クロマチックハーモニカのミューズ・山下伶が綴るスウィート&ジャジーな音楽

 「クロマチックハーモニカに出会ったのは、大学を卒業して間もなく。中学、高校、音楽大学で学んできたフルート演奏の仕事をしていたのですが、音楽を続けるどうか心の中に迷いが生まれてきた頃でした。そんな時、YouTubeでクロマチックハーモニカの第一人者である徳永延生先生の演奏をたまたま耳にして、その音色の豊かさに衝撃を受けました。そしてその1週間後には先生を訪ね、いきなり『弟子にしてください』と(笑)。ハーモニカの知識も何もありません。ただ突き動かされるようにしてのスタートでした」

 その後めきめき実力を上げクロマチックハーモニカの若手トップとなった山下伶は、これまでに3枚のリーダー作品を発表。近年、本田雅人(as)、寺井尚子(vn)のようなビッグ・アーティストとの共演や、東京フィルハーモニー交響楽団とのコラボレイションなど幅広い活躍を見せる彼女が12月19日に発表するアルバム『Dear Darling』は、ジャズ界のトップ・ベーシスト井上陽介が率いるトリオやヴェテラン・ジャズ・ギタリストの田辺充邦らを迎えて制作された、ジャズ・テイストが強く薫る作品。アルバムについて聞いてみた。

山下伶 Dear Darling Columbia(2018)

 「井上さん、秋田慎治(p)さん、江藤良人(ds)さんたちの演奏が大好きなんです。数年前からライヴによく行くようになり、いつか共演できたらいいなと思っていました。ですから、今回のアルバム作りはそこからスタートしています。やっと夢が叶ったという感じかな。現在の目標として、もっと自由な演奏をしたいという気持ちがありますので、今後はジャズ演奏にも積極的に取り組んでいきたいと思っています」

 今回のアルバムはジャズへのアプローチがひとつのテーマになっているが、その他にも、YUTAKA(g)との共作によるハッピーなオリジナル曲《晴れのち晴れ》や、田辺充邦(g)とのしっとりとしたデュオ演奏《悲しい酒》、ハーモニカの多重録音によってバッハ作品にトライした《主よ、人の望みの喜びよ》など、彼女のチャレンジ精神が随所に発揮された作品となっている。

 「バッハの曲は大きな挑戦でした。パイプオルガンの荘厳なイメージが強い曲ですが、その世界観をハーモニカでどれだけ表現できるかという思いでトライしました。アルバムではオーバーダビングを用いて演奏していますが、最近ではルーパーを使ってライヴでも演奏しています。この曲に挑んだことによって自分の新しいスタイルを発見できたように思いますので、今後もどんどん新しいことに挑戦していきたいと考えています。自分の表現をどんどん広げていき、クロマチックハーモニカの魅力をより多くの方たちに知っていただけると嬉しいですね」

 


LIVE INFORMATION

山下伶(hrm)NEWアルバム『Dear Darlig』リリース記念LIVE
○2019/1/22(火)開場17:30 /開演19:30
会場:渋谷JZ Brat
【出演】山下伶(hrm)井上陽介(b)  秋田慎治(p)  江藤良人(ds)  田辺充邦(g)  平山織絵(vc)
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