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誘惑も侮辱も可能、英語圏の卑語はもはや芸術?

卑語をこんだけ美しく、楽しく、意味があるように使えるアメリカ人、イギリス人って凄いですね。イギリスの場合はコックニーという方言のおもしろさもありますね。あとビートルズで知られるリヴァプール・アクセントの独特な言い回し。ビートルズがアメリカで大ブレイクした一つの要因は田舎くさいけど愛らしい、大阪弁のような喋りにあったと思います。その点、オーストラリアはそこまで訛りを上手く使えてなくて、文化というほどには成熟していない気がします。「クロコダイル・ダンディー」の時にオーストラリア訛りがブレイクしそうな感じはありましたけどね。

※ロンドンの労働者階級に特有の訛り
 

この作品でニコラス・ケイジが〈卑語を使えば、傷つけ、なだめ、魅了し、怖がらせ、侮辱し、誘惑できる〉と語ってましたが、日本人は〈おまんこ〉〈お尻〉〈おちんちん〉って言葉で、そんなに複雑なことはできないですよ。英語圏の人は卑語を芸術の域にまで持っていっているのです。本当に羨ましいなと思います。僕たちはなぜできないのか、「あなたの知らない卑語の歴史」を観ればよく理解できます。そのへんを考えるためにこのシリーズを何回も観直してしっかりと勉強したいと思います。

Netflixオリジナル・シリーズ「あなたの知らない卑語の歴史」独占配信中
 

卑語は音楽ファンとして学ばなければならない大事な言葉です。ただ、今回は音楽の観点からじゃなくコメディーの視点というか、この番組自体がコメディーとして作られています。でも普段のネトフリのコメディーより爆笑できないところが残念です。ネトフリは前に紹介させてもらった「サイケな世界 〜スターが語る幻覚体験〜」のようなドキュメンタリー・チームの方が優秀なんですかね。〈卑語の歴史〉にはNHKの教養番組が無理して笑いを入れてきたときみたいないやらしさを感じてしまいました。このシリーズの欠点ですかね。

 

日本人が英語で卑語を言えるにはまだまだ時間が必要

でもいちばん残念なのは、日本人がこれでしっかり勉強しても〈ファック〉〈シット〉〈ビッチ〉〈ディック〉〈プッシー〉〈ダム〉を英語の会話のなかに知的な感じで入れるのには、まだまだ百万年もの時間が必要だということです。

日本人が言っても英語圏の人にウケる英語の卑語を考えたら、それだけでスタンダップ・コメディアンになれそうですけどね。

この番組を観たらローリング・ストーンズの“Bitch”NWAの“Fuck Tha Police”といった卑語を使った楽曲について、さらにプッシー・ライオットというバンド名の意味なんかがより深く理解できると思います。

でも、これで理解できたと思っても使っちゃダメですよ。日本人が英語の卑語をちゃんと使いこなせるようになったら、日本のミュージシャンがビルボードで1位をとる日も近くなるんじゃないでしょうか!!