
混沌とした展開と昇る竜のイメージで魅せる“蒼炎”
――5曲目の“蒼炎”は、アルバムの特色を象徴するような、ネオクラシカルスラッシュメタルとでも言うべきイントロなどがすごく印象的ですね。
TORU「挑戦枠第2弾です。歌もので使わないビートなので、こういうビートで歌メロを成立させるのもチャレンジでした。
昔、ドラゴンフォースがデスメタルで用いられるブラストビートを採用したことがありましたよね。こいつら、速さを追求するあまり、ブラストビートまでやりやがった!と思って(笑)。そこまでいかなくても、アルバムでは何かしらチャレンジしたいですから。激しい面を表現するのはテーマの一つだったので、このビートにうまく歌メロを乗せてみようと」
――Bメロの展開も凄まじいですよね。
TORU「いろいろ詰め込んでいて、混沌としていますね。アコギも入れているんです。アコギだけだと弱すぎるので、同じフレーズをエレキでも弾いているんですが、聞こえにくいかもしれません。オルガンが入っていたり、ストリングスがリズミックに弾いていたりするから。ビートは変わるけど、疾走感は損ないたくないという葛藤があって……いや、そんなに悩んではいなかったかもしれません(笑)。
アコギは指で弾いて、エレキはピックと指の両方で弾いたと思いますが、どちらもできる自分の持ち味も出せたと思います」
HAYATO「Bメロはこの曲の一番好きなポイントです。混沌としているので、どうキーボードを入れたらいいのかは悩みましたが。現状できる最善で入れています」
TORU「主旋律が真ん中にいて、左右では違うメロディーを歌っていて、ハモっているんですけど、そういう歌のアプローチも面白いと思います」
――“蒼炎”の歌詞については、どんなことを思い浮かべていたんですか?
HARUKA「最後まで悩んだ曲です。最終的に決めたテーマは、怒り狂った竜が昇っていくイメージ。『千と千尋の神隠し』で、ハクがおかしくなるシーンをイメージしながら、なんとか最後まで漕ぎ着けました。ただ、〈竜〉という言葉は使いたくなかったので、それを思い起こさせる表現をしながらも伏せています」
――怒りの感情も見えてきますが、ご自身の思いを表現していることはないんですか?
HARUKA「いや、これは想像の世界です」
――なぜ〈蒼き炎〉だったのでしょう?
HARUKA「炎の色は一般的に赤ですけど、青い方が本気っぽい気がするんです(笑)。このアルバムのイメージは赤ですけど、Bメロの〈蒼き陽炎〉という言葉が浮かんだからかもしれません。結果的に今回のテーマの赤と混ざっていい感じになったと思います」
クラシックを引用し、妖艶な夜を描く“rosé”
――“rosé”もギターリフにはネオクラスラッシュといった雰囲気がありますが、もうちょっとシンフォニックな印象ですね。
TORU「“The Sweet Scent of a Woman”と比べたらテンポは速いんです。曲作りのテーマは似たところがあったので、どう差別化するかは悩みました。“The Sweet Scent of a Woman”の中間部にはバッハの引用を入れていて、“rosé”のエンディングにはヴィヴァルディの引用を入れているんですけど、結果的にネオクラシカルメタル的な2曲にクラシックの引用があるという。
“rosé”の中間部分は、当初は違う展開のフレーズを考えていたんですけど、〈そんなもんか、お前は?〉と自分に言い聞かせながら(笑)、改めてゼロから考えてこの形になりました。曲の構成は、ソロ前の間奏とか、エンディングの引用とか、すごくうまくいったと思います」
HAYATO「この曲のイメージは〈優雅〉だったんですね。だから、ストリングスも速いフレーズじゃなく、優雅に歌うように弾いて。カンタービレですね」
TORU「上品というか、お城や赤い絨毯のイメージというか、ストリングスによって、そういうテイストが入ったよね」
HAYATO「アレンジする時に“rosé”というタイトルはなかったけど、高貴なイメージを全開にして作りました」
――そんな優雅な雰囲気を感じ取ったHAYATOさんに対して、HARUKAさんは〈罪深きこの夜に祝杯を〉と歌う(笑)。
HAYATO「嫌な女なんでしょうねぇ、この主人公(笑)」
HARUKA「この歌詞は“The Sweet Scent of a Woman”と組曲にしているんです。“The Sweet Scent of a Woman”が騙される側の目線、こっちは騙す側の目線みたいな。そっち側の曲があるんだったら、こっち側も作っちゃおうって(笑)」
――ポイントになるのが、“rosé”という言葉なんですよ。
HARUKA「私はお酒が全く飲めないんですけど、タイトルがお酒の名前の曲があってもいいかなと。ロゼって甘い系のお酒なのかな(笑)?」
HAYATO「ワインのイメージはあったってことでしょ?」
HARUKA「いや、別にワインじゃなくてもよかった」
HAYATO「じゃあ、大五郎でもいいってこと(笑)?」
HARUKA「大五郎ってお酒があるの(笑)? 辛口じゃなくて甘口のお酒がよかったから、それにしました」
――Aメロの〈一輪の薔薇に〉という言葉も関係しているのではないですか?
HARUKA「あっ! 確かに! ごめんなさい、全く考えてなかったです(笑)。じゃ、そういうことにします(笑)」
――HARUKAさんの歌詞のイメージは個性的ですよね。〈甘い蜜が溢れる〉という一節は、すごく本能的ですよ。
HARUKA「“The Sweet Scent of a Woman”もそうですけど、妖艶な夜の世界みたいな(笑)。書いたことがない世界でした」
――HARUKAさんが新しい一面を見せた歌詞は、今回のアルバムの推しポイントかもしれません(笑)。