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噂のスーパー・バンドがいよいよファースト・アルバムを完成! 6つの個性をぶつけ合うことで刻々とメタモルフォーゼしていく楽曲群――その〈メタ〉な制作過程を3人ずつの証言から紐解いてみよう

METAFIVE META ワーナー(2016)

 

高橋幸宏 × ゴンドウトモヒコ × LEO今井
(インタヴュー・文/村尾泰郎)

 高橋幸宏小山田圭吾砂原良徳TOWA TEIゴンドウトモヒコLEO今井。世代を越えて豪華なアーティストが集結したスペシャルなバンド、METAFIVEがついにオリジナル・アルバム『META』を完成させた。もともとは高橋幸宏のコンサート〈TECHNO RECITAL〉のために結成された一夜限りのバンドだったが、その後、フェスにも出演。コーネリアスが手掛けた『攻殻機動隊 新劇場版 O.S.T.』に高橋幸宏 & METAFIVE名義でオリジナル曲を提供するなど、次第にバンドとして成長していった。そして、満を持して届けられた本作はエレクトロニックでダンサブル。メンバーの個性がぶつかり合い、突然変化(メタモルフォーゼ)するメタなサウンドでテクノの歴史に新たな1ページを加える傑作に仕上がった。今作はどのように生み出されたのか。高橋、ゴンドウ、LEOの3人に訊いた。

――このバンドを結成した時から、いつかオリジナル・アルバムを、という思いはあったんですか?

高橋「いや、思ってもいなかったですね。〈TECHNO RECITAL〉をやった後、フェスに呼ばれたりしたんですが、回を追うごとにバンドとして良くなってきて。〈攻殻機動隊〉のイヴェント(2014年11月に日本科学未来館で開催された〈GHOST IN THE SHELL ARISE“border:less experience”sounds curated by CORNELIUS〉)の時がベストだった。それで僕がFacebookの書き込みか何かで〈すごい良いライヴができた。まだここで止まるようなバンドじゃないと、僕は信じたいと思います〉みたいなことを書いたら、TEI君も同じように考えてたみたいでリツイートしてくれて。だからといって、そこで〈アルバムを作りましょう〉っていう具体的な話が出たわけじゃないんですけど、年明け(2015年)にみんなで会った時は、なんとなくアルバムを作る雰囲気になっていたんです」

〈GHOST IN THE SHELL ARISE“border:less experience”sounds curated by CORNELIUS〉ライヴ映像

 

LEO「小山田さんが作った“Split Spirit”(『攻殻機動隊 新劇場版 O.S.T.』に収録)っていう曲で、初めて6人で共同作業をしたんです。その後に〈攻殻〉のイヴェントがあったんですけど、みんな創作意欲が刺激されてたんじゃないでしょうか。1曲だけじゃもったいない。あともう1曲、もう1曲……って想像しているうちにアルバムを作りたくなったんじゃないかと思います」

――最初のミーティングではどんな話を?

高橋「ひとり2曲責任を持とうと。それは2曲作るということではなく、今回は曲のデータをみんなに回して、それぞれが音を足したり引いたりしていくという作り方だったんですが、曲を出した人が最後の仕上げの責任を持つことにしたんです」

――サウンドの方向性について話し合ったりはしたんですか?

高橋「基本的に自由なんですけど、まりん(砂原)が〈身体が動くような音楽がいいですね〉って言って、それがみんなの頭の中にあったみたいですね。だから全体的にBPM速めの曲になっている。このメンバーだったらシブいものを作りそうなところもありますけど、今回はそうなりませんでした。やっぱり新人バンドなんで、勢いがあったほうが良いだろうと」

――そうか、一応、新人なんですね(笑)。メンバー間を回っていくうちに、かなり音は変化していったんですか。

高橋「変わりましたね。“Don't Move”とか、あまりにもどんどん変わっていくんでビックリしました」

ゴンドウ「こういうやり方で曲を作ることは多いんですけど、METAFIVEは特にやりやすくて、楽しかったですね。やっぱり、みんな似たような作業をしているし、バックグラウンドが共通しているところもあるので、こっちが何も言わなくても、他のメンバーが欲しかった音を入れてくれる」

LEO「〈次はどんなネタが足されているんだろう?〉って、すごく楽しみでした」

――LEO君の場合、周りが先輩ばかりだから、音に手を加えたり削ったりすることにプレッシャーを感じたりしませんでした?

ゴンドウ「〈これは要りません〉とかハッキリ言ってたよね」

LEO「そうですね。でも、基本的に回ってきた音は素晴らしくて、間違いない感じでした。僕はこれまでバンドをやったことがないので、こういう作り方はとても新鮮でしたね」

高橋「いや、ほんとは不満がいっぱいあるみたいですよ(笑)。まあ、それは冗談として、やっぱり音楽は年齢とか関係なく対等にやれないとおもしろくないですから」

――そうですよね。今回、LEO君が提供した2曲のうち“Disaster Baby”は、他のメンバーからは出てこないようなロックなナンバーですね。

LEO「小山田さんは最初〈ヴァン・ヘイレンみたいだね〉って言ってて(笑)。だから、あまりそうならないように砂原さんが〈じゃあ、全部打ち込みでやってみよう〉ってドラム・トラックを作って、ああいう仕上がりになったんです」

高橋「いかにも生ドラムが入りそうな曲ですどね。ライヴはそうするかもしれないです。もう少しテンポを上げて」

――ゴンドウさんの曲“Gravetrippin'” “W.G.S.F.”では、しっかり幸宏さんが叩いてますね。

ゴンドウ「やっぱり僕の場合、曲を書いていると幸宏さんに叩いてもらいたくなるんですよね。いつも難しいパターンになってしまうんですけど」

高橋「めちゃくちゃ難しかった。“W.G.S.F.”は生ドラムが入ったことで妙なグルーヴになったね」

――ゴンドウさんの場合、どんな状態で曲をみんなに投げるんですか。やっぱりリズムは決めている?

