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VARIOUS ARTISTS 20センチュリー・ウーマン Rhino/ワーナー(2017)

マイク・ミルズ監督の半自伝的映画。監督があの頃の自分を投影したジェイミー少年は思春期真っ只中にあり母親に反発。シングル・マザーのドロシアは息子が理解できなくなって混乱。息子はトーキング・ヘッズら79年当時のニューウェイヴを心の拠り所とし、母親はサッチモやデューク・エリントンなどのジャズ・ソングを愛している。互いが互いを理解し合う過程で音楽が重要なファクターとなる本作。ここではそのいずれもが優しく響いている。 *内本

 

VARIOUS ARTISTS PARKS パークス TONOFON/Pヴァイン(2017)

東京・吉祥寺にある井の頭公園を舞台に、ひとつの曲を巡る冒険物語。同公園の閉園ソングとして使われている相対性理論“弁天様はスピリチュア”をはじめ、映画に出演したスカート、Alfred Beach Sandal、シャムキャッツらの楽曲や、トクマルが手掛けた橋本愛ほか出演者が歌う“PARK MUSIC”など、インディー界の強者たちによるヴァラエティー豊かなナンバーに包み込まれた本作。そのサントラは、トクマルシューゴが監修を担当している。 *村尾

 

鈴木慶一 アウトレイジ 最終章 DREAMUSIC(2017)

〈アウトレイジ〉シリーズのすべての音楽を手掛けてきた鈴木慶一。物語を盛り上げる劇伴というより、音響的なサントラで北野武監督の独特の乾いた空気感を生み出してきた。今回もそれに準じるエレクトロニックなサウンドを中心にしたアプローチをとっていて、ノイズや不協和音などを散りばめた冷ややかなスコアが、暴力が渦巻く物語に不気味な緊張感を醸し出している。そんななか、時々浮かび上がる哀愁を帯びたメロディーが効果的。 *村尾

 

ベイビー・ドライバー Columbia/ソニー(2017)

運転テクを買われて犯罪に加担する主人公のベイビーは、何台もの携帯プレイヤーを肌身離さず持ち、常にイヤホンを耳に挿して生活。理由あって彼にとっての音楽はそれほど切実でなくてはならないものだが、最高の音楽を聴けば昂揚したり元気が出たり強くなれたり人に優しくできたりすることを僕たちはよく知っているから、観ている間そんな彼の感覚が自分のものに思えてビンビンくる。音楽と物語のリンクも特徴的で、ヒロインのデボラが務めるダイナーで互いの名前について語る場面はとりわけ出色。〈私の名前が歌われた曲はベックの“Debra”だけ〉と言う彼女に、ベイビーは〈もう1曲ある〉とT・レックス“Debo-rah”を聴かせる。そしてカラフルな服が回るコインランドリーでイヤホンを互いの片耳に挿してそれを聴く……。名シーンでしょ、これ。監督はこれがやりたくてヒロインの名前を決めたのだろう、きっと。 *内本

 

Original Soundtrack 怪盗グルーのミニオン大脱走 I Am Other/Columbia/ソニー(2017)

反悪党同盟へ転身したグルーとその家族、謎の生命体ミニオンが活躍する3Dアニメ・シリーズの最新作。今回の敵は80年代の人気子役で、落ちぶれた今も過去を忘れられず、ド派手な80sファッションを纏って悪さを仕掛けてくる。そんな彼の登場時には、MJ、A-HAといった当時のヒット曲が連発! それに合わせてか、シリーズ常連のファレル・ウィリアムスによる新曲群もニューウェイヴ仕様で、音楽と愛嬌あるキャラの動きとのシンクロが楽しい! *土田

 

渡邊琢磨 ブランク インパートメント(2017)

俳優・染谷将太が監督を務めた3本の短編の音楽を手掛けた、COMBO PIANOこと渡邊琢磨。それらのスコアをオリジナル・アルバムとして再構築したのが本作だ。ほとんどの楽器を渡邊ひとりで演奏して作り上げたサウンドは、聴き進むにつれて、叙情的なアンビエントから幽玄なドローンになり、摩訶不思議な音響空間を生み出していく。実験的で一筋縄ではいかないところが、染谷将太の作り出す奇妙な世界と共振している。 *村尾

 

VARIOUS ARTISTS 「ドリーム」オリジナル・サウンドトラック ソニー(2017)

ファレル・ウィリアムスが音楽を担った話題の映画がついに日本へ! 「ムーンライト」でも好演したジャネール・モネイがメイン・キャストの一人である本作は、60年代初頭のNASAの有人宇宙飛行計画における黒人女性数学者たちの功績を描いたもの。モネイやアリシア・キーズ、メアリーJ・ブライジらと共に当時の空気を今様に表現したソウル/ゴスペル曲は全体的に風通しが良く、まるで差別をよそに困難を乗り越える主人公の柔軟な足取りのよう。 *土田

 

ONEOHTRIX POINT NEVER Good Time Original Motion Picture Soundtrack Warp/BEAT(2017)

ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーが全編のスコアを手掛け、今年のカンヌでは〈サウンドトラック賞〉の栄冠に輝いた、ジョシュア&ベニー・サフディ監督の最新作。NY拠点の兄弟は、前作「神様なんかくそくらえ」でも、冨田勲やアリエル・ピンクを印象的に使うなどエッジーな選曲センスを覗かせていたが、本作におけるOPNの存在感はそれ以上に強烈だ。作品の舞台はクイーンズの貧困地域。警察に囚われている弟を助けんとする兄の奔走を、カメラは追い掛ける。そのあまりに場当たり的な行動には、コーエン作品的な可笑しみすら漂うが、魑魅魍魎の囁き&亡者の雄叫びの如きエレクトロニック・サウンドが、物語の文脈を無視するかのように大音量でぶっ込まれることで、笑うことも涙することも許されない、奇妙な後味を残す。ラストに流れるイギー・ポップの参加曲は、すべてを許したもう聖歌のよう。 *田中

 

岩崎太整 奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール キューン(2017)

渋谷直角の漫画を大根仁が映画化。奥田民生のような〈力まないカッコいい大人〉に憧れる雑誌編集者と美人ファッション・プレスが中心のラヴ・コメディーで、主人公の心情と重なる民生の楽曲も全編で使用。登場人物のキャラも含めてとてもポップな作りなのだけど、〈出会う男すべて狂わせるガール〉は文字通りの意味。「モテキ」の長澤まさみに匹敵するあざとさとエロさ、可愛らしさで迫る水原希子の破壊力に戦慄します! *土田