2025年、ビッグアーティストの来日公演やフェスが盛り上がった一方、国内で話題になった最新の洋楽作品や曲は少なかった印象です。では、シーンでは何が起こっていたのでしょうか? 前編に続いて、昨年の洋楽を完全総括するべく、Mikiki編集部の天野龍太郎と小田淳治が語り合いました。 *Mikiki編集部
オアシスからタイラーまで来日ラッシュに沸いた2025年
天野龍太郎「前編では2025年を象徴するアルバムや曲について語りました。後編はテーマ別で話していければと思っていて、まずは〈来日ラッシュ〉について話したいなと」
小田淳治「2025年のスタートとともに〈rockin’on sonic〉が2日間開催され、パルプやプライマル・スクリーム、ウィーザー、マニック・ストリート・プリーチャーズ、ジーザス&メリー・チェインといったベテラン、セイント・ヴィンセントのような中堅、ウェンズデイなど若手の注目株が多数出演しましたね。まさに〈日本の洋楽好き〉に向けたいいフェスでした」
天野「復活したパルプが見られたのは最高でした! ちなみに今年は1日のみ開催で、ヘッドライナーのペット・ショップ・ボーイズが体調不良で当日にキャンセルするというトラブルがありつつ、アンダーワールドやトラヴィス、ウルフ・アリス、ニーキャップといった幅広い世代とジャンルのアーティストが盛り上げていましたね」
小田「洋楽フェスについては、フジロックもサマソニも邦楽アーティストの比重が年々大きくなってきています。
昨年のフジロックはフレッド・アゲイン、ヴルフペック、ヴァンパイア・ウィークエンドという異色のヘッドライナーでしたが、フェス自体や苗場という環境のブランドと魅力も寄与して成功を収めました。あと、ヒョゴ&サンセット・ローラーコースターやシリカ・ゲルといった韓国/台湾勢、西アフリカのエムドゥ・モクターなども客入りがよくて賑わってましたね。今年のフジロックにも期待したいです!」
天野「昨年の模様は、小田さんによる3日間徹底レポート記事をご覧いただければと思います。
サマソニのヘッドライナーはフォール・アウト・ボーイとアリシア・キーズでした。J・バルヴィンらラテン音楽アクトに注力したり、aespaやKATSEYEなどK-POP系アーティストを揃えたり、21サヴェージのような大物ラッパーを招聘したりと、幅広いジャンルを攻めていた印象です。アリシア・キーズの堂々たるパフォーマンスはすごかったですね~。開催前に注目アクトを紹介した記事も、改めてチェックしてみてください。ジャミロクワイとデヴィッド・バーンが出演する?と噂されている今年のラインナップも楽しみです。開催25周年を祝って、3日間開催になりますし」
小田「単独公演については、去年最大の話題だったオアシスを筆頭に、カイリー・ミノーグ、シンディ・ローパー、リンキン・パーク、タイラ、フー・ファイターズ、ビリー・アイリッシュ、マライア・キャリーら新旧の大物が多数実施。オアシスの来日公演については編集部とタワーレコードスタッフで語る記事を作ったので、ぜひご覧ください」
天野「自分はトゥールのKアリーナ横浜公演にガチで感動しました……。
あと、著名ラッパーの来日も多かったんですよね。タイラー・ザ・クリエイター、トラヴィス・スコット、ドージャ・キャットなどなど。トラヴィス・スコットのライブにはなんとイェ(カニエ・ウェスト)が飛び入り参加して、非常に話題になっていました。さらにYZERR主催の〈FORCE Festival〉がフューチャー、セントラル・シー、セクシー・レッド、メトロ・ブーミン、エイサップ・ファーグ、マネーバッグ・ヨー、ポロ・G、ナヴ、ラトーなど第一線のラッパーを集結させ、日本のヒップホップの盛り上がりにかなり貢献していたことも大きかったです」
オリヴィア・ディーンのヒットなど英国音楽の復活
小田「メインストリームのポップやヒップホップをはじめ、アメリカの音楽が強かった状況から一転して、イギリスの音楽が世界的に注目されたのも2025年の出来事です。ソフトでジャンル越境的なポップソウル系シンガーのオリヴィア・ディーンの2ndアルバム『The Art Of Loving』から“Man I Need”“So Easy (To Fall In Love)”といったヒット曲が国際的に注目を集め、サム・フェンダーがハートランドロック路線を極めた『People Watching』はアメリカを含む各国でヒットしました」
