コラム

カナダのダンス集団、カンパニー マリー・シュイナールが6年ぶり来日! 2度目の〈春の祭典〉と本邦初演の〈ムーヴマン〉披露

Compagnie MARIE CHOUINARD
身体の美しさが際立つ《春の祭典》と、形象の意味を探る《ムーヴマン》に期待

Marie Chouinard/Photo: Nicolas Ruel
Dancers: Carol Prieur, James Viveiros

 

 ケベックを拠点に活躍を続けるカンパニー マリー・シュイナール(CMC)が2009年以来、6年ぶりに日本にやってくる。

 今年2015年はCMCの初来日からちょうど10年目であると同時に、同団体創立25周年となる節目の年でもある。毎年世界中で公演を持つだけでなく、今年6月には久しぶりの新作《Soft virtuosity, still humid, on the edge》をシュトゥットガルトで世界初演したばかりというように、異才にして奇才シュイナールのもと、変わらぬ旺盛な活動ぶりが嬉しい。

 さて、4度目となる今回の来日では、高知、金沢のほか、首都圏ではいよいよKAAT神奈川芸術劇場に初登場する。選ばれた演目は、《春の祭典》と《アンリ・ミショーのムーヴマン》の2作品。前者は彼女の2作目で1993年、後者は2005年の制作なので、1990年の旗揚げから現在までのCMCの活動の中から、最初期作品と、ちょうど中間期に当たる作品を披露してくれるというわけだ。

 《春の祭典》といえば、これまでにも数多くの作品が作られてきている。初演のニジンスキーから、ベジャールノイマイヤーピナ・バウシュウヴェ・ショルツ、そして山田うんなどなど……。その中で、シュイナールの作は、時期としてはエック(82年)とプレルジョカージュ(2001年)の間に位置するものであり(マリス・ドゥラントの作と同年)、彼女が初めて既存の楽曲に振り付けた作品でもある。

 シュイナール自身が、「(本作には)ストーリーはなく、展開や原因、結果などは存在しない。あるのはシンクロニシティのみ」と説明しているように、ベジャール版などと同様、登場する人物たちにはロシアの大地や処女の生贄といったオリジナルがまとっていた属性はなく、鳥や動物の争い、強烈な暴力性やエロティシズムなどが果てしなく描かれる。

 また、シュイナールがユニークなのは、ストラヴィンスキーの2部からなる《春の祭典》の音楽の前に10分強のプロローグを置き、大きく3部構成とした点。スクラッチ音(彼女が70年代からコラボを重ねている作曲家ロベール・ラシーヌによる)が蠢く冒頭は、原始の生命誕生の瞬間のように始まるのである(*)。さらに従来の《春の祭典》と異なる要素として、個の踊りを中心にしているところも挙げられるだろう。

*今回の来日公演ではロベール・ラシーヌの音楽によるプロローグ部分がないバージョンとなります。

 見どころは、ライティングの絶妙な効果にもある。スポットライトが照らす限られた枠の中で、いかに機能的に動くかを試行するという行為が刺激的であるとともに、真上からの光によって、ダンサーの肉体、激しく躍動する筋肉の変容、すなわち身体の複雑な表情がきわめて美しく浮かび上がるのである。

 ちなみに《春の祭典》は2度目の来日(2006年)でも上演されているが、KAATのステージはその時よりもずっと広いので(収容人数も倍)、よりダイナミックな迫力が楽しめるはずだ。

 一方、今回が本邦初演となる《ムーヴマン》は、タイトルからもわかるようにアンリ・ミショーの書物にインスピレイションを得た作品。詩人にして画家であった彼がガリマールから出版した詩画集『ムーヴマン(運動)』には、墨と筆でオリエンタル風に描かれた不定形の様々な形象が載せられている。それらはしみであったり、汚れ、線、(何らかの)シルエットなど、いかようにも形容可能だが、それらをシュイナールはダンスの動きや型によって写し取ろうとする(同じ年に同じ素材でヨゼフ・ナジが《Asobu》を制作しているのはきわめて興味深い)。舞台背後のスクリーンに投影されるミショーの「記号」と、それを瞬時に身体で再現しようと踊るダンサーの様子は、時にコミカルさも漂わせるが、次々と繰り出されるアクションと、追い立てるようなリズムにいつしか興奮させられてゆくこと必定の舞台である(その興奮や、ラストのストロボを用いた点滅するライティングは、ミショーが用いたメスカリンの効果を意識してのことかもしれない)。

 シュイナールらしい奔放にしてパワフルなエネルギーを全身に浴びるために、この秋、是非注目してほしい公演である。

 

LIVE INFORMATION
カンパニー マリー・シュイナール

『Le Sacre du printemps(春の祭典)』
コンセプト・振付:マリー・シュイナール
音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー「春の祭典」(1913年)

Marie Chouinard/Photo: Marie Chouinard
Dancer: Dominique Porte

 

『Henri Michaux : Mouvements(アンリ・ミショーのムーヴマン)』
振付:マリー・シュイナール
音楽:ルイ・デュフォール

Sylvie-Ann Pare
Dancer : Lucy May

 

○10/24(土) 18:00開演
○10/25(日) 15:00開演
会場:KAAT神奈川芸術劇場 ホール
www.kaat.jp/

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