〈ライブをやる側〉視点のライブレポート
――西山さんの文章は最近、特にプレイヤー目線が強いと感じます。
西山「私は専業ライターじゃないし、私が呼ばれるってことはそういうことなのかなと常に意識して書いています。ほかの人が気づけない視点を提供できたらいいかなって。音楽的にこういうことをやっているよ、というアシストをしたいですね」
――自分はライブレポートを書くのが難しくて苦手なのですが、西山さんのライブレポートはすごくいいなと毎回感じます。
西山「ライブレポがいちばん楽ですね」
清家「えっ、難しいですよ(笑)!」
西山「ライブをやる側だから、気づけるところがたくさんあるんでしょうね。ミュージシャンがワンアクションするたび、何かを弾くたび、絶対そこに意志があるので、その意志を感じられるから書くことが多いんだと思います」
――ライブレポって、この曲をこういう曲順で演奏して、こういうステージアクションをして、こういうMCをして、こういう演出をして、という内容になってしまうんですよ。それを読ませる文章にするのが難しくて。
西山「事実を並べているだけになっちゃいがちですよね」
清家「想像して書いていいものではないので、事実ベースで書くしかないんですよね。観客の盛り上がりは描きやすいのですが。
アイドルのライブレポはストーリーがありますけど、エクストリームメタルのライブはVCRやバラードで起伏を作るなんてことはほとんどないので難しいですね(笑)」
女性だから遭ったセクハラや痴漢の被害
――女性だから受けたセクシャルハラスメントなどはありますか?
西山「私はプレイヤーとしてめちゃくちゃあったんです。活動を始めたのが2000年代だったから、いまはないのかもしれませんが」
清家「それがなんと、2020年代にもあるんですよね。会社では何もなかったですが、フリーになったとたんに体験して、自衛していかなければと実感しました。フリーランス同士ですと、特に注意が必要です。そのときは途中から録音していたのが精神衛生上よかったので、みなさんもハラスメントに遭った際はそうしてください。今ではめちゃめちゃ警戒するようになったので、〈ヤバそうだな〉と思った時点で避けられるようになりました」
西山「ライターだと現場で会う人が発注する側の編集者だったり、権力勾配がありますよね」
――近年、ライブ現場での痴漢の問題も頻繁に表面化しますね。
清家「先日、NEMOPHILAのメンバーの方がライブ中にフロアに降りた際に胸を触った観客がいて、注意喚起が出ていましたね。ギャルバンやガールズメタルの問題にも関わりますが、熱心に支えるファンがいる一方、変なお客さんもいるんです。そういうアーティストに対して自分は味方したいですし、取材現場も男性ばかりだと〈私が守るから!〉と感じることもあります」
西山「圧倒的に男性だらけの社会だからね」
清家「自分は学生時代に痴漢をされたことがなかったのですが、あの一件があったことで、いつでも警戒するようになりました」
――女性はそうやって警戒しないとライブ現場にも行けない、という状況自体に問題がありますね。
清家「そうですね。〈今日誰々のライブに行きます!〉とSNSで宣言するだけでもリスクになりうると思います」
〈ガールズメタル〉は男性向け?
――先ほど、ガールズメタルバンドの話も出ましたが、〈女性のメタルバンド〉という独特の文化について考えることはありますか?
清家「ガールズメタルを追ったことはなくて、女性ボーカルのバンドは好きで聴きます。花冷え。のライブなんかは、雰囲気がモッシュがあるタイプのアイドル現場に近いなと思いました。それと海外のお客さんが多いから、〈Kawaii Metal〉としての需要もあるのかなと。西山さんはガールズメタルは聴きますか?」
西山「LOVEBITESは聴いています。でもビジュアルや売り出し方、パッケージに引いてしまって、〈見たくない〉と思うバンドはいて。どれぐらい本人たちがやりたいことなのかもわからないことが多いですね」
清家「スタイリングなどから男性向けっぽさを感じることは多いですね。男性ミュージシャンから侮られることもあるようです」
西山「女性バンドシーン自体が別枠になっていますよね。それが障害になるんやろうなと思うこともあります。あとメンバーの出入りや組み替えが多いので、不安に感じることがありますね」
――シンフォニックメタルやメロディックスピードメタルは女性ボーカルのバンドが多いのですが、そういったジャンルはもっと健全な評価を受けているように見えます。
西山「そういえば、ジャズピアニストの高木里代子ちゃんが水着姿で〈東京JAZZ〉で弾いたとき、周りの女性ミュージシャンはみんな〈いいぞ! もっとやれ!〉と言っていたんです。本人が好きで選んだことなら応援したいんです。〈売れるためにあんなことをして!〉と怒っていたのは頭の固いおじさんばかりでしたね」
清家「あ~……。そういえば、自分の仕事が褒められたとき、カッコ付きで〈若い女にしては〉と言われているのでは?と思っちゃうんですよね。同じ仕事を同年代の男性がやったら果たして褒められるのかな?と思って、素直に受け取れないことがあります」