オリヴィア・ディーンのヒットなど英国音楽の復活
小田「メインストリームのポップやヒップホップをはじめ、アメリカの音楽が強かった状況から一転して、イギリスの音楽が世界的に注目されたのも2025年の出来事です。ソフトでジャンル越境的なポップソウル系シンガーのオリヴィア・ディーンの2ndアルバム『The Art Of Loving』から“Man I Need”“So Easy (To Fall In Love)”といったヒット曲が国際的に注目を集め、サム・フェンダーがハートランドロック路線を極めた『People Watching』はアメリカを含む各国でヒットしました」
天野「コールドプレイやアデル、エド・シーランに続くUK新世代の国際的スターが育ちつつあるように思えますね。サムが“Rein Me In”のオリヴィアとの共演バージョンをリリースしたことは、〈2025年の英国音楽〉を象徴する動きだったなと。
あと、さっき言ったように〈FORCE Festival〉へ出演し、単独公演で再来日するセントラル・シーも、1stアルバム『CAN’T RUSH GREATNESS』をリリースして世界的な注目を集める存在になってきました。
小田「UKといえば、レディオヘッドの復活が話題でしたよね。11~12月にヨーロッパツアーを開催したことで脚光を浴びました」
天野「その前に“Let Down”がTikTokで突如リバイバルヒットしたこともおもしろかった。メンバーがバラバラで緊張感に満ちていた内情を吐露したインタビューもセットリストを毎回変えるライブも、とにかくレディオヘッドらしかったなと思います。また日本でもライブをやってほしいですね」
メタル人気の再燃とポストハイパーポップの音
小田「メタル人気の拡大も2025年的なトピックだったと思います。スウェーデンのゴーストが『Skeletá』で、イギリスのスリープ・トークンが『Even In Arcadia』で、それぞれBillboard 200の首位を獲得したことが象徴的でした」


天野「メタルは支持基盤がしっかりしていて、フィジカルセールスが強いのでチャートの上位に入りやすいのですが、全米1位というのは近年なかったですからね。ハードロックアルバムが1位になったのはAC/DC『Power Up』以来約5年ぶりだそうです。
それだけでなく、デフトーンズ『private music』、スピリットボックス『Tsunami Sea』、日本から世界に羽ばたいて活躍するBABYMETAL『METAL FORTH』といったアルバムもヒットし、高評価を得ました」



小田「『METAL FORTH』はBillboard 200で9位を取り、日本人グループとして初のトップ10入りを果たした歴史的達成も話題でしたね」
天野「あの快進撃はすごかったですね。1970~1980年代や2000年前後にあったメタルの主流化現象が、もしかしたらこれから再び起こるかも?なんて感じています。年末に掲載した西山瞳さんの年間ベストアルバム的な記事も参考になるので、ぜひあわせてチェックしてください。
それと、ジャンルや音楽性ということでいうと、〈ポストハイパーポップ〉と呼ばれるような音楽がかなり一般に広がってきたなと思ったのが2025年でした」
小田「というと?」
天野「たとえば、フランス出身のオーケールーがリリースしたデビュー作『choke enough』は、昨年特に高く評価されたアルバムでした。同作にはダニー・L・ハールやA. G. クックといったハイパーポップの基盤になるサウンドを作ったプロデューサーが関わっていて、ブレイディーやアンダースコアーズなどハイパーポップ世代のアーティストが客演しています。それなのに『choke enough』のサウンドにはハイパーポップ的な過激さや過剰さはなく、まろやかで穏やかかつドリーミーだったり、Y2Kの要素を取り入れたものだったりするんです。それこそがポストハイパーポップを体現している証拠というか」
小田「ハイパーポップに影響を与えたであろうFKAツイッグスも、傑作『EUSEXUA』を発表して絶賛されましたよね」
天野「あのアルバムはテクノやハウス、UKベース、インダストリアルなどに接近したハードなダンスポップ作で、チャーリーxcx『Brat』とともに〈ハイパーポップの次〉を感じさせるところがありましたね。11月リリースの拡大版『EUSEXUA Afterglow』に追加された“HARD”は、個人的に昨年のベストトラックでした!
年始企画として、今年注目の新人邦楽アーティストを2人で選んだじゃないですか。そのなかにも〈ハイパーポップ以降〉を自然と体現しているアーティストが多くいて、洋楽と邦楽、双方で共有しているキーワードが〈ポストハイパーポップ〉なんじゃないかなって感じています」




