35年ぶりの『SEA BREEZE』が運ぶものたち
81年3月に出た本作には鈴木茂に吉川忠英、林立夫、井上鑑、上原裕……と『SEA BREEZE』と重なる演奏家がズラリ。角松青年もさぞかしスタジオで圧倒されたことだろう。新作で蔵出ししてきた“Last Summer Station”も松本隆のウェットな歌謡性に影響された例として興味深い。
こちらは81年4月にリリースされたお化けヒット作。井上鑑が全曲のアレンジを手掛け、その旗振りで松原正樹や林立夫らPARACHUTE勢が粋な演奏を繰り広げている。角松の“City Nights”に松原が施したアレンジの狙いもいまなら明快だが、これを咀嚼するのに角松はまだ若かった。
今度は『SEA BREEZE』と同じ81年6月のリリース。今剛、松原正樹、林立夫、斎藤ノブ、マイク・ダン、安藤芳彦らが79年に結成したフュージョン・バンドで、これは井上鑑も加入した3作目。この2月に逝去した松原を含め、メンバーたちは以降も角松作品で活躍した。

ある時期の日本のミュージシャンの多くは、フュージョンもAORもブラコンも相互に重なり合ったUS西海岸シーンの豊穣さやリゾート感覚に大きな着想を得ていた。デビュー時の角松もその例に漏れなかったはずだが、数作のちにNYサウンドに傾倒した彼は都市型ファンクに舵を切ることに。

アル・マッケイも在籍中で、トム・トムとジェリー・ヘイ、デヴィッド・フォスターらが入り乱れ、ファンクがAOR~ブラコンとクロスした分岐点の一作。そういえば、角松の“Dancing Shower”に無記名で参加しているホーンズって……(ライナーを参照)。
今日的な〈シティー・ポップ〉の広がりに先駆け、2010年代式のアーバン・グルーヴをサラリと提示したセルフ・カヴァー集。太いウネリの上でドッシリ構えた歌の輪郭の強さは今回の『SEA BREEZE 2016』にも直結するもの。なお、“Wave”はここでも再録されている。