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BLACK MOON 『Enta Da Stage』 Nervous(1993)

米ブルックリンのアンダーグラウンドなトリオのデビュー作。代表曲“Who Got Da Props”をまずは聴いてほしい。バックショットの暴力的かつリアルなリリック、DJイーヴィル・ディーやビートマイナーズらによるサンプリングをベースにしたダークでスモーキーでジャジーなビートの絡まり合いは、東海岸ヒップホップのクラシックに相応しい手触り。スミフン・ウェッスンやモブ・ディープのハヴォックらが参加。バックショットはスーパーグループ、ブート・キャンプ・クリックでも活動している。

 

BLUR 『Modern Life Is Rubbish』 Food(1993)

新作『The Ballad Of Darren』の発表とSUMMER SONICのヘッドライナーを務めたことが話題だった4人のセカンドアルバム。マネージャーの横領、アメリカツアーの失敗、シングル“Popscene”の不発(名曲なのに!)といった散々な目に遭い、バンドはレーベルからクビになりそうになった。そんななかデーモン・アルバーンは英国趣味に傾倒、ブラーがブラーになった瞬間だった。当初予定していたプロデューサー、XTCのアンディ・パートリッジとの制作がうまくいかなかったという裏話もあるが、大ヒットはせずとも彼ららしいロックサウンドと皮肉に満ちたリリックをレコードに封じ込めた名盤が生まれた。収録曲“Villa Rosie”は、サマソニでひさびさに披露された。

 

THE BREEDERS 『Last Splash』 4AD/Elektra(1993)

the pillowsの山中さわおが心酔するバンドの代表作で、今年30周年記念盤がリリースされた。ピクシーズのキム・ディール率いるカルテットは、この2作目でオルタナを代表する存在に。オルタナ/グランジ的なラフさと激しさがある一方で、ポップでキュートでユーモラスな魅力も同居しており、唯一無二のレコードだと言える。名曲“Cannonball”のミュージックビデオは、スパイク・ジョーンズとソニック・ユースのキム・ゴードンが監督。

 

CARCASS 『Heartwork』 Earache/Columbia(1993)

英リヴァプールのバンドの4作目にして、メロディックデスメタルの代表的名盤。90年に加入したギタリスト、マイケル・アモットが在籍した最後の作品になった(その後、2007年の復活時に再参加)。速さよりもブラック・サバス的に引きずるヘヴィネスが強調され、おどろおどろしくもあるが、一方で〈泣き〉や叙情性が印象に残るのは、やはりアモットの独特なプレイゆえ。ジャケットの彫刻は、あのH・R・ギーガーの作品。

 

CYNIC 『Focus』 Roadrunner(1993)

来日公演が盛り上がっていたプログレッシブメタル/テクニカルデスメタルバンドのファーストアルバムだが、バンドはリリース後に解散(2006年に復活)。それゆえ伝説的な存在の伝説的なアルバムでもあるわけだが、他のメタルバンドと比べても異質で特異な音楽性だったことは明らか。フレットレスベースやチャップマンスティック、叙情的なクリーントーンのギター、ギターシンセなどを縦横無尽に奏でる自由で独創的な演奏は、ジャズやフュージョンからの影響を多分に受けたもの。ボコーダーを用いたボーカルも独特だ。キング・クリムゾンからジャコ・パストリアスやウェザー・リポート、パット・メセニー、ティグラン・ハマシアンまで、様々なロックアーティストやジャズミュージシャンのファンに聴いてほしい。

 

DEATH 『Individual Thought Patterns』 Relativity(1993)

複雑性が増し、独自のテクニカルデスメタルを提示した『Human』(91年)に続いて発表された5作目。ギタリストのアンディ・ラ・ロック(キング・ダイアモンド)とドラマーのジーン・ホグラン(ダーク・エンジェル)が参加した唯一のアルバムになった。次々と展開し目まぐるしく変化していくリズム、見事なギターソロ、チャック・シュルディナーのシャウトを中心にした複雑な構造の曲を、高度な技術に裏打ちされた一糸乱れぬアンサンブルで奏でる様は圧倒的。実に創造的な名盤だ。次作『Symbolic』(95年)も傑作。