財政難。枕詞のようにこの単語がつきまとう。ベルリン・フィルの財政への取り組みが演奏レベルを押し上げ、第二次世界大戦中には悪い意味も含むが、結果としてドイツ国家を音楽界を象徴する存在になったことを伝える。保養地や主要都市へ長期演奏旅行に始まりビューロー・ニキシュ・ヨアヒム・クライスラー・カザルス・ハイフェッツの招聘、「パルジファル」・ニキシュ“運命”からカラヤンに至る録音活動を経てデジタルコンサートホールの配信につながる。個人的にはベルリン占領時代のボルヒャルトの感動すら覚える困難な活動やアバドのオーケストラ初の監督〈生前退位〉の章が心に残った。