天野「コールドプレイやアデル、エド・シーランに続くUK新世代の国際的スターが育ちつつあるように思えますね。サムが“Rein Me In”のオリヴィアとの共演バージョンをリリースしたことは、〈2025年の英国音楽〉を象徴する動きだったなと。
あと、さっき言ったように〈FORCE Festival〉へ出演し、単独公演で再来日するセントラル・シーも、1stアルバム『CAN’T RUSH GREATNESS』をリリースして世界的な注目を集める存在になってきました。
小田「UKといえば、レディオヘッドの復活が話題でしたよね。11~12月にヨーロッパツアーを開催したことで脚光を浴びました」
天野「その前に“Let Down”がTikTokで突如リバイバルヒットしたこともおもしろかった。メンバーがバラバラで緊張感に満ちていた内情を吐露したインタビューもセットリストを毎回変えるライブも、とにかくレディオヘッドらしかったなと思います。また日本でもライブをやってほしいですね」
メタル人気の再燃とポストハイパーポップの音
小田「メタル人気の拡大も2025年的なトピックだったと思います。スウェーデンのゴーストが『Skeletá』で、イギリスのスリープ・トークンが『Even In Arcadia』で、それぞれBillboard 200の首位を獲得したことが象徴的でした」


天野「メタルは支持基盤がしっかりしていて、フィジカルセールスが強いのでチャートの上位に入りやすいのですが、全米1位というのは近年なかったですからね。ハードロックアルバムが1位になったのはAC/DC『Power Up』以来約5年ぶりだそうです。
それだけでなく、デフトーンズ『private music』、スピリットボックス『Tsunami Sea』、日本から世界に羽ばたいて活躍するBABYMETAL『METAL FORTH』といったアルバムもヒットし、高評価を得ました」



小田「『METAL FORTH』はBillboard 200で9位を取り、日本人グループとして初のトップ10入りを果たした歴史的達成も話題でしたね」
天野「あの快進撃はすごかったですね。1970~1980年代や2000年前後にあったメタルの主流化現象が、もしかしたらこれから再び起こるかも?なんて感じています。年末に掲載した西山瞳さんの年間ベストアルバム的な記事も参考になるので、ぜひあわせてチェックしてください。
それと、ジャンルや音楽性ということでいうと、〈ポストハイパーポップ〉と呼ばれるような音楽がかなり一般に広がってきたなと思ったのが2025年でした」
小田「というと?」
天野「たとえば、フランス出身のオーケールーがリリースしたデビュー作『choke enough』は、昨年特に高く評価されたアルバムでした。同作にはダニー・L・ハールやA. G. クックといったハイパーポップの基盤になるサウンドを作ったプロデューサーが関わっていて、ブレイディーやアンダースコアーズなどハイパーポップ世代のアーティストが客演しています。それなのに『choke enough』のサウンドにはハイパーポップ的な過激さや過剰さはなく、まろやかで穏やかかつドリーミーだったり、Y2Kの要素を取り入れたものだったりするんです。それこそがポストハイパーポップを体現している証拠というか」
小田「ハイパーポップに影響を与えたであろうFKAツイッグスも、傑作『EUSEXUA』を発表して絶賛されましたよね」
天野「あのアルバムはテクノやハウス、UKベース、インダストリアルなどに接近したハードなダンスポップ作で、チャーリーxcx『Brat』とともに〈ハイパーポップの次〉を感じさせるところがありましたね。11月リリースの拡大版『EUSEXUA Afterglow』に追加された“HARD”は、個人的に昨年のベストトラックでした!
