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華やかな大衆性と格調の高さ

 ワン・ダイレクションとファンを取り合うほど2013年のデビュー時から大衆的なアイドル性を備えつつ、一方で自分たちを冷めた目で捉えたリリックなどが意識の高い人にも評価され、おいしいポジションを築いてきたマンチェスターの4人組、1975。2年ぶりとなるこのサード・アルバム『A Brief Inquiry Into Online Relationships』でも、〈ネット上の希薄な人間関係を考察する〉というインテリな題目を掲げながら、プロダクション的には前作『I Like It When You Sleep, For You Are So Beautiful Yet So Unaware Of It』で開眼したホワイト・ファンク/ディスコ路線の続きを展開し、どっちサイドの耳で聴いても大満足な内容になっていて流石としか言いようがありません。

 “The Sound”(2016年)みたいな瞬発力のある曲が減ったぶん、代わりに物憂げなトーンで全体を統一しているのもある意味イマっぽく、ジョイ・ディヴィジョン“Disorder”なリフ使いやリル・ピープへの追悼など、SNSで話題にしたくなるような仕掛けもいっぱい。声の加工によって甘みとプラスティック感を増した歌が、〈フューチャー・ソウル〉〈トロピカル・ハウス〉〈ダーク・ゴスペル〉など昨今のさまざまなトレンドをスムースに束ねていく様子に、きっとヴァンプスやDNCEも嫉妬するんじゃないでしょうか。とにかく、ここへきて1975に絶対王者の風格が漂いはじめた印象です! *山西絵美