〈THE PIANO ERA 2019〉公演と、活動の起点となったアルバム『ビャワ・フラガ(白い旗)』を振り返る

──国籍も音楽性も異なるピアニストたち6組による、〈THE PIANO ERA 2019〉の初来日公演を終えました。感想を聞かせてください。

「呼んでいただき光栄でした。他の参加アーティストが素晴らしくて、私自身がどのように受け入れられるか自信がなかったのですが、お客さまに楽しんで頂けたようで嬉しかったです」

──ピアノ・ソロ曲で占められる『エーシャ(Esja)』の“Eden”、“Hawaii Oslo”など数曲に加え、そこには未収録のもの、例えば歌や、声を使用したり、プリペアド・ピアノも演奏しましたね。

「冒頭から歌いましたし、また、音源(鳥の声やパーカッション音)に合わせることもしました。ヴォーカル曲は次のアルバムに入れる予定です。コンサートでは、様々な音のバランスを考え、選曲しました」

──ハニャさんのいるシーンでは、ピアノを演奏しながら歌える人は珍しい気がします。

「数年前から、ヨーロッパではピアノと電子音楽を融合した音楽が盛り上がっていて、それに合う会場も多数あるのですが、コンピュータを使う音楽は、大抵男性がやっています。そこで歌うのは珍しく、私独自のスタイルと言っていいかと思います」

──環境音や、ピアノ音域の音量バランスも良かったです。

「ツアーを同行するエンジニアのアガタが、音響やピアノの特性を分析して、世界中のどんな場所で弾いても、同じ演奏ができるようにしてくれました」

──ホームタウンのワルシャワとはどんな都市でしょう?

「300万人が住み、コンサート、ライヴ会場、クラブ等が増え、音楽を聴く機会は増えています。オルタナティヴな音楽に、ワルシャワっ子が耳を傾けています。お金にならない音楽でも、みんながいいなと思えるものが増えていけばと思います」

──作曲において、心がけていることはありますか? アレンジを手がけ、アーティスト活動の原点となり、先日日本盤が出た『ビャワ・フラガ(白い旗)』からも感じられることなのですが、その頃から一貫して曲の中にしっかりした構成力を感じます。また、クラシックの影響を感じさせながら、いわゆるクラシック臭さは皆無です。

「12年間音楽学校に通い、勉強したクラシック音楽の影響があるのは確かです。聞く人が、どこにいるのか、次に何が来るのか、次どのようなリズムが来るのか予想ができるような、そんな余地のある音楽を作りたいのです。『ビャワ・フラガ(白い旗)』は、ポーランドの人気バンド、リパブリカのリーダー、グジェゴシュ・チェホフスキ作品のカヴァー・アルバムなのですが、友人のドブラヴァ・チョヘルの誘いで、ロックフェスでアレンジを依頼されたのがきっかけなんです。ピアノを演奏すること自体にすでにクラシック音楽の要素は入り込んでいますが、今は特にクラシックに戻る必要は感じていません。電子音楽やアンビエントに影響を受けて、独自のスタイルを作ろうと心がけています」

──ニルス・フラーム、オーラヴル・アルナルズとの逸話などあれば教えてください。

「2人とも大好きな人たちです。ニルスは尊敬するアーティストで、彼からアップライト・ピアノを演奏し、それを録音する手法を学びました。『エーシャ(Esja)』を作るにあたって最も影響を受けました。オーラヴルとは、2019年2月にポーランドで彼がコンサートやった時に、前座で参加したことがきっかけで知り合い、11月の初めにロンドンのコンサートで共演しました」

──最後に日本のファンに向けてお願いします。

「今回、〈THE PIANO ERA 2019〉に来ていただいたお客さま、主催者の皆さんに感謝します。夢だった日本に来れて嬉しいです。実際に見た日本は私の想像していた所より、何十倍も何百倍も素晴らしいところでした。注意深く私の演奏を聴いてくれましたし、いろんなコメントを頂き、サインに並んでくれました。こんなに歓待してくれて嬉しかったです。今後のプランですが、次のアルバムが2020年の5月に発売されます。発売が予定通りに行けば、またツアーを行う予定です」

 


ハニャ・ラニ(Hania Rani)
1990年、ポーランドのグダンスク生まれ。ピアニスト、作曲・編曲家。クラシックはもちろん、ポスト・クラシカルからチェンバー・ジャズ、アンビエント、フォークなどもこなす。2015年、チェホフスキのナンバーを斬新に解釈した『ビャワ・フラガ(白い旗)』を発表し一躍注目を集める。現在はワルシャワとベルリンをベースに活動中。