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成熟と完成を放棄し、境界線に遊ぶ子どもたち

実際、『Obscure Ride』からの、ある意味で〈時間割通り〉の5曲が終わったのが、ひとつの合図だった。髙城がMCを取り、環境と季節感の変化で早足で過ぎ去る秋を引き止めないといけないと語り、「秋の“Summer Soul”」と紹介して歌った初期の名曲“ディアハンター”から、一気に、時計は自在に動き出した。今日の、もうひとつの本番か!と感じたほど、そこからの数十分に、ぼくは魅了された。

5人での演奏は至難ではないかと勝手に想像していた祝祭感あふれる“レテの子”や、ceroの複雑なポリリズムのひとつの頂点でもある“魚の骨 鳥の羽根”を、彼らは果敢に演奏した。そのとき、彼らはとても楽しそうだった。椅子に座っての演奏を、ついつい年齢を経ての成熟と受け止めてしまっていたことを心から反省した。あの部屋みたいなセットと椅子は、子どもたちの遊び場のイメージなのかもね。彼ら5人は成熟と完成を今夜は放棄して、自分たちで音楽という粘土や積み木を組み替えて遊ぶ。“レテの子”の歌詞が自然と脳内にフィードバックする。

どこへでもいける 境界線に遊ぶ子どものように

『Obscure Ride』を入り口にして、あるいは、回るメリーゴーラウンドの軸のようにして、彼らはceroの境界線を一度壊して、拡張して、遊んだ。この特別な夜の演出の一助となっていた植物やインテリアなど、舞台のデコレーションを手掛けた装飾チームはYOLOS。単に配置しただけでなく、植物を光に照らして動かしながら、幻想的な影を美しく映し出していった。『Obscure Ride』の時期にceroが演出で使ったことがあったワヤン(ワヤン=クリ。バリ島などで行われる影絵演劇)も思い出した。

 

変化を告げる季節

初期からの重要曲“ディアハンター”“outdoors”“cloud nine”と、最新型のceroの曲”Nemesis””健忘者たち””Angelus Novus”が、昔と今ではなく、そのまま混濁する現在を作る。上下でも左右でもない、断絶しない世界を遊ぶように慈しんで生きるための音楽として、アンコールの“街の報せ”ほど素晴らしくマッチする曲はなかった。

この一夜が、今後のceroにどう作用していくか。秋は穏やかな実りのときであり、変化を告げる季節でもある。それはまだ彼らにもわからないのかもしれないけど、その先をまだ見ていたい。客電が付いたとき、“cloud nine”の歌詞が、観客の頭の上でフキダシみたいにあちこちでリフレインしているのが見えた気がした。そんな夜だった。

季節が変わっていく前の おかしな夜だよ

 


SETLIST
1. C.E.R.O
2. Yellow Magus (Obscure)
3. Elephant Ghost
4. Summer Soul
5. ticktack
6. ディアハンター
7. レテの子
8. Orphans
9. 魚の骨 鳥の羽根
10. わたしのすがた
11. outdoors
12. cloud nine
13. Nemesis ネメシス
14. FALLIN’
15. 健忘者たち
16. Angelus Novus アンゲルス・ノーヴス

ENCORE
17. 街の報せ