これだけの素晴らしい映画を今まで何故知らなかったのか!
ピーター・バラカンが企画した音楽映画祭の様々な映画の予告編を見て、まずそう思った。一つの共通点としては、どれも心に直接に訴える音楽であること。DVD化も少なく、観る機会が少なかったものが多い。人々の生々しい声が伝わって来る。変動する社会からどんな音楽文化が生まれたかを聴けたり観られたりするのが大きな魅力です。
「大海原のソングライン」は5000年前に台湾を出発して、太平洋中に広がったオーストロネシア諸族(マレー・ポリネシア語派としても知られている人々)の音楽が残っている様々な国に旅をして作ったドキュメンタリー。台湾、フィリピン、マレーシア、ソロモン諸島、マダガスカル、ニュージーランド、タヒチ、イースター島、ハワイ諸島、等。日本でも日本人の7%には南方系のオーストロネシア諸族のDNAが入っていると現代の遺伝子科学者は認めています。これだけ人々を感動させる歌手達がこれらの島々に住んでいて、お互いの共通点を確かめ合いながら一緒に音楽を作っている姿には本当に心を動かされます。歴史的な面白さもあり、初めてみる楽器や、ピュアな音楽を楽しむことが出来ます。
「サウンド・オブ・レボリューション グリーンランドの夜明け」は70年代にグリーンランドにサイケデリック・ロックと反体制の運動に影響を受けたイヌイット(エスキモー)のロック・グループのドキュメンタリー。これも驚きだった。日本にも70年代にサイケデリック・カルチャーがマイナーなシーンで輸入されたことを考えると世界中の国に影響を与えていたことが当然である。音楽だけではなく、グリーンランドの社会意識に変動を起こしたバンドである。
「白い暴動」は人種主義を反対する〈ロック・アゲインスト・レイシズム〉の歴史を詳しく見る。クラッシュ等のパンク・バンドとスティール・パルス等の黒人レゲエ・バンドが一緒に参加していたデモと音楽フェスは今日のブラック・ライブズ・マターとの多くの共通点を感じさせる。
「マイ・ジェネレーション」は俳優マイケル・ケインが社会変動によって60年代のロンドンに始まった新しい文化とファッションについて語る。カラフルな映像を観ながら、ザ・フー、クリーム等のロック音楽が全面的に流れっぱなしで楽しい。あの時代を生きるというのはどういうことだったのか? マリアンヌ・フェイスフルやポール・マッカートニーは語る、「1945年以後に英国労働党が福祉国家体制を作ったことによって多くの人々が教育を受けたり、国民保険の制度が出来たり、生活保護を受けることが出来た。これが60年代の(ザ・ビートルズやストーンズ)のカルチャーを作った」。この時代の社会変化をエンターテインメントとして楽しめるロック・ファンお勧めの映画。
どの映画にも心に響く歌があり、ぜひ今まで聴いていなかったジャンルの音楽を楽しんで欲しい!
EVENT INFORMATION
Peter Barakan’s Music Film Festival
2021年7月2日(金)~2021年7月15日(木)東京 ⾓川シネマ有楽町
■上映作品(全14作品)
「Billie ビリー」原題:Billie *⽇本初公開!
「ジャズ・ロフト」原題:The Jazz Loft According To W. Eugene Smith *⽇本初公開!
「AMY エイミー」原題:AMY
「真夏の夜のジャズ4K」原題:Jazz On A Summer’s Day
「ランブル⾳楽界を揺るがしたインディアンたち」原題:RUMBLE: The Indians Who Rocked The World
「バックコーラスの歌姫(ディーバ)たち」原題:20 Feet From Stardom
「Our Latin Thing」原題:Our Latin Thing
「⼤海原のソングライン」原題:Small Island, Big Song
「スケッチ・オブ・ミャーク」英題:Sketches Of Myahk
「サウンド・オブ・レボリューション グリーンランドの夜明け」原題:Sumé: Mumisitsinerup nipaa
「マイ・ジェネレーション ロンドンをぶっとばせ!」原題:My Generation
「ノーザン・ソウル」原題:Northern Soul
「⽩い暴動」原題:White Riot
「カマシ・ワシントン『Becoming』ライブ」原題:Kamasi Washington’s Becoming For Michelle Obama
配給:コピアポア・フィルム
https://pbmff.jp/