
短冊CDも特殊ケースも、ハレトキドキのこだわり抜いたパッケージ
――KMIさんは、パ音以外にも、ハレトキドキのデザインも手掛けていますよね。
KMI「はい、本には掲載されていないですが、今日はいろいろ持ってきています。ハレトキは本当にデザインにはこだわっていて、DIYでやっていますね。
最初に作った8cm CD『winter memory』は、パッケージはメンバーが自ら内職のように手作業で組み立てました。オークションで8cm CDのトレーだけが売ってて、それをハイターで漂白して、乾かして。ジャケットに折り目が2本いるのですが、印刷業者の注文では一本しか折れないので、2本目はひたすら手で折って。それをトレーに貼り付けて、販促風のステッカーも作って貼って、袋詰めして……」

――まさに内職ですね。
KMI「今はプレスミーさんで8cm CDのプレスが出来るようになりましたが、その頃はまだ自分たちで作るしかありませんでした。『ユーロビートをとめないで』は、3タイプのCDなのですが、ジャケットを並べて1枚のイラストになる仕様です。



『HARETOKI HYPER EURO MIX』は元ネタがあって、浜崎あゆみの『kanariya』というCDが、半透明のジュエルケースで、盤面にあゆが全身収まるようなポーズのデザインになってるんです。それを意識してますね。『ayu-mi-x II』みたいなラメのジュエルケースとかも、いつかやってみたいですね」
――90年代のアニメっぽいジャケットはよくありますけど、ハレトキはジャケットだけでなくモノ自体も当時の質感を再現しようとしているのが、他とは違うこだわりですね。
KMI「特殊なパッケージやディスクのケースも、海外のオークションやサイトで購入されてるようです。流通の規模感や枚数によっては、CDも手作りみたいな感じで個性的なパッケージが作れますからね。同人イベントの〈M3〉なんかでも、面白いCDを売っている人はいっぱいいます」
松岡「アーティストさん自らが積極的にデザインに関わる例も、多いですよね。本に掲載している方だと、山二つさんやtoconomaさん、OGRE YOU ASSHOLEさんなどがそうです。ジャケットやグッズのアートワークをメンバーご自身で制作したり、ディレクションをされたりしています」
配信ジャケに必要な情報量
――掲載されている作品で、他にも印象的なものを挙げていただけますか。
松岡「細野晴臣さんの『Vu Jà Dé』(書籍には10 inchアナログ盤を掲載)というアルバムをディレクションした岡田崇さんは、(細野晴臣の孫・細野悠太が在籍する)シャッポの作品も手掛けているんですよ。違う世代が繋がっているようでもあり、面白い縁なので、ぜひ掲載したいと思った作品ですね」
――同じデザイナーさんのそれぞれの仕事を見比べると、面白いですよね。90年代や2000年代と、本で取り上げた〈あたらしい〉今の時代とでは、音楽のデザインはどのように変化したとお2人は思いますか?
松岡「昔は、CDジャケットのアートワークが、アーティストさんのパブリックイメージに大きな影響をもたらしていたように思います。現在は、さまざまなメディアやSNSがありますし、セルフブランディングに積極的なアーティストさんも多く、よりイメージが伝わりやすい時代になっています。
加えて、配信の普及だったり、楽曲の届け方そのものの変化もあり、CDなどのフィジカルな体験を経ずに音楽に出会うリスナーさんが増えました。ジャケットのアートワークやデザインに求められる役割そのものが、90年代と今とでは異なってきている点があるように感じています」
KMI「昔のCDは、ジャケットのタイトルもアーティスト名も無い抽象的なものも多かったと思うんですけど、今のジャケットだと、そういう具体性の低いデザインは少なくなってる印象ですね。作字ブームや、レタリングのグラフィックが流行ってるのも関係あるかも知れません。SNSでの展開なども考えると、画像一枚で情報がまとまっている方が有利というのもありそうですね。
あと、CDだと帯があるから、タイトルなどの情報はそこに入れられますが、配信だと帯がないという違いがありますよね」


