コラム

フライング・ロータス(Flying Lotus)が愛する日本カルチャーを徹底解説!

ドラゴンボール、FF、渡辺信一郎……『Flamagra』の背景にあるもの

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フライング・ロータスと日本のゲーム

しかし、もっと重要なのはゲーム音楽だ。

フライング・ロータスは、ニック・デュワイヤーによるドキュメンタリー・シリーズ「Diggin' In The Carts(以下、DITC)」(2014年)にインタヴュー出演し、ゲームとゲーム音楽への愛を語っている。最近のインタヴューでは、「ずっと兄が欲しかった。手に入れたもののなかで一番近いものはニンテンドー(任天堂製コンソールの総称)だ」という印象深い発言もある(Huck Magazine)。

また、〈ファイナルファンタジー(以下、FF)〉シリーズも重要作。〈DITC〉では「ファイナルファンタジーVII」(97年)を生涯ベストの一本とさえ語っているほど。ライヴで〈FF VII〉のサウンドトラックをリミックスして披露するのはお馴染みの光景だ。

「Diggin' In The Carts Episode 5:ロールプレイが叶えた夢」。フライング・ロータスが「ファイナルファンタジーVII」への愛を語っている

そして、フライング・ロータスが監督した映画「KUSO」(2017年)にも楽曲提供で参加したコンポーザーでゲーム・デザイナーの山岡晃を忘れてはいけない。山岡の代表作はコナミのホラーゲーム〈サイレント・ヒル〉シリーズの音楽。フライング・ロータスは同シリーズのサウンドトラックからサンプリングしたことがあり、クリアランスのためにコンタクトをとったことで両者に交流が生まれている。映画的なグラフィックで繰り広げられるグロテスクで不条理なホラー・ゲームは、いかにも彼の嗜好にマッチしそうで、思わず納得してしまう。

 

フライング・ロータスと日本の映画

フライング・ロータスはもともと映画を学んでおり、前述の通り念願の長編監督も果たした映画好き。ことあるごとに三池崇史や塚本晋也、北野武、大林宣彦、石井克人といった日本の映画監督へのリスペクトを公言してきた。

たとえば彼はお気に入りの5本のなかに塚本晋也「鉄男」(89年)を挙げ、ティム・バートンやデヴィッド・リンチに並ぶ手仕事あふれる傑作と評している(Rotten Tomatoes)。また、「『KUSO』に最も近いものは『ナイスの森 The First Contact』だ」という発言も(Vice)。他には、大林宣彦の「HOUSE ハウス」(77年)を「KUSO」と通じる作品として紹介したこともある(Paste)。このように、彼はデヴィッド・リンチやアレハンドロ・ホドロフスキーなどと並んで、日本のカルト的な映画作家を敬愛してきた。

※石井克人、三木俊一郎、ANIKIによるユニット〈ナイスの森〉が制作した2006年の映画

フライング・ロータスが監督した2017年の映画「KUSO」トレイラー

 

フライング・ロータスと日本のアニメ/漫画

フライング・ロータスは5作目の『You're Dead!』(2014年)でアートワークに漫画家の駕籠真太郎を起用、グロテスクでカラフルな作風を遺憾なく発揮した、強烈なインパクトのジャケットで驚かせた。という具合に、日本のアニメや漫画にも造詣が深い。

2014年作『You're Dead!』カヴァー・アート

彼が言及してきたアニメや漫画は、作品単位で言えば書ききれないほど。とはいえ真っ先に思い浮かぶのは〈ドラゴンボール〉シリーズだろう。なにしろ、2011年の来日では孫悟空の道着姿でステージに立った。『Flamagra』の構想を掴んだのはゲーム「ドラゴンボール ファイターズ」(2018年)をやりこんでいたときだったというエピソードも(GQ)。

「カウボーイビバップ」(98年)や「サムライチャンプルー」(2004年)を手がけたアニメ監督の渡辺信一郎も外せない。渡辺はそのハードボイルドかつ洒脱な作風から国内外で高い評価を得ているほか、「サムライチャンプルー」でNujabesなど腕利きのビートメイカーを起用するなど、音楽に深いこだわりを持つことが知られている。かねてからフライング・ロータスは渡辺の作品を愛好しており、渡辺のショート・フィルム「ブレードランナー ブラックアウト 2022」(2017年)に音楽を提供した際には喜びのコメントをツイートしていた(ただし、既に削除済)。以後も、前述の“More”MVやアニメシリーズ「キャロル&チューズデイ」への楽曲提供など度々コラボレーションしている。

2017年の短編アニメ「ブレードランナー ブラックアウト2022」