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Netflixオリジナル・シリーズ「This Is Pop:ポップスの進化」独占配信中
 

フェスティバル文化がアメリカではなく欧州で発展した理由

第5話の「ブリットポップがやって来た!」では、オアシス対ブラー戦争を中心にブリットポップを振り返ります。アメリカ制作なんでブリティッシュ音楽のファンからはツッコミが弱いと思ってしまう部分もあるかもしれませんが、懐かしいなと感傷に浸れるとは思います。ブラーのベース、アレックス・ジェームスがチーズ職人になってたのはびっくりしました。グルメだったのは知ってたのですが、そこまで極めていたとは。

第6話は「フェスティバルの夜明け」。いまや若者の通過儀礼になったフェスティバルを考察しています。アメリカとヨーロッパのフェスの違いに切り込んでくれていたのが嬉しかったです。アメリカから始まったフェスが、なぜ本場アメリカでは上手くいかず、グラストンベリーを筆頭にヨーロッパで独自の発展を続けたのか――理由はアメリカのフェスが金儲けに走ったからなんですが、そういう歴史をちゃんと解説してくれています。フェス好きは基礎教養として観ておくべきでしょうね。現在のアメリカでは過去の反省から、コーチェラなどお客さんの目線に立った良いフェスがたくさん生まれています。

 

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ポップはたえず変化し、進化するんだろうな

第7話は、僕にとっていちばん興味のある回でした。「歌の力」というテーマで、音楽で世界は変わるのか、いや音楽で世界は変わったのか、を考えます。パブリック・エネミーのチャック・Dらに話を訊きながら、過去の社会運動や、現在のブラック・ライヴズ・マター、#MeTooムーヴメントなどとポップ・ミュージックがどう影響しあってきたかのか、そうした関係がいかに途切れることなく脈々と続いてきたかについてを説明していて、感動させられます。日本のポップスにもこうした歴史があったらいいのになと思います。

そして最後は「ブリル・ビルディング4曲の物語」。ビートルズが登場するまでポップ・ミュージックの中心点だったブリル・ビルディングについてのストーリーです。商業音楽だけど、それを超えてしまうポップスの魅力、不思議さについての回です。僕もブリル・ビルディングで作られた音楽がいちばん好きなんです。ルー・リードなんかもブリル・ビルディングのなかの狭い部屋で、曲を作っていたんですよね。

ストリーミング時代になって、ほとんどのポップが同じような曲になってしまった現代、もうポップスは死んでしまったのかと嘆いているんですけど、このシリーズを観たら、〈ポップスはウイルスのようにたえず変化し、進化するんだろうな〉という気持ちになりました。絶対にまた大きな変化が起こると思います。若者がいるかぎり、ポップは絶対に死なないのです。

早く次のシーズンが観たい!