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15. Celeste “Stop This Flame”


天野「英ブライトン出身のセレステ。彼女は、アデルやエイミー・ワインハウスをほうふつとさせるハスキーな歌声を持ったUKソウルの新鋭シンガーです。BBCの〈Sound Of 2020〉で1位に輝くなど、今年ブレイクまちがいなしの逸材ですね」

田中「ビリー・アイリッシュの兄、フィニアス(FINNEAS)がプロデュースした“I Can See The Change”もよかったのですが、やっぱりこの“Stop This Flame”の力強さは特別。〈あなたはストップと言うけれど、私は止まらない〉という歌詞をエモーショナルに歌い上げる様は、堂々たるものです」

天野「ところで今年、UKではR&Bやヒップホップだけでなく、インディー・ロックも盛り上がっていました。セレステと同じブライトン出身のポリッジ・レイディオ(Porridge Radio)など、注目すべきバンドがたくさん出てきています。その盛り上がりをこのランキングに反映できなかったのは、ちょっと反省ですね……」

 

14. Paloma Mami “Goteo”


天野「14位は、〈2020年期待の洋楽アーティスト50〉で紹介したパロマ・マミの“Goteo”。彼女はチリのレゲトン・シンガーで、もはやメインストリームと化したラテン・ポップ・シーンのなかでも一押しのアーティストです。Instagramフォロワーは約400万人! ヘア・スタイルやメイクも独特で、ファッション・アイコンでもあると思いますね。なんといっても、艶めかしい歌声が魅力的です。この曲はシンプルなレゲトンですが、センシュアルなムードがマミの歌声と溶け合っていて最高!」

田中プエルトリコのバッド・バニーなど、レゲトンとラテン・トラップを越境する20代半ば~30代のシンガーたちがヒットを飛ばすなか、マミは99年生まれのまだ20歳。これからラテン・ポップをけん引していく存在になるのでしょうか。制作中のデビュー・アルバムが楽しみです」

 

13. Meek Mill feat. Roddy Ricch “Letter To Nipsey”


天野「ミーク・ミルとロディ・リッチの“Letter To Nipsey”が13位。2019年に凶弾に倒れたラッパー、ニプシー・ハッスルに捧げた一曲ですね。今年を代表するラッパーの一人であるロディ・リッチが客演、という点にも注目です」

田中「ギャング出身である自身の過去を顧みて、ビジネスや教育への取り組みで地元LAのコミュニティーと子どもたちをサポートしてきたニプシーは、ものすごく尊敬を集めた存在でした。そんな彼に捧げたこの曲は、真摯な思いとブラック・コミュニティーへのリスペクトが詰まった感動的なものですね」

天野「〈俺たちは走り続ける〉というラインにぐっときます……。先日、ジョージ・フロイド(George Floyd)さんが白人警察官に殺されたことで、全米では再びブラック・ライヴズ・マターが大きなうねりになっています。ニプシーがやったことは〈経済活動版ブラック・ライヴズ・マター〉とも呼ばれていますね。そんないまだからこそこの曲とニプシーの遺産は、ますます重要な意味を帯びてきているのでは、と思いました」

 

12. Dixie Chicks “Gaslighter”


田中「ディクシー・チックスの“Gaslighter”が12位! なんと13年ぶりのシングルでした。この曲を収録した同名のアルバムは、新型コロナの影響でリリースが延期になっています。彼女たちのキャリアについては、以前〈PSN〉でしっかりと説明したので、そちらをご覧ください」

天野「普段は淡泊な亮太さんが、いつになくアツく書いていましたよね。カントリー出身のポップ・アーティストとして、音楽の面でも、リベラルな発言を厭わないアティチュードの面でも、テイラー・スウイフトの先輩と言っていい彼女たち。リベラリズムやフェニミズムが新たな局面を迎えたいま、改めて評価すべきアーティストだと思います。ただ、この“Gaslighter”は〈亮太さんが大好きな曲〉っていう印象が強いんですけど(笑)」

田中「事実、大好きですからね(笑)。力強いハーモニーとひたすら前へ前へと進んでいくようなカントリー・サウンドに、エンパワーされずにいられません。この曲は、テイラーやカーリー・レイ・ジェプセンの楽曲を手掛けたことで知られるジャック・アントノフがプロデューサーを務めていて、彼ならではの卓抜したポップ・センスが光る仕事だと思います。〈男性からの支配的な関係を打ち破る〉というメッセージ性も含めて、新たなフィメール・アンセムではないでしょうか!」

 

11. Demi Lovato “I Love Me”


天野「元ティーン・アイドルのシンガー、デミ・ロヴァートの“I Love Me”を11位に選びました。10代の頃にいじめを受け、摂食障害やうつ病を患い、アルコールと薬物への依存に悩まされ続けたロヴァート。彼女の復帰第2弾シングルがこちらです。今年のグラミー賞では、“Anyone”を歌ったパフォーマンスが話題になりましたね」

田中「感動的でした。この“I Love Me”は、過去の苦痛を歌いつつも、〈いつか自分を愛せるようになるのかな〉〈私は10点中の10点 そう思えないときだってね〉と断言する力強い一曲。自分自身の弱さを丸ごとさらけ出しながら、それを力に変えてみせる、とても現代的なポップソングだと思います。聴いているほうも勇気づけられますね」