コラム

ジャネット・ジャクソンが帰ってきた! ジャム&ルイスとの久々全面タッグ&気鋭クリエイターも助力しエッジ加えた7年ぶり新作

【PEOPLE TREE】ジャネット・ジャクソン Pt.1

ジャネット・ジャクソンが帰ってきた! ジャム&ルイスとの久々全面タッグ&気鋭クリエイターも助力しエッジ加えた7年ぶり新作

長きに渡る不在は終わりを告げ、偉大なる永遠がふたたび動き出した。7年ぶりのニュー・アルバム『Unbreakable』はジャネットとリスナーとの、そしてジャム&ルイスとの壊れない絆を証明する!

 ジャネット・ジャクソンほどの大物が新作を出せば〈帰ってきた〉と言われるものだが、今回は本当に〈帰ってきた〉感が強い。何しろオリジナル・アルバムとしては、ジャーメイン・デュプリが舵を取った2008年の『Discipline』以来7年半ぶり。しかも今回は、『Control』(86年)制作時から30年来の付き合いとなるも前作では顔を合わせなかったジミー“ジャム”ハリス&テリー・ルイス(文中の発言は彼らのオフィシャル・インタヴューより)との久々の全面タッグだ。前作はクールで斬新な意欲作ながらセールス的には苦戦し、当時恋仲にあったデュプリに先駆けてアイランドを離脱。2009年には兄マイケルを失い、2010年にサントラ収録の新曲“Nothing”を発表するも、ベスト盤にちなんだツアー後は表舞台からほぼ姿を消し、何か〈終わった〉ような印象さえ与えたものだ。が、その間に大富豪のウィサム・アル・マナと結婚。ある意味、仕事をしなくても済む状態になったわけだが、そんな余裕もあって、音楽をやりたい時にやりたい人とやる……そうして出来上がったのが新作『Unbreakable』である。

 BMGとパートナーを組み、自主レーベルのリズム・ネイションでジャネットみずからのコントロールで制作したアルバム。ジャム&ルイスとはお互いの近況報告に始まって、今年に入ってから半年近くで制作したという。移転したフライト・タイム・スタジオは、踊り場も併設されるなどジャネットにとっても好都合だったようで、自由な環境で作業が進められたようだ。

JANET JACKSON Unbreakable Rhythm Nation/BMG/ソニー(2015)

 

3人+2人

 ちょうどザ・タイムに代表されるジャム&ルイスのミネアポリス・ファンクが再評価されている状況も追い風といえそうで、モロにそれを狙った曲はないものの、例えば“Doesn't Really Matter”を彷彿させる哀愁系アップの“2 B Loved”はTR-808使いで、そうした匂いもうっすらと感じ取れる。「このレコードは30年間かけて作られたようなサウンドになっている」(ジャム)という言葉の通り、『Control』から『20 Y.O.』(2006年)までのジャム&ルイス・メソッドが至るところに散りばめられているのだ。特に彼女の柔らかで繊細なウィスパリング・ヴォイスを活かしたという点では、緩急つけた展開も含めて『janet.』(93年)や『Velvet Rope』(97年)の音世界が蘇ってくるような仕上がりと言っていい。“That's The Way Love Goes”のムードと直結する、J・コールを招いたスムースなスロウ・ジャムの先行曲“No Sleeep”はその好サンプルで、定番とも言える雨音のイントロも聴き手の懐古趣味を刺激する。

 とはいえ、単に同窓会的なことをやった作品とは違う。全曲でプロデュースを手掛けるジャム&ルイスのもと、今作では制作や演奏でふたりの気鋭クリエイターも手を貸し、2015年らしいエッジを加えているのだ。ひとりは、ドクター・ドレーの『Compton』にも関与していたデム・ジョインツことドウェイン・アバナシー。そしてもうひとりは、ジャネットとは旧知の仲で、甥っ子(姉リビーの息子)であるオースティン・ブラウンの作品を手掛けたミスター・マクレンドレン(役割ごとにトミー・マクレンドントミー・ランプキンスなど複数の名義を使用)。「彼らがいれば、それ以上必要なかった」(ジャム)と言うように、ヴェテラン・ギタリストのポール・ジャクソンJrらの参加を除けば、アルバムの制作はジャム&ルイスとジャネットに新参ふたりを加えた5人が中心となっている。デム・ジョインツの男声も飛び交う“Dammn Baby”のようなミディアムなどを聴けば、その新しさに耳を奪われるだろう。

 推進力のある冒頭のタイトル曲に続く“BURNITUP!”は、ジャネットの親友で過去にリミックスでも繋がりのあったミッシー・エリオットがはっちゃけるエネルギッシュなアップ。ジャネットの声を聴いていると何だか兄マイケルの姿が甦ってくるが、聴き進めていくと、エッジーなウォーキング・テンポの“The Great Forever”なんかはマイケルとデュエットしているかのような錯覚にとらわれてしまう。「高いキーでも低いキーでも、バックの歌の部分もすべて彼女自身がやっている」(ジャム)というからジャネットの声なのだろう。そして、ピアノ伴奏のスロウ・バラード“After You Fall”に続いて登場する“Broken Hearts Heal”は、マイケルとの思い出を回想し、改宗したイスラム教の用語も用いて来世での再会を誓うような曲。ジャネットらしい囁き声が活きたメロウで爽やかなダンサーで、ネガティヴな出来事をポジティヴに変えるようなパワーを感じさせる。

 

壊れない絆

『Unbreakable』というアルバム・タイトルには、家族や友人、ファンとの繋がりを含め、改宗した自分の立ち位置を再確認する意味合いも込められているようだ。悟りを開き、さらに思慮深くなったジャネットがそこにいるという感じだろうか。サビでポップに昂揚する“Shoulda Known Better”もそんなテーマを持った曲。また、この曲を含め、往年の名曲を彷彿させながら現行モードを加えるのが得意なジャム&ルイスらしい手捌きも見事で、そういう意味ではドナ・サマー的なユーロ・ディスコ~ハウスをEDM以降のモードで解釈したような“Night”も彼らの面目躍如たる快作だろう。こうして“No Sleeep”に辿り着く前半の展開は本当に素晴らしい。今回のアルバムはアナログ(LP)のように〈Side 1〉と〈Side 2〉に分けられているが、「プロダクションにおいて一つの統合されたブレーン集団が確立されるといい作品ができる」(ルイス)という言葉通り、淀みなく流れていく技ありの展開だ。

〈Side 2〉となる後半も、『Damita Jo』(2004年)収録の“I Want You”でカニエ・ウェストがやっていた名曲サンプル速回しに通じるスウィート・ソウル“Dream Maker/Euphoria”を筆頭に、ポップで開放感のあるアップ“Take Me Away”、歌/サウンド共に繊細さが光るバラードの“Lessons Learned”や“Black Eagle”、サイケ期のビートルズにカントリー風味を加えたような“Well Traveled”と、どこか達観した余裕の表情でジャム&ルイスと共に新たな扉を開いていく。そして、ホーン隊も活躍する最後の“Gon' B Alright”はスライ&ザ・ファミリー・ストーン“Dance To The Music”を現代風に解釈したような曲で、まさに大団円と呼ぶに相応しい。親しみやすいサウンドに普遍的な愛を語ったリリック。万人に向けられたジャネットの曲は、今回も極めてR&BでありながらR&Bをあっさり越えている。全米アルバム・チャート1位を獲得したのも当然の結果だろう。ジャム&ルイスとの絆は本当にアンブレイカブルなものだったのだ。

 

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