Photo : Naoya Ikegami (Suntory Hall)

 

ミュンヘンで48年ぶり室内楽1位の日本人「葵トリオ」デビュー盤

 ヴァイオリンの小川響子、チェロの伊東裕、ピアノの秋元孝介が2016年に結成した〈葵トリオ〉。2018年の全ドイツ公共放送網(ARD)音楽コンクール(通称ミュンヘン国際音楽コンクール)室内楽部門で、東京クヮルテット以来48年ぶりの日本人チーム優勝を達成した。3人がサントリーホール室内楽アカデミーで出会った縁もあり、2018年12月14日には凱旋公演を同ホールのブルーローズで開いた。曲目はハイドンの《ピアノ三重奏曲第27番》(1次予選)とブラームスの《同第1番》(録音審査)、シューベルトの《同第2番》(ファイナル)。いずれもコンクールで演奏した作品で、ブラームスを除く2曲をマイスター・ミュージックがライヴ録音、トリオのデビュー盤として発売する。

葵トリオ ミュンヘン国際音楽コンクール優勝記念盤 ハイドン:ピアノ三重奏曲第27番/シューベルト:ピアノ三重奏曲第2番 マイスター・ミュージック(2019)

 チェロの伊東に先ず、ピアノ三重奏団と弦楽四重奏団の違いを訊いてみた。「東京藝術大学の学部生の時は、弦楽四重奏を学んでいました。3年前に葵トリオを結成して気付いたのは、弦楽四重奏(SQ)が4人で1つの音色をつくるのに対し、ピアノトリオはより各人の個性を出せることです。SQは低音から音楽を積み上げますが、トリオはピアノの音符がたくさんあり、チェロもメロディを奏でる場面が増えます。コンクールの審査員の先生にも『組んで間もないチームで3次予選まで残るのはピアノトリオ。SQではありえない』と指摘され、アンサンブルの傾向の違いを意識しました」

 3人とも関西出身で東京藝大に進学、現在20歳代半ばという共通点がある。ミュンヘンのコンクールに挑むと決めて2ヶ月間、「ほとんど合宿のような状態で集中的に練習、レパートリーを蓄えました」といい、葵トリオとして「できればトリオ・ヴァンダラー、ボザール・トリオなどのように常設団体として長く活動したい」との思いを強めた。ヴァイオリンの小川はベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のカラヤン・アカデミーに在籍、ピアノの秋元もベルリンへ移住…と他の2人はベルリン在住。今年4月には3人そろってミュンヘン音楽大学で、フォーレ四重奏団のピアニストでもあるディルク・モメルツ教授のクラスで1年半~2年間、みっちりと室内楽の奥義を極める。

 「クラシック音楽全体を取り巻く状況が厳しいなか、室内楽の需要はもっと少ないです。コンクールの副賞として入ってきた本番がこれから始まります。私たちの演奏を各地の人々がどう受け止めてくださるのかは、大きな勝負です。そこで何かを得て成長し、皆さんに『聴きたい』と思っていただけるピアノトリオを目指します」。伊東はぐっと、表情を引き締めた。

 


LIVE INFORMATION

葵トリオ 2019年コンサート
○4/24(水)フィリアホール(神奈川)
○4/27(土)びわ湖ホール(滋賀)
○5/1 (水)トッパンホール(東京)
○7/5 (金)盛岡シビックホール(岩手)
○7/7 (日)やまと郡山城ホール(奈良)
○8/9 (金)宗次ホール(愛知)
aoitrio.com/concerts/