”愛のバラード”の言葉を失うほどの美しさ
6年生になる頃にはジュブナイルでは飽き足らなくなり、横溝正史や栗本薫などの本格推理小説にシフトしていきました。そのミステリ熱がピークに達していた中学2年のときにテレビで観たのが、横溝正史原作の映画「犬神家の一族」だったのです。

映画本編も想像以上に素晴らしかったのですが、しかし何よりも心を鷲掴みにされたのは冒頭に流れる美しく流麗なテーマ曲。
あまりにも鮮烈な旋律にしばし言葉を失うくらいのショックを受けました。そしてオープニングテロップには目を凝らす必要もないほどの特大明朝体で〈音楽・大野雄二〉とあったのです。上映時に買った「ルパンVS複製人間」のパンフレットを飽きることなく読み返していた僕は、すでに彼の名前を知っていたものの、妙な遠回りをしてルパンと金田一が音楽で繋がるとは思ってもいませんでした。その後、ビデオ録画していたオープニングだけをテープが擦り切れんばかりにリピート再生したことは言うまでもありません。
あれもこれも〈音楽・大野雄二〉
話は少し遡りますが「ルパンVS複製人間」公開の翌年、日本テレビの「24時間テレビ 愛は地球を救う」の中で、手塚治虫制作の「海底超特急マリン・エクスプレス」(79年)という単発の特番アニメが放送されました。
アトムやブラック・ジャックなどおなじみの手塚キャラが総出演する豪華な作品で、僕がタイムリープ物を偏愛することになるきっかけの作品にして、小5のときにオチを丸パクリした小説を書いたほど印象深いアニメでもありました。
10数年後の大学時代、その心の名作をレンタルで初めて鑑賞し直してみたのですが、オープニングの主題歌でいきなり度肝を抜かれました。なにしろ全編英語詞で歌われる超グルーヴィーなディスコチューンで、当時のアニメ楽曲とは思えないほど大人びたクオリティだったのです。「このカッコよさはガキの頃にはわからなかったなぁ」などと感心したのもつかの間、クレジットを見てさらに驚愕しました。〈音楽・大野雄二〉……これはタダゴトではない。そんなことを確信させるセカンドインパクトでした。
さらにそれから数ヵ月後、何気なくテレビを垂れ流していると、今でも放送しているNHK「小さな旅」という紀行番組が始まったのです。
子供の時分からわりと好きな番組で、穏やかな叙情に彩られたテーマソングが印象に残っていました。そして流れてきたおなじみのテーマ曲だったのですが、不意に気付いたのです。〈これは、この感じはまさか……〉。しばらく画面を凝視していると、うわっ出た〈音楽・大野雄二〉。
いつも予想しない角度から我が心に切り込んでくるくせに、じつはずっと前から知っていたりする。一体なんなのだこの人の音楽は!
……こうして僕は大野沼の深みにずぶずぶと入り込んでいったのでした。
