サイモン・ラトルの広い指揮レパートリーで彼自身が最も自信と愛着があるのは何だろうか。マーラーか。ベートーヴェンか。シューマンか。ハイドンか。私は間違いなくヤナーチェクだと思っている。オペラ『利口な女狐の物語』はラトルにとって再録音。前回の録音は英語歌唱版だったが、満を持して原語版での録音。この作曲家ならではの細かなパッセージの音楽を積み上げて自然で詩的、ユーモアに溢れた音楽で、歌唱力溢れる歌手たちとのスリリングなやり取りが絶妙に融合し成果を上げている。ヤンソンスの後任としてバイエルン放送交響楽団の指揮者に決まったラトル。今後の活動にも期待を抱かせる名演だ。