朝起きてコーヒーを淹れる。真っ白なカレンダーを見ながら、今日は何しようかなんて考えていたら昼になってしまった。音楽をかけて、読みかけの本を開く。だいたい音楽はすぐに消してしまって、活字をなぞっていく。夜になる。
時々オンライン飲み会なるものが開催されて、全然会えていない友達と夜遅くまで話す。かと思えば1日中声を出さずに終わってしまうこともあって、そういう日は寝る前に「あ〜」とか適当に声を出す。特に意味はないけど、何だか声だけは出しておきたいみたいな気持ちで。
この期間、煮え切らないものが溜まっていくと同時に、今までやれなかったことや、新しいことを色々とやれている。慣れてしまえば小さな1DKに1日中いるのも悪くない。でも生活はままならなくなってしまいそうになっている。
今朝はThe Radio Dept.『Clinging to a Scheme』を聴いていた。淡白に流れる音が何処か快楽的で、身体にピッタリくっついたように心地いい。何となく今の生活と似ているような気がする。
The Radio Dept.のことを知ったのはもう随分と前で、出会いは所謂ジャケ買いだった。家に帰って再生したら、ジャケットにピッタリ合った音で嬉しかったことをよく覚えている。
いかにも北欧(スウェーデン)らしい冷たい空気を帯びながらも、The Radio Dept.の音は何処か暖かくて、心にスッと入って自然に溶けていくような甘さに満ちている。僕は特にM-2“Heaven’s on Fire”という曲が大好きだ。
やけにキラキラとしたシンセリフに淡白なビートと歌が混ざって、何とも不思議な手触りがある。どの曲もそんな感覚を持っていて、1部分を切り取ればカラフルだったりポップだったりするのだけれど、全体像からは淡々とした印象を受ける。それは寒い空気の中で小さく灯る火のような、仄かな暖かさであるような気がする。
アルバム全体を通しても淡々とした印象が強く、再生してから最後まで大きな起伏や展開もない。けれど、じんわりと心に染み込んでいくような柔らかさがあって、ひたすら心地いい。
M-7“Memory Loss”後半のシンセリフが最高。
僕はこのアルバムに関してもThe Radio Dept.に関しても熱心に聴きまくっていた時期がある訳ではない。どのアルバムも大好きだけれど、何というか時々思い立って無性に聴きたくなるようなもので、それは思い出すと元気が出るような、頑張ろうと思えるような、誰にでもある幾つかの思い出みたいな感じだ。きっと今の時期になってこうして1人で聴いているのは、そういうものだからなんだと思う。
ラストの曲が終わったら、また棚にしまう。ふと思い出して、また聴く日がくる。その度に小さな明かりが心に灯って、また棚にしまう。
鼻先を掠めて行った春がいつの間にか過ぎて夏の匂いがしている。好きな音楽を聴いたり、読まないまま積み上げられていた本を1冊ずつ読んだりしていたら、いつの間にか今日も夜になった。CDを一時停止をしても、ページをめくる手を止めても、時間は止まらない。テレビをつけると「あと少しだけ一緒に頑張りましょう」と聞こえる。テレビを消して眠りにつく。
もうすぐ僕らEASTOKLABの新しいアルバムがリリースされる。予定していたツアーは発表もできないままに白紙になった。でもどうってことはなくて、音楽を作る度に感じる喜びは全然変わらない。どれぐらいなのかは分からないけれど、またみんなの前で演奏して、好きなライブハウスのバーカウンターで酒を飲んで、馬鹿みたいにゲラゲラ笑う日もきっとやって来る。
どれだけ時間が過ぎても、例えばそれがもう出来ないことだとしても、あの美しい時間を知っているし、それが変わることはない。美しいものは変わらないということを、音楽は教えてくれる。
RELEASE INFORMATION
Digital Mini Album『Fake Planets』
リリース日:2020年6月3日(水)
品番:UKDZ-0209
価格:1,681円(税込)
DAIZAWA RECORDS / UK.PROJECT INC.
TRACKLIST
1. Contrail ※先行配信中
2. Rainbow ※先行配信中
3. Stud ※先行配信中
4. Hug ※先行配信中
5. Farewell
6. Living
7. Ten
8. Dive ※先行配信中
EASTOKLAB『Fake Planets』はライブ会場、タワーレコード名古屋パルコ店ほか限定店舗およびオフィシャル・ウェブストアでCDが販売される。ケースは全7色。購入特典として未収録曲“Everything”のダウンロード・コードを封入。詳細はこちら。