影響力やビジネスより大事な人間的繋がりと思いの強さ
――影響を受けたJ-POPアーティストは具体的に誰ですか?
「やっぱり、Cymbalsに一番影響を受けています。今回、嬉しいことに元Cymbalsの沖井礼二さんと一緒に制作する夢が叶いました。あとはEPOさんや土岐麻子さん、東京スカパラダイスオーケストラやGENTLE FOREST JAZZ BANDなど、おしゃれなアーティストが多いですね。それと、相対性理論がめちゃくちゃ好きでした。
私はたまたま(相対性理論を担当した)加茂啓太郎さんに目をかけていただいて、〈Great Hunting〉という新人発掘部門でGOOD BYE APRILや宮野弦士くんと出会えたんです。アイドルの寺嶋由芙ちゃんもそこで繋がって、〈Great Hunting〉をきっかけに切磋琢磨し合える環境に身を置けたのは大きかったですね。あと最近、仲良くさせていただいてる作家は山川恵津子さんです」
――えっちゃんのことは僕もよく知っています(笑)。ジャンク フジヤマとの共演ライブで拝見した時も今回のアルバムを聴いた時も、CHiLi GiRLは極端に振り切れた弾け感が非常に面白いと思いました。
「それはスカパラなどの影響が大きいのでしょうね。
私は演奏家の楽器のうまさを気にしていて、演奏がうまくないと遠慮して思いっきり歌えないし、楽器で遊べないんです。飽き性なのでリハにかける時間を他の人が掛ける通常の半分にして、〈あとは本番で楽しもう! せっかくだから飲み行こう!〉というノリが通じるメンバーじゃないとダメなんです(笑)。リハ以上に150%楽しめる人、本番で一緒に遊んでくれるミュージシャンを選んでいるので、責任を持ってリーダー性を発揮しなきゃと思って振る舞っている面はあります」
――近年のシティポップブーム以降、ライブを打ち込みのカラオケで済ませたり、演奏力が高くなかったりするアーティストが増えましたよね。その点、CHiLi GiRLの音楽はスキルや音楽理論にしっかりと裏打ちされている。最近は生成AIの登場もあって、特に重要になってきていることだと思います。
「そうですね。例えばインフルエンサーやTikToker、YouTuber系のミュージシャンはフォロワー数や動画の閲覧数こそ多いけど、〈これを生のライブで30分も見ていられるかな?〉と疑問に思うことが多いんです。やっぱり数字で判断せずに自分の目で確かめたり、私が大事にしている軸がきちんと伝わるかどうかをチェックしたり、メンバー選びは慎重にしたいですね」
――色んな新人の音楽を聴いて、〈5年後、10年後に生き残っているかな?〉と考えることは多いんです。なので、CHiLi GiRLのような個性の強さや、スキルだけに惑わされない本物としての下地は大事だと感じます。
「CHiLi GiRLも編成によっては機械やマニピュレーション頼りになることはありますが、人間として愛し愛されることがバンド形態などの生演奏をする価値の一つだと思います。〈仕事で依頼する〉というビジネス性だけではダメで、〈この人のために何かしたい〉〈この人の音じゃないとCHiLi GiRLのこの曲は完成しない〉という思いを曲作りやパフォーマンスで大事にしていきたいです」
沖井礼二、GOOD BYE APRIL、宮野弦士ら信頼し尊敬し合う音楽仲間
――今回の『CARAI』はCHiLi GiRLとしての2ndアルバムですが、初の全国流通盤ですよね。
「川嶋志乃舞としてのアルバムはほとんどが流通盤でしたが、CHiLi GiRLでは初めてです。CHiLi GiRLの前作『MEBAE』は完全に自主制作で、制作費から何から全部一人で賄っていました」
――では、CHiLi GiRLの本格的なデビュー作ということですね。1曲目“FLY”を編曲した沖井礼二さんは、どんなところがお好きなんですか?
「沖井さんの作品は、風と光と色彩がはっきり見えるんです。色彩や、景色に差してくる光――例えば何かの乗り物に乗っているシチュエーションだったら環境によって増減する風の量とか、そういうものが曲のゴールに向けてコントロールされているのがすごくよくて。参考にするまでもなく、私の体に入っていると言っていいほど沖井さんの音楽は聴きまくっています」
――GOOD BYE APRILの倉品翔さんとも共演されていますね。
「倉品くんには“One Q”でアレンジとフィーチャリングで参加してもらっています」
――付き合いは長いんですか?
「20歳頃に〈Great Hunting〉に入ってからなので、10年ぐらいですね。一緒に飲みに行く仲ですが、GOOD BYE APRILは〈ネオ・ニューミュージック〉というジャンルを掲げていたので音楽的に一緒になる機会が少なくて、コロナ禍前後に彼らの音楽性がより1980年代のシティポップ方面に移行してから関わりが増えました。制作では、ここ4年ぐらいが最も濃厚にお付き合いさせてもらっています」
――では、宮野弦士さんは?
「宮野くんも同じく10年ぐらいの付き合いで、大親友です。川嶋志乃舞作品のほぼ全作をアレンジしてもらっていますが、彼が多忙だったり私の予算の制限もあったりして、4、5年ほど一緒に作っていなかったんです。
去年の夏にリリースした“サマーロマンス計画”で制作チームに戻ってきてもらって、今回は2作目の夏曲として“Summer Sniper”をお願いしました」