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(左から時計回りに)中易繁治、河塚篤史、久世敦史、島紀史

ノスタルジーに浸る気持ちはない。現メンバーで見せる〈今〉のCONCERTO MOONが一番格好良い

――島さんは楽曲制作とコンサートではどちらがお好きですか?

「誤解をされると困るんですけど、レコーディングなんて〈しなくていいならしたくない〉(笑)。ツアーに出るために作品を作っていると思っていた時期もあったくらい、やっぱり一番楽しいのはステージに立っている時ですね。

もちろん自分の音楽がどんどん形になっていって、自分のイメージする音に近づいていくことは喜びなので、スタジオで緻密に音楽を組み上げていくことも楽しいんですが、自分のこだわりもどんどん強くなっていくので、年々困難なものになっていっているのは事実ですね」

――作業の終わりも見えなくなると。

「はい。とはいえ、自分の頭で鳴ってる音楽に限りなく近づけた音楽を、人には聴いてもらいたい。だから、もう誰にも聴いてもらいたくなければ、スタジオではなく自宅で静かに制作するのかもしれないんですけど、僕はHR/HM村の社会といっても少なくともポピュラリティーのある活動をしたいし、一人でも多くの人に聴いてもらって一人でも多くの人にコンサートに来てほしいので。

そういう活動というか、定期的に自分の作品を発表したいという欲求がなくなったら、たぶんバンドを辞めると思うんですよね。それはさっきの〈自分がこうありたい自分〉ってのと繋がってくるわけですが。また、自分の音楽がビジネスになっているか、ということも重要だと考えています」

――なるほど。ちなみに今作の制作中に聴いていた音楽などはありますか?

「僕は制作期間はまったく聴かないんです。そうじゃないと、いいなと思ったものが真似する気がなくても、絶対に自分の中に刷り込まれてしまうから。それが出てしまうのが怖いんです。なるべく真っ新な状態で集中したい。

なので、いつもレコーディングとマスタリングを終えた後にやっと、録り貯めてあった音楽番組なんかを観るんですが、今回はエンバー・フォールズという格好良いバンドを見つけましたね。曲中に必ずいいフックがあって、こういうのがうちの曲にもあれば良かったなあ、とか思ったので、ホントに聴かなくて良かったです(笑)。

もちろん、リッチーやディープ・パープルなど、昔から繰り返し聴いているようなものは聴いてましたよ。僕にとってリッチーは精神安定剤のようなものでもありますからね」

エンバー・フォールズの2017年作『Welcome To Ember Falls』収録曲“Rising Tide”

――その期間はアウトプットだけをするということですね。

「そうですね。音源制作は自分の中に蓄積したものがあって、それを自分のなかで咀嚼して出す作業でしょ」

――島さんは常に、先ほどからおっしゃっている〈自分がありたい自分像〉に一直線に向かっているのでしょうか? 私事で恐縮ですが、先日イギー・ポップの自伝ドキュメンタリー「ギミー・デンジャー」を観ていて、イギーは自分のやりたいことにもちろん挑戦しつつも、ファンの考えるイギー・ポップ像にできるだけ忠実であろうという姿勢を個人的には強く感じたんですね。島さんはそのあたり、ファンが理想とする島さん像と〈自分がありたい自分像〉とをどうバランスをとっていらっしゃるんですか?

「自分の理想の追求。よくメンバーにも言うんですけど、やりたいことしかやらない、やりたくないことはやらない、やりたいことが金銭的にやれないのならバイトをしながらでもやる、という基本精神はずっと変わってないんです。

これまでにも、こうやればいいのに、こんなものを作ればいいのにって言ってくる人や、自分の言う事を聞いていれば大丈夫だって言う人もいたけど、それが自分のやりたいことではないと僕はやっぱりやりたくないんです。

一方、自分の音楽を支持してくれる人の気持ちを無視することはしたくない、というのは、僕も同じく音楽リスナーで音楽ファンだったりするので、すごく自覚してやっています。

でも、自分のやりたいものは、ファンが北を向いてしまうようなものではないという自信もあるんです。突然僕らがポップ・ソングだけをプレイするぞ!と宣言したり、青春パンク・バンドをやりはじめたりして、これがわれわれのやりたいことだと言ったとしたら、たぶん期待は裏切るでしょうけど。ファンは大事にしたいし期待には応えたい、だけど媚びるつもりはない。ということですね」

――その〈幹〉はファンと共有できていると。

「と、思うんですけどね」

――来年からはじまる今作のリリース・ツアーの前に、これまでの過去曲をセットリストに組み入れたプレ・ツアーを11月から開催しますね。最後に同ツアーへの意気込みなどを教えてください。

「自分が言い出しっぺなんですけど、もう何年も弾いてない曲ばかりなので、1ミリも覚えてないものが多くて(笑)。

それこそ幹は変わってないんだけど、やっぱり20年もたてば芸風って微妙に変わるんですよ。20代の島紀史はアホみたいに速く弾いていますが、今とはこだわりの種類が違ったからあのスピードで弾けてるんですね。

でも、今年こういった企画をやる意義はあると思うんですよ。20周年を目前にした19年目の最後に、しかも今のメンバーでやるということに意味があるんです。ただ単に懐古主義とかノスタルジアを共有しましょうってことではなくて、今のメンバーで昔の曲をやると昔よりかっこよくやれると思ったからなんですよ。

もちろん長く支持してくれている人には懐かしんでほしいし、逆に新しいリスナーには〈こんな曲もあるんだよ〉とプレゼンする機会にもなるだろうけどね。

来年も周年だからって大騒ぎするつもりはなくて、いつも通り年明けにはリリース・ツアーをやって、何かしらの音源リリースもあるかもしれないけど、でもやはり今を生きてるバンドとして、今だからこそできるものを真摯に見せたいですね」

――今のCONCERTO MOONに自信があるということですね。

「あります。今のメンバーとチームであれば、という自信は持っています」

 


LIVE INFORMATION
Proloug to Messiah Tour
2017年11月25日(土)静岡・富士 ANIMAL NEST
2017年11月26日(日)愛知・名古屋 ell.SIZE
2017年12月2日(土)大阪・西九条 BRAND NEW
2017年12月10日(日)東京・目黒 鹿鳴館