宮、信者の気持ちなんかも考えて歌詞を書きました。もちろん、ボクの気持ちも入ってます」

――これからミュージシャンとして挑戦したいことはありますが?

「最近は、自分の歌がもっと大勢の人に届けばいいなって思うようになってきたんです。だからライヴをもっと続けて行きたい。自分が頭に描く最高のライヴの映像があるんですけど、それを実現させたいですね。そのためにはいろんな人の力を借りないといけないけど、今はライヴをやるごとに、どんどん可能性を感じられるようになってきているんです」

 


あの(Ano)
9月4日生まれ。2020年9月より〈ano〉名義でのソロ音楽活動を開始。2022年4月TOY’S FACTORYよりメジャーデビュー。2023年にリリースした“ちゅ、多様性。”や“スマイルあげない”が大ヒット。音楽活動に留まらずタレント、女優、モデルとマルチに活躍中。主な映画出演作は「咲-Saki-」(17)、「血まみれスケバンチェーンソーRED」(19)、「劇場版ファイナルファンタジーXIV光のお父さん」(19)、「サイレント・トーキョー」(20)などがある。

 


寄稿者プロフィール
村尾泰郎(むらお・やすお)

映画/音楽ライター。音楽や映画に関する記事を中心に、雑誌、アルバムのライナーノーツ、映画のパンフレットなど幅広く寄稿している。

 


CINEMA INFORMATION

©2023「鯨の骨」製作委員会

鯨の骨
監督:大江崇允
脚本:菊池開人/大江崇允
音楽:渡邊琢磨
出演:落合モトキ/あの
配給:カルチュア・パブリッシャーズ
(2023年|日本|88分)
2023年10月13日(金)渋谷シネクイント、シネマート新宿ほか全国公開!
https://www.culture-pub.jp/kujiranohone/