バッハとケージ、自作を一枚に録音したトリスターノのように、古楽から現代まで多様な作品を並列に配置し、より鮮明に浮き上がる対比をプログラムに反映させる若手は少なくなく、こちらもパッヘルベルの鍵盤曲を中心に、委嘱した新作を並べている。中心になるパッヘルベルは1699年の出版で現代ピアノで紡がれていくが、アリアといくつかの変奏で構成されるこの曲は、ゴルドベルクのように様々な編成に対応できそうなポテンシャルをも感じる。オーケストラだったり木管アンサンブルだったりといった響きをも内包し、そこのストラクチャの変遷も愉しい。委嘱の三作品は全て邦人若手によるもの。