コラム

サイモン・ラトル指揮、ロンドン交響楽団の来日ツアー前にこだわりのブルックナー作品『交響曲第4番』がリリース

Photo by Mark Allan 写真提供:KAJIMOTO

今秋のロンドン交響楽団との日本ツアーを控え、こだわりのブルックナー・アルバムをリリース!

 ロンドン交響楽団と音楽監督のサー・サイモン・ラトルは今秋の日本ツアーを控え、ブルックナーの交響曲第4番をリリースする。来日を前にした6月13日のオンライン記者会見でラトルはブルックナーについて(同様の性格をもつ北欧のシベリウスとともに)、「自然を意識しており、非常に広い空間が感じられます。自然がぶつかりあい、進化を遂げる、そういう自然の力を感じさせてくれる」と語ったが、ラトルが現在最もその作品演奏に打ち込んでいる作曲家と言ってよいだろう。

SIMON RATTLE, LONDON SYMPHONY ORCHESTRA 『ブルックナー:交響曲第4番』 LSO Live/キングインターナショナル(2022)

 19世紀後半のウィーンを拠点として、1時間を超える巨大交響曲を次々に生み出したブルックナー。しかし、その作品は同時代になかなか受け入れられず、作曲者自身が幾度も書き直したり、弟子が善意で編曲したりしたため、同じ作品でも数種の楽譜が乱立する状況となっている。原典版では戦前のハース版、戦後のノヴァーク版が有名だが、現在は2つの出版社が最新の研究に基づく原典版の出版をすすめている。ハース版、ノヴァーク版を出版したウィーン音楽学術出版による「新アントン・ブルックナー全集(Neue Anton Bruckner Gesamtausgabe、略称NBG)」とヘルマン・ウィーン出版による「アントン・ブルックナー原典版全集(Anton Bruckner Urtext Gesamtausgabe、略称ABUGA)」である。そして前者をウィーン・フィルが後援しているのに対し、後者はラトルが後援しているのである!

 この交響曲第4番は後者の新しい原典版(コールス版)を使った世界初録音となっている。ラトルは会見で「コールスは自分が思ったことは排除して、ブルックナーが何を書いたのか、どういうアーティキュレーションを書いたのか、それにとことん誠実に書いたエディション」と評価。録音を聴くと、従来の版とアーティキュレーション、つまり音の切り方や強弱法において微妙に異なる部分があり、力強く、切れ味鋭く、見通しが良い演奏とあいまって、これまでの重厚すぎるブルックナー像を覆しているような印象を受ける。

Photo by Mark Allan 写真提供:KAJIMOTO

 このCDがユニークなのは、CD2に第2~4楽章の異稿の演奏を収めていることだ。これにより、差し替えられる前の第3楽章(現行版とは曲が全く異なる)と第4楽章(テーマは共通するが推移や展開の仕方が異なる)、及び第2楽章と第4楽章の改訂前のロング・バージョンを聴くことができる。コールスは、この交響曲の作曲開始(1874年)から初版出版(1889年)までのブルックナーによる改訂作業の各段階を整理して、新しい原典版を作っている。つまり、ラトルは最終段階の演奏をCD1に入れ、それ以前の異稿をCD2にまとめ、ブルックナーの推敲の跡を聴かせるとともに、コールスの誠実な仕事も音で見せてくれた訳である。

 同コンビは日本ツアーでブルックナーの交響曲第7番を演奏するが、勿論コールス版を使用する。ラトルは会見を次の言葉で結んだ。「変更は些細なディティールのこともありますが、それは徐々に蓄積してゆき、大きな違いとなって音楽に現れるものです。なので、私達は正しい7番を今回演奏できると思います」。

 


LIVE INFORMATION
サー・サイモン・ラトル(指揮)ロンドン交響楽団
日本ツアー2022

2022年9月30日(金)京都コンサートホール[A1]
開演:19:00
2022年10月1日(土)大阪 フェニーチェ堺[B]
​開演:16:00
2022年10月2日(日)神奈川 ミューザ川崎シンフォニーホール [C]
​開演:14:00
2022年10月3日(月)北海道 札幌コンサートホール Kitara[A]
​開演:19:00
2022年10月5日(水)東京・赤坂 サントリーホール[A]
​開演:19:00
2022年10月6日(木)東京・赤坂 サントリーホール[B]
​開演:19:00
2022年10月7日(金)東京・池袋 東京芸術劇場[A1]
​開演:19:00
2022年10月9日(日)福岡 北九州ソレイユホール[C1]
​開演:15:00

■プログラムA
シベリウス:交響詩「大洋の女神」op.73/交響詩「タピオラ」op.112
ブルックナー:交響曲第7番 ホ長調(B-G.コールス校訂版)

■プログラムA1
ベルリオーズ:序曲「海賊」op.21
ドビュッシー:劇音楽「リア王」から「ファンファーレ」、「リア王の眠り」
ラヴェル:ラ・ヴァルス
ブルックナー:交響曲第7番 ホ長調(B-G.コールス校訂版)

■プログラムB
ベルリオーズ:序曲「海賊」op.21
武満徹:ファンタズマ・カントスⅡ(トロンボーン:ピーター・ムーア)
ラヴェル:ラ・ヴァルス
シベリウス:交響曲第7番 ハ長調 op.105
バルトーク:バレエ「中国の不思議な役人」組曲

■プログラムC
ワーグナー:楽劇「トリスタンとイゾルデ」から前奏曲と愛の死
R.シュトラウス:オーボエ協奏曲(オーボエ:ユリアーナ・コッホ)
エルガー:交響曲第2番 変ホ長調 op.63

■プログラムC1
ワーグナー:楽劇「トリスタンとイゾルデ」から前奏曲と愛の死
ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲 op.43(ピアノ:チョ・ソンジン)
エルガー:交響曲第2番 変ホ長調 op.63

https://www.kajimotomusic.com/concerts/2022-lso/

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