ボストン交響楽団のオーボエ奏者、若尾圭介の新譜はパリで録音したフランスのオーボエ作品集。早速、ご本人にメール・インタヴューしてみた。
――久々のソロアルバムにフランス音楽を選び、オリジナルの室内楽曲以外に歌曲や他の楽器のための作品からのトランスクリプションを組み合わせた背景は?
「2013年春、ボストン交響楽団のサバティカル休暇を取っていたので、家族で2ヶ月半パリに滞在しました。有名なサンジェルマンデプレ教会裏のファステンバーグ広場にアパルトマンを借り、出来るだけ普通の生活をしてみました。短期間ではありましたが、パリでの毎日や出逢った人々、交流のあった音楽家達に刺激を受けて、これまで馴染の深かったフランスのオーボエ曲を録音することになりました。歌曲などを取入れたのは、私が感じたパリでの毎日、空気感をより多くの方々に伝えたいと思ったことが大きいです」
――管楽器にはフレンチ、ジャーマンなど異なる奏法の流派が存在するとされる一方、ボストン交響楽団の管楽器はフランス系の伝統があると言われてきました。御自身のスタイルは?
「そういう事は知っていますが正直、修業時代から“スタイル”を重視した事はありません。心に目指す音色、音楽があり只々真摯に追いかけてきました。アメリカでもヨーロッパでも最高の環境で教えを受け、多くの出会いを経て演奏活動もしてきましたが、敢えて言えばオーボエ人生の全てが私の“スタイル”を確立しています。その中でも、このCDへの推薦状を直筆で書いて下さった指揮者でピアニストのクリストフ・エッシェンバッハと、オーボエ奏者のモーリス・ブールグ。私をプロフェッショナルの音楽家へと押し上げてくれた恩師、ジョゼフ・ロビンソン先生。また最も大切な時期にオーボエの基礎と音楽への愛情を心に染込ませて下さった元日本フィル首席オーボエ奏者の新松敬久先生。そして海外にいながら、日本でも活動してこられたのは、代官山ヒルサイドテラスオーナーの朝倉徳道様、美子様ご夫妻の長きに渡るご支援のお陰で、ご夫妻の音楽への造詣の深さを尊敬しています」
――ボストン交響楽団は若いアンドリス・ネルソンスをシェフに選びました。
「音楽監督に決まる前に数回、彼の指揮で演奏をした事がありますが、その時の喜びは未だに忘れられません。それぞれの時代ごとに社会の形態や文化が変化する中、様々な指揮者がいましたが、プレーヤーと同じ目線に降りて来てくれる指揮者だと思います。来シーズンに監督就任してから、彼と共に演奏出来る事が、今から楽しみです!」