インタビュー

上原彩子 『上原彩子のくるみ割り人形』

7年ぶりの新譜は自信あふれる〈くるみ割り人形〉

上原彩子 『上原彩子のくるみ割り人形』

 チャイコフスキー国際コンクール優勝からはや12年、この間さまざまな作品を演奏してきた上原彩子が、7年ぶりの録音を行った。デビューCDでもチャイコフスキーを選んだが、今回も大好きなチャイコフスキーの作品を選択。『くるみ割り人形』を収録した。

「子どものためのコンサートを企画していくなかで、大人に向けた演奏会も考えようということになり、そのときに《くるみ割り人形》という案が出たのです。私は子どものころからヴェラ・ゴルノスタエヴァ先生と勉強し、ロシア作品はレパートリーの根幹をなしています。《くるみ割り人形》も以前から作品自体は知っていましたが、実際に練習を始めたのは2年くらい前から。プレトニョフの編曲版は7曲ですので、あとは自分で編曲を行いました。実際に編曲を行うと、チャイコフスキーの前衛的な音の使い方に驚きました。まるでストラヴィンスキーの《ペトルーシュカ》を思わせる箇所もあり、音そのものがとてもおもしろい」

上原彩子 上原彩子のくるみ割り人形 キング(2014)

 ピアノに向かい、バレエをイメージしながら各曲を楽しんでアレンジしていったという。

「《序曲》や《くるみ割り人形とネズミの王様の戦い》などはオーケストラ作品そのままの形でも十分ですし、音が多いため編曲はそんなに苦労しませんでした。ただし、《花の曲》は有名な作品で長いため、最初は飽きないように飾り付けを多くし、難しくしすぎてしまいました(笑)。結局、シンプルに書き直しましたが」

 最近上原彩子は古楽器奏者に就き、モーツァルトを学んでいる。そこでは新たな発見が多く、リズム、対位法、装飾音など基本的なことの理解がより深まった。

「もっとも印象的だったのは、左手さえ確固たるリズムを保持していれば右手はかなり自由に弾いていいといわれたことです。さらに昔は右手と左手をかなりずらして弾いていたとわかり、それも新鮮な驚きでした。こうした勉強を行うことで、モーツァルトに対する恐怖感もなくなり、バッハにも興味が湧いてきました。全体に肩の力が抜け、自由に弾くことができるようになったのです。今後はモーツァルトのヴァイオリン・ソナタも弾いてみたいですね」

【参考動画】上原彩子の演奏によるチャイコフスキー作曲“ピアノ協奏曲 第1番”のパフォーマンス映像

 

 1月24日には「くるみ割り人形」と題したリサイタルを東京オペラシティで開き、前半にはモーツァルトのピアノ・ソナタ第11番《トルコ行進曲つき》と第8番を組んでいる。いま、基本を学び直し、新たな発見をすることに喜びを抱き、さらに上を目指して邁進している上原彩子。新譜では嬉々とした音を響かせ、楽しみながら演奏。その音楽する喜びが聴き手にも伝わり、楽しみの世界が共有できる。自信にあふれ、踊り出したくなるようなチャイコフスキーだ。

 

LIVE INFORMATION

上原彩子ピアノリサイタル
○2015/1/17(土) 会場:伊丹市立音楽ホール
上原彩子のくるみ割り人形
○2015/1/24(土) 会場:東京オペラシティ コンサートホール
他、詳細はHPをご覧ください
www.japanarts.co.jp/

関連アーティスト
TOWER DOORS