ライターにして〈soup-disk〉〈disques corde〉などのレーベル・オーナーであり、LAのネットラジオ局〈dublab.com〉日本支部のプロデューサーも務める原雅明。90年代より、いち早く先鋭的なブレイクビーツ~エレクトロニック・ミュージックを紹介。批評家の視点から音と対峙し、日本にその音楽的土壌を築いた功績はとてつもなく大きい。そんな彼が新たに立ち上げたレーベルが〈rings〉である。そして、その名刺代わりに届けられた2作品は、これまでの原の活動から派生した豊かな交わりが織り成す、柔軟にして力強い繋がりを感じさせるものだ。

ADVENTURE TIME Of Beyond rings(2014)

 まずは、西海岸を代表するビートメイカー、デイデラスと、〈dublab〉の主宰者にしてDJであるフロスティによるユニット=アドヴェンチャー・タイム。重度のレコード中毒者である2人がコレクトした膨大なサンプリング・ソースが湧き水のようにあふれ出し、楽しく愉快に、おふざけしながらも精密に、モンドで無国籍なアクションを次々にキメまくる。この垢抜けた冒険たるや! どこから聴いても眩しくて瑞々しい音がはじける宇宙的コラージュ・ポップの最深モードだ。

 

鈴木勲,DJ KENSEI New Alchemy rings(2014)

 続いて登場するのは、50年代から演奏を始め、ジャズ・メッセンジャーズにも名を連ねたベーシスト、OMAさんこと鈴木勲(御年なんと81歳!)と、原と同じく日本のクラブ/ヒップホップ・シーンを先導してきたDJ KENSEIによるライヴ・セッションである。フロスティの熱いMCから始まる50分の交感。鈴木の鋭く蠢くベース。KENSEIの独創的なプレイ。終始スリリングな即興演奏のなかにさまざまな道程が待ち受けていて、いまここでしか鳴らされることのない物語が発展していく。中西俊夫によるアートワークもストリート感まる出しでやたら渋い。

 〈rings〉のメディア攻勢は、ときに直線的ながらもじつに円環的な繋がりを見せる。それは、美しい波紋を残しながら大きなサークルを描き、するする伸びてみるみる広がる。いまからそんな予感でいっぱいだ。