
故ISSAYとの共演からUnlucky Morpheusへの加入まで
――Jillさんのキャリアで興味深いものの一つに、DER ZIBETのISSAYさんとのコラボレーションがあります。
Jill「知人が開催するゴシックイベントにRose Noireが出演したことがあったんですね。中野の小さなサロンみたいなところで、アットホームな感じだったんですけど、その知人の伝手でISSAYさんが観に来られたんです。そこで終演後〈よかったよ〉と声をかけてくださって」
――ステージを観たうえでのことだったんですね。
Jill「その後もISSAYさんにアドバイスをいただいたりしているうちに、DER ZIBETのライブにお誘いいただいたり、今度は〈バイオリンで参加してよ〉という話になって。本当にお世話になりました。
私のパフォーマンスの部分、いかに魅せるステージをするかという点で、いろんなことを教えてくださいましたし、JillがJillである大きな部分を育てていただいたと思います」
――Rose Noireのゴシック的世界観もISSAYさんと符合したんでしょうね。
Jill「ISSAYさんのデカダンないでたちは、我々の憧れの化身のようでした。そこで親近感を感じてくださったのかもしれないです」
――Unlucky Morpheusでも活動していくことになりますが、当初はゲストとしての参加でしたね。
Jill「Rose Noireで対バンしたミュージシャンたちとHollow Mellowというプロジェクトを始めて、妖精帝國のオープニングアクトをさせていただくことになったんです。そのときに当時は妖精帝國に参加されていた紫煉さん(Unlucky Morpheus)と出会って。しばらく経ってから、コミケかM3でアルバムを出すんだけど、弾いてくれませんかとお話をいただいて。そこからのお付き合いですね」
――Unlucky Morpheusの音楽性であるヘヴィメタルもまた、Jillさんにとってそれまでになかった世界でしたでしょうね。
Jill「Hollow Mellowのギタリストがハードロックやメタル系だったので、抵抗はなかったですけど、本格的なメタルバンドで演奏させていただいたのは、あんきも(Unlucky Morpheus)が初めてでしたね。
最初はモニターなどにも苦労しました、〈自分の音が聞こえねぇ〉って(笑)。それまで演奏してきた環境では、自分以外の楽器の音があそこまで大音量で鳴ってることはなかったので。ドラムが継続的にいるプロジェクトもやったことがなかったんです。イヤモニを導入したり、工夫して、今はスムーズにやれるようになってます」
――今やイングヴェイ・マルムスティーンの“Far Beyond The Sun”のカバー動画が300万回再生を超えるバズり方をしているわけですから、面白いものですね
異なる個性のバイオリニストがが同じ志で制作
――そんな2人がTONERICOを始動させたのは、どんな経緯があったんですか?
星野「最初は私がお声がけしたんですけど、ずっと〈自分のような者がお誘いするのはどうなんだろう?〉と考えていたんです。ISAOさんにも相談して、何ヶ月経っても私が〈大丈夫なんでしょうかね?〉から進まないから、〈大丈夫だから言ってみなよ!〉と言われて(笑)。意を決してお声がけしたんです。
でも、意外だったんです。Jillさんは能力も華もある魅力的な方ですから、弦楽器ユニットへの参加なり、ツインバイオリンでの演奏なりを求められたり、ご自身でそういったプロジェクトをやっていてもおかしくないと思っていたから、今までインスト系バンドやバイオリンのユニットをおやりになっていなかったのが。ということは私と同じように、今後周りのどなたかもそうお考えになる瞬間は来るだろうなと。それでJillさんが〈どなたかとやる〉と発表されたら、私は立ち直れなくなるって(笑)。言うなら今しかないと思ったんですね(笑)」
――なぜ、Jillさんと一緒にやりたいと考えたのでしょう?
星野「同じ楽器だとバチバチした気持ちが生まれるのではという話に近いんですけど、私もヘタレながらそういう気持ちは多少あって、それがある分、いつも怯えてしまう、萎縮してしまう部分があるんです。でもJillさんだったら、そういう気持ちになることはなく、ご一緒できるんじゃないかって。
憧れの存在でしたし、それにお洋服の趣味も素晴らしいし(笑)。そういう親和性も大きかったですね。ユニットをやっていくとき、衣装や世界観をどうするかというときも、同じ方向を向いて作品が作れそうだと思いました」
――Jillさんは声をかけられたとき、どんな気持ちでした?
Jill「驚いたんですけど、誘ってくれる人がいて嬉しい、やったー!というのが正直な気持ちでした。迷うことなく、二つ返事で〈いいですね!〉って。ライトな感じで誘ってくださったので、その裏にそんな葛藤があってのことだったとは。
〈バチバチする〉というのも人によるんですけど、沙織さんに対してはそういうのがないですね。プレイスタイルも、音質も、得意とするプレイも違う。soLiの曲を聴かせてもらってますけど、すごく尊敬してるのは、曲作りができることです。クラシック奏者って、曲を作れないですし。私も作らないんですけど、周りに名曲を作れる人がいっぱいいるから作る必要もないし、作る気にならないんです(笑)。沙織さんには私と違ういいところがあって、合わさったら素敵な山ができるんじゃないかって、ナチュラルに思っていたんです」
――相手によっては、〈考えさせてください〉ということもあるわけですね。
Jill「〈魔界〉のときも、その後、(作曲家の)高梨(康治)さんの作品のレコーディングのときも、細やかに気を遣ってくださる方で、人柄も素敵な方だと思ってたんです」