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メタルはマッチョで残虐的な言葉で表せばいいのか?

西山「ところで、清家さんはライナーノーツって読んでいましたか?」

清家「読んでいました。もともと本好きだから、小さい文字がびっしり載っていると嬉しいんです。CDのライナーノーツに書いてある関連アーティストをメモして、またそのアーティストを聴いて、ということをしている友だちもいました」

西山「私は音楽に必ず何かテキストが付いている文化で育ったので、サブスクで音楽を聴くいまはそういう文化がなくなってしまったのかなと思って」

――自分の好みの音楽だけをアルゴリズムで延々と聴くことが可能な時代なので、ライナーノーツのように背景や歴史を伝えるガイドに触れないリスナーが多いと感じます。

西山「ジャズを教えている若い生徒はみんなそうですよ。〈コンテンポラリーなファビアン・アルマザンは聴いています。でも、ウィントン・ケリーは知りません〉みたいな子がいるので。それを教えるのもレッスンでやるべきことだと思います。ジャズは特に〈あの人がいて、この人がいて、こういうことがあって〉と繋がっているジャンルなので、大事なことなんですよね」

――音楽を系統立てて伝えることや歴史観を提示することは、ライターの仕事においても重要なことだと思います。女性の書き手が少ない状況について、ほかに気になることはありますか?

清家「私はあまり自分を認識してほしくないんです。〈ライターとして売れたい〉という人はいますが、自分は〈宣伝文章屋さん〉みたいな感じなんですね。自分の文章を読んで〈一回聴いてみるか〉と思ってもらい、再生回数が1増えたり1枚でも多く売れたりしたらいいなと思っています。〈これは清家って人が書いているんだ〉と思われたくないかも。性別もわからない透明な存在のほうがいいなって」

――あくまでも音楽のほうが主役だと。一方で編集者としては、個性がなさすぎる書き手が増えているなとも感じるんです。

清家「データを収集して綺麗に並べていく書き方をする方もいますよね」

――ただメタルの場合、個性的な書き手が多い世界だと思います。

清家「みんなアクが強いですよね(笑)」

西山「文章がうるさい人ね(笑)。私はそれで育ったので、放っておいたらそれが出てしまうから、外野のミュージシャンとしての立ち位置で書くことしかしていません。

マッチョなワードは使いたくないなと思っています。残虐性のある言葉が好きじゃないんですよ。たとえば、ギターの音がそういう血生臭いことを思わせるのはしかたないんですが、残虐性のある言葉を使ってもその音を的確に伝えていないのでは?と思っちゃう。ミュージシャン自身、どんな音を出したいかとは考えているだろうけど、暴力的な意図でやっているわけではないと思うし。メタルについて書いている人はフィルターをかけすぎなんじゃないかなって」

――ホモソーシャルな文化や攻撃的なワードの多用は根強くありますね。

清家「私は、女性らしい文体や〈丁寧な暮らし〉系の文章が苦手なんです。世間や上の世代の男性が〈まあ、女性ライターはこういう感じでくるよね〉と思うような文体ではなるべく書きたくないし、そういう流れを作りたくない。だから、中性的に書きたいなと考えています」

――たしかに〈女性ならではの感性で書いています〉という文章も、いまは多いですね。

清家「昔、そういうオーダーが来たことがあったんです。私はそういう文章を書いていないから、期待に添えるかな?と悩みました……」

――割り当てられただけのジェンダーを〈あなたの役割や個性ですよね〉と押し付けるのはよくないですね。とはいえ編集者としては、特に複数人が参加する企画であれば、ジェンダーバランスは考えないといけないのですが。

清家「そうですね。私も男性とはちがうなと思いつつ、めっちゃ女性っぽいかっていうとそれもちがうので……。あとメタルって、文芸批評のような書き方をする人がいなかったじゃないですか。そういう文章を書きたいなという願望もあります」

 

〈ポエムののりしろ〉があるかどうか

――なるほど。西山さんの先ほどの話を受けると、音楽を言葉で表すにはどうすればいいのか?という問題にもぶつかります。

清家「私は最低限、読み物としておもしろいほうが嬉しいですね」

――文章がおもしろくないと、音楽自体も魅力的に感じられませんよね。

西山「それはジャズで強く感じます。調べればわかることを書いていたり、〈この人はキース・ジャレットの影響を受けている〉とか、流れに当てはめて終わっていたりすることが多いので。メタルライターの文章は、アクが強くても書きたい思いは伝わってきますね」

――たとえば、70年代のフリージャズについては音楽から解離した文章が書かれていたことがありましたよね。それはそれでおもしろいのですが、いい音楽評論ってなんだろう?と常に考えています。

清家「私は、音楽によって怪文書やポエムが書けるかどうかが分かれますね。ブラックゲイズは書きやすい。でもオールドスクールデスメタルでは厳しい、みたいな(笑)」

――音楽によって書くことや文体が決まってくる、というのはわかります。音楽に感化されないと、いい文章も書けないですね。アルバムレビューを書くときはどう書いていますか?

清家「もちろん情報は書くのですが、その後は〈ポエムののりしろ〉があるかどうかによるんです。のりしろがなければ展開や音作り、音楽性のいい部分を堅実に書きます。エモがれる場合は怪文書化していきますね(笑)」