年始企画として、今年注目の新人邦楽アーティストを2人で選んだじゃないですか。そのなかにも〈ハイパーポップ以降〉を自然と体現しているアーティストが多くいて、洋楽と邦楽、双方で共有しているキーワードが〈ポストハイパーポップ〉なんじゃないかなって感じています」
「ウィキッド」に「罪人たち」、深まる音楽と映画の関係
小田「前編で『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』やザ・ウィークエンドの取り組みに触れましたが、音楽と映画や映像作品の関係がますます深まっている事実も見逃せません。2025年は、アリアナ・グランデが主演の1人を務めた『ウィキッド ふたりの魔女』、ナイン・インチ・ネイルズが音楽を担当した『トロン:アレス』、レディオヘッドのジョニー・グリーンウッドが劇伴を制作した『ワン・バトル・アフター・アナザー』、ブルースの音楽や文化に根差した『罪人たち』、ドキュメンタリー『レッド・ツェッペリン:ビカミング』などが日本で相次いで公開されました」
天野「2026年もその傾向は強まりそうですよね。これから公開される作品でいうと、今を時めくエメラルド・フェネル監督の『嵐が丘』は、チャーリーxcxが音楽を担当していることでめちゃくちゃ話題です。また、ジョシュ・サフディ監督でティモシー・シャラメ主演の『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』は、ダニエル・ロパティン(ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー)のサウンドトラックが絶賛されていますね。これがまた素晴らしくて、映画が楽しみになりました。さらに、マイケル・ジャクソンの伝記映画『Michael/マイケル』は今年最大の話題作になりそうです」
小田「2025年の作品だと天野さんにもオススメされた『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』が印象的でした。そもそもブルース・スプリングスティーン作品でも『Born In The U.S.A.』より『Nebraska』が好きなので、そこにスポットを当てたことも含めて意義深い映画だったと思います。スプリングスティーンを演じたジェレミー・アレン・ホワイトの歌声を堪能できるサントラもよかったです。ティモシー・シャラメが若き日のボブ・ディランを演じた『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』も去年を代表する音楽映画のひとつですよね」
天野「私は、過激な内容も話題になった『サブスタンス』のサントラが印象深いです。シンセサイザーの響きがすさまじいんですよ。劇伴はラファティというロンドンのプロデューサー/DJが作っていて、ソリッドでインダストリアルなハウスや不穏な電子音響が軸になっています。劇中のエアロビクスシーンで使われるダンゼル“Pump It Up”のエンドア・リミックスも忘れ難いですし、『サブスタンス』は音楽もおもしろかったなと」
ブルーノ・マーズの新作やBTS復活など2026年の展望
小田「最後に、2026年の展望を語っておきましょうか。直近では、2月1日に〈第68回グラミー賞授賞式〉が開催されます。今回紹介したバッド・バニーやサブリナ・カーペンター、レディー・ガガ、チャペル・ローンらが主要部門にノミネートされていますね」
天野「今年は、ガガ様が主要部門を独占するんじゃないかなと予想しています。最優秀新人賞はオリヴィア・ディーンに1票!」
小田「2月8日には〈第60回スーパーボウル〉が開催され、前編で触れたようにハーフタイムショーはバッド・バニーが担当。昨年話題を呼んだケンドリック・ラマーに続き、今回もかなり注目されそうですね」
天野「必見ですね! それからエイサップ・ロッキーの8年ぶりのアルバム『Don’t Be Dumb』が発表されたり、ブルーノ・マーズの10年ぶりのソロアルバム『The Romantic』のリリースが控えていたりと、話題作もいろいろとあります」
小田「K-POPについては、今やメンバー個々も世界的スターになったBLACKPINKが3年ぶりの来日公演を実施、新作『DEADLINE』をリリースすることも話題です。世界的な注目が集まっているのは、BTSの完全復活ですよね。4月から大規模なワールドツアーを開催、日本でも公演をおこないます。さらに、新作『ARIRANG』を3月20日にリリースすることもアナウンス。今年の台風の目になることは間違いないでしょう」


天野「ライブにも新作や新曲にも期待が高まりますね。そして4月10日からスタートする〈コーチェラ・フェスティバル〉は、藤井 風やCreepy Nutsが出演することもあって、今年も日本で話題になりそう。ヘッドライナーはサブリナ・カーペンター、カロルG、ジャスティン・ビーバーの3組と特別枠のアニマです。
というわけで、2025年のシーンで何が起こっていたのか?をしっかりと振り返ってみました。この記事が最新の洋楽を知るきっかけになれば嬉しいです。2026年も楽しい洋楽ライフを送りましょう!」