ゴンドウ「僕の場合、結構しっかり作り込んじゃうんですよ。小山田君が発信した“Don't Move”とかは、あえてメロディーを抜いてみんなに回したりしているんですが、このバンドの場合、そういうやり方のほうが曲が変化しておもしろくなるってことが今回のアルバムでよくわかりましたね」

高橋「僕もゴンちゃんと同じで作り込んじゃうんです。それが今回の反省点。作り込みすぎて隙間がなくなっちゃったなって」

――確かに幸宏さんが書いた“Anodyne”“Threads”は、どちらも幸宏節ですね。メロディアスでフォーキーな雰囲気で。

高橋「まあ、だからアルバムの真ん中の6曲目と最後に入れるには丁度良かったと思います。箸休めみたいな感じで。でも、曲をみんなに回した時、〈メロディー変えていいよ〉って伝えたんだけど、誰も触れようとしなかったんです(笑)」

ゴンドウ「それは必要なかったからですよ。幸宏さんって、メロディーを作る時、すごく細かくて何度も変えるんです。変えた次の日にも〈やっぱり、一個(一音)下げる〉って言ってきたり」

――ということは、言葉との関係もすごく重要なのでは。

高橋「重要ですね。英語が乗るか日本語が乗るかで全然違いますから」

――歌詞といえば、今回LEO君は作詞でも活躍してますね。他のメンバーが書いた曲の歌詞も任せられて。

LEO「みんなキーワードとかテーマをくれるので、スタート地点があるのは楽でしたね。例えば幸宏さんは〈悲しげでロマンティックな曲にしたい〉って言ってたし」

高橋「LEO君とはIn Phaseで一緒に仕事をしてるから、僕の曲のイメージもわかってたと思う。〈どうせ切ないだろ〉って(笑)」

LEO「切なさ。あと田園風景。幸宏さんのメロデイーに詞をつけようと思ったら、田園風景とか季節の風景が浮かびますね」

高橋「良く言うと映像的、悪く言うとワンパターンでしょ(笑)」

――自分で悪く言わなくても(笑)。ヴォーカルは幸宏さんとLEO君ですが、パート分けはどうやって決めていくんですか?

高橋「おのずとキーで決まってきたりするんですけど、基本的にLEO君が決めてますね。〈ここから幸宏さんが歌ってください〉とか〈ここは二人でハモります〉とか。たまに作者から、例えばTEI君から〈ここは幸宏さんで〉って言ってくることもありましたけど」

LEO「“Luv U Tokio”とか、最初から幸宏さんがメインでっていうイメージがあったと思いますね」

――ハーモニーのアレンジもLEO君が?

高橋「基本、LEO君なんですけど、不自然なものはひとつもなかったですね。ただ“Whiteout”だけは新たに作ったハーモニーが難しかった」

LEO「“Disaster Baby”では、幸宏さんがすごい良いハーモニーをスタジオで作ってくれました」

――なるほど。話を聞いていると、METAFIVEはメンバー全員がお互いを尊重しながら刺激を与え合っている。すごく大人なバンドですね。

高橋「お互いを牽制せずにリスペクトできる。これまであまり経験したことがないバンドですね。それに、メンバーにいろんなことを安心して任せることができる。そういうのはYMO以来です。ただ、いまは新婚ほやほやの状態だから。そのうち、倦怠や確執が生まれるかもしれないけど(笑)」

――確執とは縁がなさそうな面々ですが。

ゴンドウ「もしかしたら、僕が何か火種になることをするかもしれませんが(笑)、これから先が楽しみなバンドです。自分も楽しみたいと思うし」

高橋pupaもIn Phaseもゴンちゃんがやる仕事って、音出しから何からすごく多いんですよ。それをここではまりんが折半してくれる」

ゴンドウ「自分から〈やりたい〉って言ってくれる。かといって全部自分で引き受けるわけじゃなくて、その案配がすごくいい。これまでより楽になったぶん、何か新しいことを試していきたいと思ってます。歌をがんばるとか」

――バンドが初体験のLEO君にとって、METAFIVEはどんなバンドですか?

LEO「常に刺激的なバンドですね。アルバムもすごく良いものが出来たと思うし。あと去年、夏フェスに出た時に夏がほんとに似合わないバンドだと思いました(笑)。全身(コスチュームが)黒だし。私のなかでMETAFIVEはゴス・バンドですね」

高橋「このバンドは、映像とかそういうのを全部やれて初めて成立するところがあるので、制限がある夏フェスってあまり合っていないと言えばいないんだよね。呼ばれたら喜んで行くけど、日焼けが似合わないメンバーばかりだし(笑)」

LEO「そこが良いんですよ。METAFIVEは日本を代表するネオ・ゴス・バンドです!」