サイモン・ラトルは来年2025年に70歳になるが、引き続き充実した活動をしている。レパートリーの中心はロマン派以降の作品だが、最近はイギリス音楽も重要な柱。本盤はこの人ならではのスピード感や研ぎ澄ましたリズム処理、激烈なサウンドが繰り出された名演だ。1945年、戦争で全てを失った闇の中から復興の芽が出つつも自信無げに歩む人間が、行きつ戻りつしながら、生命力を叫ぶこの交響曲の姿を、“シンフォニア・ダ・レクイエム”→“春の交響曲”→“青少年のための管弦楽入門”の順で並べる構成で、暗から明をより鮮やかに描く。オーケストラの各パートの輝く音と技術の上手さといったらこの上ない。